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ピアノを弾く手の形

 楽にピアノを弾ける手の形というものがあるが、これは個人差が大きいように思う。一人一人骨格も筋肉も違うため、あらゆる人に当てはまる唯一の弾き方が存在する訳ではない。だから自分が受けた教育そのままに、ハイフィンガー法を強要してくるような先生は、避けた方が無難。そもそも、オクターブを弾こうと思えば指を伸ばさないと押さえられないし、細かくくぐる動きをする時は自然と丸まる。つまりゴムのように伸び縮みできる手が、最もピアノに適した手だ。

 そうは言っても、最初のうちは手の形が気になりかもしれないし、不必要に指を伸ばしても、曲げても、無駄に疲れて弾きにくい。昔卵を包むように、とか何とか習った気がするけれど、あれは曲げすぎだ。曲げすぎは伸ばし過ぎと同じくらい弾きにくい。腕を脇に垂らして、全く力を入れていない状態の手の形が最も疲れにくいのだが、鍵盤に乗せた途端、なんだか構えてしまったりする。

 そこで、平均的な6歳以上の手で、楽に手の形を掴める方法がある。手が極端に小さい、または大きい場合は向かないのでご注意を。

 右手の場合で解説。ピアノには黒鍵が2つ並ぶところと、3つ並ぶところがある。まず、3つの黒鍵が並ぶところに、人差し指、中指、薬指を置く。ファ#、ソ#、ラ#に、それぞれ2、3、4の指を乗せる格好になる。指全体を鍵盤にくっつけるのではなく、指先のみを付ける。

 その後、親指を白鍵のミに、小指を白鍵のシに乗せる。綺麗に乗せようとすると、自然に真ん中の3指の形が変わる。この時、個人の指の比率に応じて、曲がり具合が変わってくる。親指や小指が長めの人と、短い人では、曲がり具合が違う。自然とその人に合った手の格好になる。長い3指が、黒鍵に乗るために、手の縦方向に対しても横方向に対しても、自然にアーチができる。この横方向にもアーチができるというのがポイントだ。平らな場所に5指を置いた場合、最初は横方向のアーチが上手くできない。だから長い3指を黒鍵に乗せることに意味があるのだ。

 記憶が間違っていなければ、これを言ったのはショパンだ。ショパンは、最も自然に指なりに弾けるスケールはロ長調(シド# レ# ミファ# ソ# ラ# シ)だと言っていた。白鍵ばかり使うスケールは弾きにくい、だから本来ハ長調は最後で良いのだと。これをそのまま当てはめると、ミ ファ#  ソ#  ラ#  シ に、1、2、2、4、5の指を乗せるのが、最も手にとって自然で楽な形ということになる。

 この方法は、一度先生に見てもらったら小学生でも一人でできるし、何よりピアノの鍵盤に指を乗せるだけなので分かりやすい。抽象的な説明より、余程感覚的に体得できると思う。無理な動きをして手が痛くなる心配もない。初心者にはおすすめの方法だ。

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