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#27ベイビーフェイス『ガールズ・ナイト・アウト』

鈴木さんへ

 私も映画を観ました。評判いいですよね。期待せずに観たみたいなスタンスの人が称賛しているのが印象的です。私は、彼らがこんなにもブラック・ミュージックに影響を受けていたのか、というところが新鮮でした。全編で「知らなかったなぁ」ということが多かったけれど、でも、よくわかったのが日本で根強い人気がある『メロディ・フェア』なんて全然出てこないこと。彼らにとっては映画『小さな恋のメロディ』のために作った曲、というだけの存在なんだろうなぁ。最後の来日公演の契約書に、『メロディ・フェア』を演奏することが書かれていて、仕方なく演奏した結果、「もう終わり?」と思うくらい、ちょっとしか歌わなかったもんなぁ…。
 それにしても音楽系のドキュメンタリー映画が充実していますよね。いま作曲家エンニオ・モリコーネの映画『モリコーネ 映画が恋した音楽家』をオンライン試写で観ているんだけれど、証言者が大勢いて、その人達が素晴らしいことを言うので、一瞬たりとも気が抜けない、濃密な言葉のドラマに触れているという感じがしています。
 それからノーヴォ・アモール、いいですね。ギターの最初の一音で胸がときめき、この歌声。私も好きです。R&BもいまUKのアーティストがいいんですよね。JNR Williams(ジュニア・ウィリアムズ)、ぜひ日本のヤマハのサイトでチェックしてみてください。ビデオを観ながら涙がこぼれました。

ベイビーフェイス『ガールズ・ナイト・アウト』

 何度聴いても冒頭「イントロ」の携帯の呼び出し音に、条件反射のように自分のスマホを見てしまう。そこからベイビーフェイスの罠にはまってしまったような…。
 アメリカでは『ため息つかせて2.0』と言われているように、全曲に女性アーティストがゲスト参加している。そのラインナップが見事。まるで注目の若手R&B/HIP HOPアーティストのカタログのよう。アリ・レノックス、エラ・メイ、マニー・ロングのように知っている人もいるけれど、ほとんどが初めて会う顔ぶれ。


 そのなかで彼女たちをベイビーフェイス色に染めるのではなく、彼女たちの音楽性を全面的に生かして、彼自身はサポート役に徹している。楽曲のクレジットを見ると、ベイビーフェイスが共作し、プロデュースもしているけれど、共演者がいつも組んでいるプロデューサーも関わったりしている。だから、最初「これ本当にベイビーフェイスの7年ぶりの新作?」と違和感があったけれど、視点を変えると、それだけ若い女性アーティストがクリエイティヴで、彼を触発しているのだと思う。
 全13曲、共演者全員の声に惹かれる。これ見よがしの熱唱はなく、表現はナチュラルで、聴くほどに魅せられていく。全ての曲が3分40秒以下というのも今どきなんだなぁと思う。ここから話題になる人も出ていくだろう。
 ただ個人的には彼女たちの画像のチェックを避けている。ファッションは、個性の表現手段とは思っているけれど、布面積が極めて小さいファッションがあまりに増殖していることに抵抗感があり、複雑な気持ちになってしまうかもしれないからだ。
 いずれにしてもベイビーフェイスにありがとうと言いたい。こんなに素敵な女性がこんなにもいっぱいいることを教えてくれて。
                             服部のり子


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