名曲287 「何も言えなくて…夏」【J-WALK】

ーー名曲だからこそ惜しまれる覚醒剤ーー

【何も言えなくて…夏】

 J-WALK(現在はTHE JAYWALK)はどうしても覚醒剤のイメージがつきまとう。それか、この曲だ。夏になるとこちらのほうが先に浮かぶので、いつまでも夏であればいいのに。ファンはそう思っているはずだ。

 この曲は代表曲である。約100万枚を売り上げたのだが、確かミリオンヒットまではギリギリいかなかった記憶がある。そういった意味でも惜しいのだが、曲そのものは最強クラスの夏バラード曲なのだ。

{奇麗な指してたんだね 知らなかったよ となりにいつもいたなんて 信じられないのさ こんなに素敵なレディが俺 待っててくれたのに 「どんな悩みでも打ち明けて」そう言ってくれたのに}

 欧米ドラマのような描写。この歌詞はそこらへんの薄っぺらい人が歌えば歯の浮くものになるのだが、ボーカルの中村耕一がうまくまとめている。獣の成分がちょっと混じっているのではないかと思うほど男らしい声だ。それなのに上品できれい。絶妙にもほどがある。

{時がいつか 二人をまた 初めて会った あの日のように導くのなら 二人して生きることの 意味をあきらめずに 語り合うこと 努めることを 誓うつもりさ}

 この伸びやかな歌いやすいメロディー。万人受けすること間違いなしではないか。

{「私にはスタートだったの。あなたにはゴールでも」 涙浮かべた君の瞳に 何も言えなくて まだ愛してたから・・・}

 ドキッとするフレーズで、ここが私の最も好きなポイントである。「私にはスタートだったの。あなたにはゴールでも」は人生訓になったほどで、常に相手の気持ちに立ったときにそれを意識している。逆もしかり。

 1990年発表の曲ながら完成度は凄まじく、30年以上経っても色あせない。だが、やはりの諸事情で表舞台から去ってしまった感もある。テレビでも過去の名曲特集からあまり目にしない。私の同世代の知人は誰も知らなかった。「聞いたことすらない」「ピンともこない」という反応だったのは悲しい限り。これがミリオンヒットしていれば扱いが違っていたのではないかとも思う。

 中村耕一は覚醒剤をはじめとして逮捕されていなければ現在もそれなりのポジションで、テレビやラジオなどで活躍していたはずだ。逮捕の罪は相当に重かったようで、経済的損失もかなりだったとか。本当に覚醒剤だけはやめてほしい。そんな弱い人間ではないはずだろう。その美声があるのなら。何も言えない。

       【今日の名歌詞】

「私にはスタートだったの。あなたにはゴールでも」

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