見出し画像

高価なピアノを勧める先生には注意

 楽器を始める時には、自身の楽器を購入するのが一般的。物によってはかなりの額に。初心者の場合、どんな楽器が良いか分からないので、先生に相談することも多い。楽器店やお勧めのメーカーを紹介して貰えることも多い。

 ピアノの場合、いわゆる家電(キーボードや電子ピアノなど)か、楽器(アップライト、グランドピアノ)かに分かれる。クラシックピアノの場合、理想はもちろん楽器だが、長く続けるかどうか分からないうちから、値の張る楽器を購入することに意味があるのか、躊躇してしまうのが普通だと思う。

 一般的にクラシックピアノの場合、最初からアップライト以上の「楽器」を勧める先生が圧倒的に多いと思う。家電と楽器では、そもそも音を出す仕組みが全く違うし、最初から楽器を使うことによって得られる効果は想像以上だ。最近の電子ピアノは、精巧に本物のタッチを真似して作られているが、使われている材料も音を出す仕組みもまるで違うし、家電が発する音が、フェルトと鉄と木が生み出す音と同じとは言い難い。

 もしスペースと予算に余裕があれば、もちろん「楽器」がお勧めである。しかし、そんな人ばかりではないはずだ。キーボードでも電子ピアノでも、家に鍵盤があるだけで、練習効率が飛躍的に上がるし、何より好きな時に弾けるというのは、楽器を始めた時の最大の楽しみだ。何もないより余程良いのは確かだ。

 普段は家電ピアノを使い、どうしてもアップライトやグランドピアノが弾きたい時は、練習室などを借りることも可能だし、ストリートピアノを弾きまくるという手だってある。家に本物がないと上達しないなんてことはない。

 何がなんでもアップライト以上の楽器でなければ駄目、というくらい、熱心にしつこく勧めてくる先生の場合、次のような可能性が無きにしも非ずなので、注意が必要だ。

 現在ピアノ業界は苦戦している。ピアノの需要はそれほどないし、第一、車のように数年おきに買い替えるような品物でもない。生徒に楽器を購入させることによって、先生にお礼や報酬が入る仕組みは多く存在する。私も生徒が中古ピアノを購入してくれたところから、お礼をもらったことが数回ある。

 この仕組みは、生徒本人の意思でピアノを購入したい場合、双方にとってお得だ。楽器店も、先生の紹介だと1割くらい値引きをしてくれる場合があるし、いろいろと融通を利かせてくれたりもする。長く続けている先生は、立場はフリーランスでも、様々な楽器店と繋がっている。良い調律師を紹介してくれたりもする。だから、本当にピアノが購入したい場合、ネットで調べて購入するより、信頼できる先生に一度相談すると、たくさんのお得な情報が貰える。

 問題は、家電ピアノ以外の選択肢を持たない生徒にも、しつこくアップライトの購入を勧めてくるような先生だ。ピアノ購入の斡旋が、その先生の収入に関係している場合もある。言われるがままにローンで購入してしまった……なんてことにならないよう、十分ご注意を。

 そして完全な初心者がピアノ、特に中古ピアノを買う場合、できれば経験者に頼んで、試弾に付き合って貰うと良いと思う。もし親切な先生だったら、自ら試弾してくれることもあるかもしれない。似たような年代の同じメーカーの楽器が並んでいた場合、初心者が、どちらが良いか判断するのは至難の技。また、弾き心地は人それぞれだったりもする。目的に合わせてアドバイスしてくれる、詳しい第三者がいると心強い。くれぐれも楽器店の文句に流されて、なんとなく良さげなピアノを適当に選んでしまわないように。無理矢理高いものを勧めてくることだってあり得るからだ。

 ピアノは高価な買い物。弾かなくなったら、場所を取るだけの不要な家具。良く考えて気長に選ぶことも大事。中古ピアノは特に、入荷のタイミングに左右される。早く欲しいからと、納得いかないまま妥協して購入すると、後々後悔してしまう。大して使われずに引き取られた中古ピアノが、今海外に輸出されている。せっかく買うのなら、大事にする覚悟を、そして長く人生を共にする楽器にめぐり会って欲しいなあ。

 

 

 

 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?