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新・オーディオ入門159 図表編 指向特性図

『オーディオはよくわからないけど良い音で音楽を聴きたい』、『オーディオ歴は長いけどこれは知らなかった!』というお話を聴くことがあります。 新オーディオ入門はオーディオの基礎についてエンジニアの視点から初心者の方にも判りやすく解説していくものです。 タイトルは私が10代の時に愛読した『オーディオ入門』から拝借しました。 私がオーディオに携わることになったきっかけの本です。 とても判りやすく説明されていて、手元に置いて辞書のように使っていました。 『新・オーディオ入門』はその現代版となれるよう書き進めたいと思います。

スピーカーシステムのカタログには指向特性図が書かれていることがあります。 これはスピーカーシステムの正面に対して斜めや横、後にどれだけ音が出ているかを示すものです。 同心円状のグラフのセンターにスピーカーシステムが設置されていると考えます。0°側がスピーカーの正面です。 スピーカーシステムの後面は180°側になります。 同心円の一番外側は0dBと表示してあり、円の中心に近づくとー5dB、-10dB、-15dBのように音量が下がっていくことをあらわします。 もし、全方向が同じ音量のスピーカーシステムが存在するならば、グラフ化すると図1のようにどの角度も全て0dBとなります。 エンクロージャーにマウントしていない裸のスピーカーユニットの特性をとると、 前側(0°)と後側(180°)が音量が大きく、横(90°、270°)は音量が小さく聴こえます。 これをダイポール特性といいます。 これをエンクロージャーにマウントし一般的なスピーカーとして特性をとると、後側から再生されるる音が減衰しますので図2のようになります。 赤線のグラフを見ていただくと、正面に対して30°斜めの位置では-4dBですので正面の63%の音量、 60°斜めの位置では32%の音量が再生されているという意味になります。 本来スピーカーシステムはリスナーに向けて設置するものですが、 スピーカーシステムを壁と平行に設置し聴いている方は63%の音量でしか聴こえていないのです。 さらに問題なのはこの特性は再生する周波数によって大きく変化するということです。 音は高音になる直進性が強くなり僅かにずれただけでも大幅に音量が低下します。10KHzを緑線で表しました。 正面に対して30°斜めの位置では-15dBですので正面の18%の音量でしか聴こえていません。 スピーカーシステムをリスナーに正確に向けて聴かないと、周波数帯域によって音量の大小が発生します。 『ハイレゾ対応』と書かれているような高域特性が優秀なスピーカーシステムであっても リスナーの方向にきちんと向いて設置されていないのであれば 何十年も昔のフルレンジスピーカーを鳴らしているのと大差ないということになります。

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