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新・オーディオ入門160 図表編 熱に関する図表

『オーディオはよくわからないけど良い音で音楽を聴きたい』、『オーディオ歴は長いけどこれは知らなかった!』というお話を聴くことがあります。 新オーディオ入門はオーディオの基礎についてエンジニアの視点から初心者の方にも判りやすく解説していくものです。 タイトルは私が10代の時に愛読した『オーディオ入門』から拝借しました。 私がオーディオに携わることになったきっかけの本です。 とても判りやすく説明されていて、手元に置いて辞書のように使っていました。 『新・オーディオ入門』はその現代版となれるよう書き進めたいと思います。

出力100wのパワーアンプはどのようなときでも100wの出力が保証されているというわけではありません。 図1はどのようなときでも100wの出力が保証されているパワーアンプのグラフです。しかし、現実のパワーアンプは図2のようなグラフになります。 パワーアンプの詳しい仕様書をみると『保存温度:-40度~80度、使用温度:-20度~40度』というような項目が書かれていることがあります。 保存温度とは輸送時や保管時に守らなくてはいけない温度範囲です。 海外に輸出するような場合にコンテナの中ではこれぐらいの温度になることも珍しくないため表記されています。 この温度範囲を超えると使用されているパーツが破壊する恐れがあり、それは平温になっても元にはもどりません。 使用温度とは電源を入れて使用しているときの温度範囲で一般的な室内であれば十分クリアーできる温度範囲です。 稀に、真夏に自動車の室内で使用する場合や、特別寒いエリアで使用する場合は、まず室内を適温にしてから電源を投入する必要があります。 さらに、機種によっては使用温度の-20度~40度の範囲内でも100wの出力が保証されないようなモデルもあります。 図2では温度が25度~40度の範囲でグラフが斜めになっています。例えば、30度では92w、40度では80wしか出力できないと読み取れます。 これはパワーアンプの電源回路や出力回路に使用されている半導体自身が発熱するためです。 外気の温度に自身の発熱も加わることを考慮して安全な領域を数値化しています。 ホームオーディオ用のパワーアンプではこういったグラフはあまり見かけませんが、業務用のパワーアンプで見ることがあります。 業務用のパワーアンプは温度管理を厳密に行って運用されています。 真夏に屋外のイベントで使用されたり、放熱状態があまり良くない19インチの業務用のラックに固定された状態で使用されることもあります。 ステージ本番中に音響が止まることは許されませんので、別途冷却用のファンを取り付ける等の対策を行い、 きちんとした温度管理をした上で使用されています。

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