名曲573 「真夜中のジョーク」【間宮貴子】

ーーバーで流したいこれぞ昭和の生んだ「エモい」ーー

【真夜中のジョーク - 間宮貴子(Takako Mamiya)】

 間宮貴子はこのnoteで初めて取り上げる。1970年代から80年代に活動していたアーティストだ。……というのは推測。実はこの方のWikiが存在しないのだ。しかも作品が極端に少ない。どうやら、ひとつしかリリースされていないようなのだ。

 YouTubeになんとフルで聴けることができた。この「Love Trip」というアルバムしか見つからなかった。ちなみに上記の動画はリマスター版とのこと。それも2021年にされた。シティポップの再評価が進んでいることがわかる。

 今回はその中から1曲を取り上げてみる。それが「真夜中のジョーク」。私と同様にシティポップから知った人がほとんどではないか。知らない人が多いのには、やはり売上が伸びなかったからである。

 このアルバムがリリースされた当時は1982年。松田聖子、中森明菜、田原俊彦、近藤真彦などのアイドルが全盛だったころだ。その方々のイメージ通り、キラキラした楽曲が流行していた。

 その中で「Love Trip」は苦戦したと思う。しっとりと落ち着いた雰囲気である。こういう曲は一発ドカンと評価されることは難しい。じっくり何度も聴いて嚙みしめて、その人の心の中に染まっていく。そんな曲がずらりと並んでいるのだ。

 私が特に素晴らしいと感じたのは「真夜中のジョーク」だった。山下達郎のような雰囲気、ただ落ち着いた曲調なのではなく、ちゃんと起伏があって飽きが来ない。この曲が好きになった方は、ぜひアルバムをフルで聴いてほしい。

 間宮貴子はこれほど素晴らしい歌声を持ちながら、ほとんど歌わずに去ってしまったようだ。この現象は当時の実力派歌手に多い。何があったのか気になるが、そっとして彼女の残したアルバムを聴くのがいいだろう。この傑作を世に出して以降、姿を消した。そのバックグラウンドを知るだけで深みが増す。「エモい」に繋がる。

 少し芸術がわかったような気がした。いつかは間宮貴子の復活を希望したい。このままでは幻のアーティストで終わってしまう。だが、それが彼女の本望であれば望まない。曲も声も去り際も、何もかもが綺麗な人。そんな思いを胸にグラスを片手に持つ。

       【今日の名歌詞】

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