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#55 エアロスミス『グレイテスト・ヒッツ』

服部さんへ

 オープニング・トラック「デザート・ソング」が、涼風のように心地よく、束の間、不快極まりない暑さを忘れさせてくれました。セージュ。これがデビュー作なんですね。随所にジャジーな要素を感じるし、こういうスタイルもクロスオーヴァーということになるのでしょうか。
 個人的には、この手の作品ってハイセンスでエレガントで、そつがなく、何か予定調和的なものを感じてしまうことが少なくないんです。でも、彼女たちは攻めていますね。特に、フリーキーに暴れるトランペットに、甘美なメロディとささやくようなトーキングが絡む「ネヴァー・ユー・マインド」や、マイケル・キワヌーカからビートルズという繋ぎが見事なら、アレンジの妙も光る「ソリッド・グラウンド/ブラックバード」は、聴き応えがありました。
 たとえばアカペラ・グループだったとしても、かなりレヴェルが高いと思うのですが、しっかりオリジナリティを確立しているところにも、気骨のようなものを感じて惹かれました。

エアロスミス『グレイテスト・ヒッツ』

 デビュー50周年。9月からはフェアウェル・ツアー、つまりお別れツアーだそうである。う〜ん、さびしい。本当にライヴをやらなくなるのかどうか、それはさて置き、さびしい。終わりは必ず来る、という真実を突きつけられた気がする。考えてみれば、東京ドーム公演で熱狂し、横浜の夏フェス「ロック・オデッセイ」での「フジロ〜ック!!」(by ジョー・ペリー)でズッコケてから、ほぼ20年が経つんだもんね。一生なんて、あっという間だ。
 というわけで、エアロスミスのまさに究極と呼ぶべきオールタイム・ベストが発売された。コアなファンは、全44曲収録の3CD版に手が伸びるのだろうけど、キャリアを網羅して全18曲を厳選収録した通常盤でも、このバンドの魅力を十分に味わえるはずだ。
 数あるハード・ロック・バンドの中でも、彼らが突出しているのはグルーヴ感であり、そこが“ロック”と“ロックンロール”の違いだと僕は思っている。そしてまた、エアロスミスはバラードが素晴らしいのだ。「ドリーム・オン」(サビで1オクターブ上がる瞬間が最高!)も「エンジェル」も、「クライン」も「クレイジー」も通常盤に収められているので、ご堪能いただきたい。

 おっと、安心してください! もちろん『アルマゲドン』の「ミス・ア・シング」も入っています。
                              鈴木宏和


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