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#57 Various Artists『バービー・ザ・アルバム』

服部さんへ

 ジェイク・シマブクロだ〜、ハワイだ〜と思い、ふと最後にハワイに行ったのは、いつだったかを考えてみたら、もう30年経っていました。いやはや、ゾッとします。
 いいですね、このアルバム。ビールを飲みながら、のんびりライヴを観ているような心地よさを味わえます。即興演奏(“カニカピラ”っていうのですね)も笑顔で和気藹々とやっている雰囲気が伝わってきて、聴いているこっちも楽しくなります。ジェイクが同郷のゲストと、ゲストが選んだ楽曲で自由にセッションするという、企画が奏功した好盤だと思います。本人なのかレーベル側なのかはわからないけど、発案者に拍手を送りたいですね。
 「雨を見たかい?」に「ハレルヤ」など、個人的に好きな楽曲をやってくれているのも、うれしい限り。ジェイクはアグレッシヴな演奏も、お手のものですが、やっぱりウクレレはこういうユルい感じが好きだなあ。

Various Artists『バービー・ザ・アルバム』

 バービー人形には馴染みも思い入れもないものの、初の実写映画が世界的に話題になっているので、なんとなく気にしていていたら、サントラがリリースされた。これが大充実の内容なので、ご紹介したい。
 とにかく参加陣が、ジャンルを横断して実に豪華。ビリー・アイリッシュ(写真)にデュア・リパ、リゾ、ニッキー・ミナージュとアイス・スパイスのタッグ(アクア「愛しのバービー・ガール」をサンプリング)、サム・スミス、カリード、FIFTY FIFTY(ラッパーのカリが客演)、さらにはテーム・インパラにハイム、ジャスティン・ビーバーとのコラボも大成功だったキッド・ラロイなど、英・米・豪・韓の錚々たる顔触れが集結。しかも、楽曲のクオリティが総じて素晴らしい。
 中でも、ロック担当として特筆しておきたいのが、<♪A〜B〜C〜D〜E〜F××K YOU〜>と高らかにシング・アロングしてみせたデビュー曲「abcde
fu」が、なんとも痛快だったゲイルの「バタフライズ」と、映画でケン役を演じる俳優のライアン・ゴズリングが歌う「ただのケン」だ。前者はゲイルの真骨頂と言える、パンキッシュなナンバー。ガンズ・アンド・ローゼズのスラッシュらが参加した後者はパワー・バラードで、今作でひときわ異彩を放っている。

 プロデュースは、ブルーノ・マーズとの「アップタウン・ファンク」でお馴染みのマーク・ロンソン。どこか懐かしくも新鮮で、耳馴染みのよい多彩なポップ・アルバムに仕上げる手腕は、さすがだ。映画への興味とは関係なく、洋楽ファンはぜひご賞味を。
                              鈴木宏和


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