名曲290 「あの夏の花火」【Dreams Come True】

ーー個人的最高傑作級の夏曲。ドリカムを好きになったきっかけの名曲ーー

【Dreams Come True - Ano Natsuno Hanabi (1992)】

 ドリカムは意外にも初めての登場。実は好きになったのは遅めだった。ちょっとした昔話を。

 大学時代にサークルで私よりも年上の後輩の女性がいた。特殊な経歴を持っていたようで、誰よりも年齢が高かった。ある夏の日、サークル内の数人でカラオケに行くことになった。私が90年代の曲を歌うと、その後輩も参戦してきたのだった。そこで歌ったのがこの曲。

 ドリカムは正直当時はテリトリー外で、それこそミリオンヒット曲の数曲しかサビを知らない程度だったのだ。それがどうもハマらず、重いバラードのイメージを持ったままだった。しかし、この曲を聴いた途端に閉ざされた世界がバッと開け、ドリカムの凄さを思い知ったのである。後輩にはお礼を言ったものだった。敬語で。

{遠くから 胸震わす 音が響いてくる 蒸し暑い 闇の向こうが焼けている 閃光が呼び覚ました あの夏の花火を 川風が運んだ 火薬の匂いを 人であふれる堤防 はぐれないように 間近で見た十号玉 まばたきを忘れた}

 作詞はボーカルの吉田美和。閃光の部分がお気に入りだ。メロディーもよし。歌い方もよし。作曲は、いまはいない西川隆宏だ。ああもったいない。

{今頃 あなたも どこかで 思い出してるの? あの日のこと}

 サビではっきりわかるように過去の出来事を思い浮かべている。このメロディーは本当に秀逸。歌いだしの「WOW~」がもうピタッとはまる。

{友達にひやかされた もう夏の初めには 2人して 鼻と頬だけ 焼けていた 川に落ちる花びらが 消えていく間際に 立てる音がせつなくて 目をそらせなかった}

{今頃 あなたも 誰かと 今年の花火を見てるの? 散ってく季節を 一緒に生きて行ける人 見つけた? 残る煙り かすむ大三角 主役うばわれた 8月の星座}

 最近、花火を見ていない。閃光花火なんていつ以来だろう。もう今年も夏が終わってしまう。切ない。

 私も「あの夏の花火」が恋しくなってきた。コロナでそういう思いをしている人も多いのではないか。またあの日のように、みんなで海にいって、遊んで、花火をしたいなあ。

{今頃 あなたも どこかで 思い出してるの? あの夏の花火を 今年も綺麗ね あの日と同じように 輝く花達 今頃 あなたも どこかで 散ってく季節を生きてる 今頃 誰かと}

 決して恨めしい感じもなく、ただぼんやりと思い浮かべているさまがいい。きっとこの女性もいまは充実しているのだろう。あ、花火といえば……と、ふと思い出すわけである。いましている花火より、あの日のほうが楽しかったなあと微笑みながら。私もあの後輩を思い出す。もう会うことは、ないだろう。

       【今日の名歌詞】

残る煙り かすむ大三角 主役うばわれた 8月の星座



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