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#20 レッド・ホット・チリ・ペッパーズ『リターン・オブ・ザ・ドリーム・カンティーン』

服部さんへ

 きましたね、ビョーク。僕も注目していました。僕はビョークを、人間の格好をした別の生き物だと思っています。そしてそのサウンドや歌は、宇宙やら地球やら大地やらのエネルギーを、己の肉体(に見えるもの)を媒介として音化、言語化したものだと考えています。これ、意外と本気で(笑)。
 残念ながらインタヴューをしたことはないのですが、先輩のライターUさんがインタヴューした際、終わった途端にダッシュでどこかへ消えていったと聞きました。地球にいられる時間が限られているんですよ、きっと。
 さてアルバムですが、どう着想を得たのか見当もつかないクラリネットといい、時に呪術的なトライバルなビートといい、突飛とも言える実験的なエレクトロ・サウンドやノイズといい、ことごとくポップ・ミュージック的とは思えないアプローチなのに、ポップ・ミュージックとして成立してしまっているという、相変わらずの鬼才ぶりですね。そして、フォーマットこそ変われど、その音と声には一貫して凄まじい生命力を感じます。
 ビョークの場合、音楽を作ったり、歌を歌ったりすることは、自身を表現する行為というよりは、シャーマンが神霊と交信するようなものなのではないでしょうか。そう思えてなりません。聴くほどに生命を吹き込まれるような、生きた血を注入されるような感覚を覚えつつ、畏怖するしかない下界の民なのでした。

レッド・ホット・チリ・ペッパーズ『リターン・オブ・ザ・ドリーム・カンティーン』

 同じ時代を生きることができて良かったーー。僕がそう感じているバンド/アーティストが、何組かいる。レッド・ホット・チリ・ペッパーズもそう。今年4月に約6年ぶりにリリースされた新作『アンリミテッド・ラヴ』で、その想いは揺るぎないものとなっていた。とりわけこの曲(↓)は、気づけばずいぶんと人生を生きてきたなと、黄昏ることが多くなった自分に沁みに沁みた。

 そして半年、なんと早くも次なる新作が登場した。前作と同様に、今作も本編が17曲。しかも、またしても名曲の玉手箱状態。ジョン・フルシアンテの電撃復帰が、バンドにどれだけのケミストリーとエネルギーをもたらしたのかを、感動とともに思い知らされる。献身的にバンドを支えた、前任のジョシュ・クリングホッファーとの別離が切なくはあるけど、これもまたレッチリらしいと言えばレッチリらしいわけで。
 個人的に大ウェルカムなのは、年を重ね作品を追うごとに、彼らの音楽のメロディアス度、メロウ度がアップしていること。他界したエディ・ヴァン・ヘイレンへのオマージュであろう「エディ」なんて、アンソニーが歌う旋律とフリーのベース・ライン、ジョンのギター・フレーズが泣きのメロディでハモるという、号泣ものの展開だ。アルバムのエンディングがポエトリー・リーディングというのも、たまらない。
 まだリリースされたばかりで、どうしても感動が先立ってしまい、1曲ずつ吟味している余裕がない。まあ、ゆっくり、じっくり、味わわせていただくとしよう。枯れた? いいじゃない。カッコ良く枯れてやろうじゃないの。若いモンには枯れることなどできないのだから。
                              鈴木宏和
                             


                                          

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