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SubEp.01 タマニーカップ

 これは、覚醒ジュニアが偵察のヒトクチタケを追い払って、アンズリーナを助けたあとの物語――。


 覚醒ジュニアの活躍によって偵察のヒトクチタケたちを追い払ったのも束の間。アンズリーナちゃんを連れ去るべく、ヒトクチタケのリーダーとオオヒラタケがすぐに追いかけてきました。
 なおこの時点ですでにジュニアは干からびている模様。

 よわよわポルチーノくん一行、ついにジ・エンドか――!?


「ヨォ……ヒヨっこ共……」

「オレのシマで荒事たァいい度胸だな――?」

「「「で、出たーーーーー!!!!!!」」」


 こいつは伝説のタマニータ!
 この圧倒的威圧感。威圧感と書いてタマニータと読む。
 もはや村を滅ぼした悪キノコより恐怖なのでは?

「フゥ……喧嘩両成敗でオレが全員ブッ潰してもいいけどヨォ……それじゃツマンネエよなぁ」

「ちょうどいい、オマエたち全員オレの言うとおりにしろ」

「意味がわからん、そもそもなんだオマエ――」
 ヒトクチタケのリーダーが至極もっともな反応をしますが、その歯の根はカタカタと震えているようでした。しかし――

「クソ脆い体で口答えするのか?オマエの傘なんてひとつつきで穴があくぜ?」

 こいつぁテリブル。マジでどっちが悪役かわからない。
 でもヒトクチタケは穴開くと臭いんでやめてくださいお願いします。

「ヒラッヒラッ……言う通りにしろと言っても何をさせる気だァ……?」
 状況を見守っていたオオヒラタケが口を開きました。
 やべー顔してるけど意外とまともに意思疎通ができるようです。

「オマエラ、タマニーカップは知っているか?これまで数々のヒーローが生まれた伝統のレースで、優勝者はレアなスキルカードが入った金のタマニー玉を手に入れることができるんだぜ」

「タマニーカップは誰でも参加できるし、勝てばレアカードが手に入るんだからオマエラのどっちにもメリットがあるだろ?」
 ポルチーノくんたちは昼間ジャンクショップで同じ話を聞いていましたが、タマニーカップへの参加は辞退していました。しかし、これは……。

「ヒラァ……つまり?」
「オマエラが何で揉めてるのか知らねーが、その勝負タマニーカップで決着つけな!」

 >> 強制イベント発生の予感! <<

 しかし敵もさるもの。というか、悪役なのでまっとうな手段でお宝ゲットを争おうなんてことはまず考えません。悪役ですからね。

(馬鹿め。レアアイテムの所在がわかった以上、レースより前に手に入れればいいだけのことじゃないか)
(ヒラヒラ。タマニーカップ開催中に襲撃するという手もあるなァ)

 「――って考えてんのがミエミエなんだよこのクソセコキノコどもがァ!!!!!」

((バレてるーーーーー!!!!!!))


 そんなわけで。
 覚醒ジュニアも干からびて絶体絶命だったポルチーノくんたちは、だいたい全部威圧感で助けられたのでした。

「タマニータ様、この場の仲裁とご厚意に感謝いたします」
 アンズリーナちゃんは、涙を流して頭を下げました。
 (覚醒ジュニアを除いて)物理的バトルでは勝ち目がないと薄々感じていたのでしょう。ポルチーノくんの主人公力が低いという悲しい現実の理解が早い。さすが賢い。

 一方、主人公力が低いと噂のポルチーノくんとIQ3くらいのムッシュは、状況が飲み込めずハテナを飛ばしてしばらくアホ面していました。
 きっと威圧感で記憶が飛んだんだね。

 次第にIQが回復してくると、二人は目をあわせてハッとします。
「まさか……ッポル?」
「まさか……ッシュ?」
 よわよわの自分たちがレースに出るだなんて、そんな百億光年は早い。レアカードを手に入れるどころかオーバーヒートでこんがりおいしい秋の味覚のできあがりなのでは?
 いやまて大丈夫、僕たちには無敵のジュニアが――

((ダメそう―――!!!))

(かくなるうえは正面から断るッポルよムッシュ)
(ムム……しかしオオヒラタケたちですら断れなかったのだよ……)
 そんな2人の思考も読んでいるぞと言わんばかりに、視線で殺茸できそうなやばい圧が突き刺さる。

 DEAD or DEATH。
 どう考えても詰んだ――。


「こんな時に不謹慎かもしれませんが――」
 タマニータの圧で枯れそうになってるポルチーノくんとムッシュをよそに、アンズリーナはなにかを決心したように呟きはじめました。

「私はこのレースの勝者を婚約者として選ぶことにします」
 突然の宣誓すぎてその場に衝撃が走る――!

「このレースはもはや、私の身と、ひいてはアンズ王国の窮地を救うということに他なりません……。それに、伝統あるレースの勝者ということであれば、民も納得してもらえるでしょう――だから!」

「どうかお願いです、タマニーカップに勝利して……私を助けてください!!」


「そこまで言われちゃ断るなんてできないッポルよ」
「もちろんだとも、これは一国の存亡をかけた大いなる戦いなのだよ」
「正義のヒーローっていうのも悪くないッポル」
「悪を見過ごすことなんてできないのであります」

 キラッ!!
 キリッ!!!

(あとアンズリーナちゃんの婚約者になるのは僕ッポル!)
(あとアンズリーナどのの婚約者になるのは私なのだよ!)


 ――かくして舞台は整いました。
 アンズリーナちゃんの身とレアカードを賭けた、ポルチーノくんたちの初めての大一番。

 だいぶわかりやすい欲目も見え隠れしていますが、果たしてどのような結末を迎えるのでしょうか。


 さぁ、いよいよタマニーカップが始まります!


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