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新・オーディオ入門63 電子パーツ編 コイル

『オーディオはよくわからないけど良い音で音楽を聴きたい』、『オーディオ歴は長いけどこれは知らなかった!』というお話を聴くことがあります。 新オーディオ入門はオーディオの基礎についてエンジニアの視点から初心者の方にも判りやすく解説していくものです。 タイトルは私が10代の時に愛読した『オーディオ入門』から拝借しました。 私がオーディオに携わることになったきっかけの本です。 とても判りやすく説明されていて、手元に置いて辞書のように使っていました。 『新・オーディオ入門』はその現代版となれるよう書き進めたいと思います。

 コイルはコンデンサー以上に扱いの難しい電子パーツです。 電線が螺旋状に巻かれてさえいれば、それは電気的にはコイルとして動作します。 シンプルな構造であるために電子パーツのリード線や 電子パーツを取り付けるプリント基盤の銅箔部分ですら『意図しないコイル』になりうるのです。 コイルは周波数が高くなるほどインピーダンスが上昇するという特性があります。 高音の信号ほど通り難くなるという事を意味し、 これを利用してスピーカーシステムではネットワーク回路としてウーハーとツィーターに音域を分けたり、 電源回路で高周波ノイズだけを減少させるような用途に使用されるのですが、 増幅回路では『意図しないコイル』によって高域が減衰して 周波数特性が悪化するというような事も起こり得るので注意が必要です。

 また、コイルは小型化が困難な電子パーツです。 スペースに余裕があるオーディオコンポーネントでは使用されていますが、 スマホやノートパソコンといった小型化が必須の家電製品ではあまり使用される事はありません。 さらに、コイルを使用するときには周囲にある程度のスペースが必要です。 コイルは電磁波の影響を受けやすいパーツで、AMラジオではアンテナとして使用されるほど。 コイルの周囲の電子パーツが密集していると、それらが発生する電磁波の影響も受け易くなるため 実装密度を上げることができません。 こういった設置上の問題もまたコイルを使用した機器の小型化を阻害する要因のひとつです。

 こういったコイルの問題を解決するために、 コイルを使用せずに半導体、抵抗、コンデンサー等を用いてコイルの特性を再現させる手法も用いられます。 これはシミュレーテッドインダクタ(擬似コイル回路)と呼ばれ、 理想的なコイルの特性が得られるためパラメトリックイコライザーやグラフィックイコライザーで使用されています。 またシミュレーテッドインダクタは現実では製作が難しいインダクタンスが巨大なコイルも実現させることが可能です。

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