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井桁容子インタビュー#2【こどもの睡眠のメカニズム】

子どもの睡眠は子育ての悩みのベスト3に入るそうですね。
親達もですが保育者も午睡には苦労していると聞いたことがあります。


睡眠とは何か?ということがありますね。人間の体が出来上がってく過程で、睡眠は何かっていうことを、保育者は専門家なので科学的に学んでおかないといけません。

 睡眠のメカニズムで「レム睡眠とノンレム睡眠」があります。胎児の頃は殆どがレム睡眠です。それがだんだん大きくなってくると感覚や色々なリズムが変わってきますが、〝3~4歳になると大人並みにレム睡眠とノンレム睡眠のバランスが決まってくると言われています。それでも歩き始めがみんな違うように個体差があるので、睡眠のメカニズムも体質というか、脳の出来具合とかで違ってきます。例えば障害のあるお子さんはクールダウンが苦手で寝にくい。リラックスが苦手だとなかなか寝ないから、お母さん自身も睡眠不足になるということもある。そういった特別な脳の状態を除けば、大体は寝てばっかりいるところからだんだん目覚める時間が長くなって、徐々に昼間は起きていて夜は寝るというリズムが出来上がります。

 午睡は疲れた時の休息でしかないのですが、保育園で間違えやすいのは保育者が子どもが寝ている間に何かしたいという時間に当てられることが多くて、いつのまにか〝ちゃんと寝る子が良い子〟っていうものとすり替えが起こっちゃうのかなと思います。心理的にね、悪意もなくそうなっちゃうのかなって思うんです。でもやっぱり私たちは子どもの体と心をつくる応援をする仕事なのでね。だからその子の欲しているものは何か理解していないといけない。例えばこの子は体力があるから眠くないんだとか、頭を使う子で眠れないタイプの子もいます。理屈で物事を考える子はクールダウンが苦手で、交感神経が優位になっちゃうのでなかなか寝られない。眠ると言うのは副交感神経と交換神経が関わっています。起きている時は交感神経、寝ている時は副交感神経が働いています。副交感神経が働かないと眠くならないという、人のホルモンのことがあるので、その子が寝付くのに時間がかかる子なのか、あっという間に寝ちゃう子なのか把握して関わることが大事です。でもその切り替えが早い子も、良い子だからじゃなくて脳の睡眠のメカニズムがで、切り替えがすごい上手なタイプの人とゆっくり切り替わっていくタイプの人がいます。ゆっくり切り替わっていく人は、その時に何かあるとパッと交感神経の方にスイッチが入っちゃうので〝もう眠れません〟となる。

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まず保育者は保育指針に書いてあるように一人一人の事を把握しなくちゃいけない。一対一ではなく一人一人。一人一人というのはそこにいる人全員を把握すると言う事です。体のリズムが赤ちゃんの頃からどんな睡眠のタイプを持っていたのか。ご家庭ですぐに枕に頭つけたら寝ちゃう子だったら、何か興奮する状況が園であったのかなとか。遺伝的にはこの子はちゃんと眠れるけど環境がそうさせちゃってるかなとか。色々な理由を考える。もしも遊びが足りてなくて体力が残っちゃってるということならば、寝かす努力よりすっきりと体を使う遊びの方を工夫する。睡眠は絶対的にお家に帰って夜眠れる方が良いんです。〝夜の睡眠を保証する〟ってことが生物学的に大事なんですね。

養老孟司さんの「バカの壁」の中に「現代人は夜の睡眠を軽んじている」と書いていました。夜に寝ると言うのは体の仕事です。なのに明かりがずーっとついててブルーライトも浴びちゃうと副交感神経に行かないために眠れなくて、メンテナンスができないのでイライラするとかそういうこともあります。昼寝をできる子にするんじゃなくて、夜ちゃんと眠れる人のための昼間を過ごすという方にだんだん持って行かないといけない。その辺の睡眠のメカニズムを保育者が勉強をする必要があります。勉強が足りてなければしなきゃいけない。専門家ですから。技術で寝かすんじゃないですよ。だけどねベテランの保育者がやるとすぐに寝られるけど、若い先生だとあっちでもこっちでもでもなかなか寝ないなんてのもよくある。そうすると若い先生が意欲を無くしちゃうというか、私ってダメなんだって思うけど、そうじゃないのね。若い先生たちは私で寝なかったらどうしようって自信がなくておどおどしているのを見抜かれちゃうのであって、やっぱり先輩たちはこうやれば寝るという空気を作るのでそういうパターンになりやすい。でも、〝できるだけ早く寝かせて〟〝できるだけ少ない言葉でいろいろ出来て〟〝できるだけ多くの子どもを動かす〟ことが保育力ではないのに、若い先生たちが自分はこの仕事に向いてないんじゃないかと思うチェックポイントになってたりするんです。できるだけ子どもを束ねて、静かにさせて、いっぱい同じことができるようにする人を有能な保育者だと言うのは間違いです。一人一人の育ちを保証することなので。そんなことで自信をなくすことではない。そこら辺も間違わないようにすれば無理やり子どもを寝かしつけるっていうことをしないでも済むようになるかなって思います。ベテランもそういうところを理解してあげると良いと思います。

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