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【2019シーズン】ヤクルトスワローズ観戦記

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ヤクルト観戦記、2019年シーズンはこちらにまとめて入れていきます。(オープン戦含む) 勝った日も、負けた日も、試合のある日は毎日更新しています。
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2019年5月の記事一覧

何をやってもうまくいかない時は、誰しもあるけれど 【5/30広島戦⚫️】

ライトフライを打ち上げた青木は、悔しそうにバットを投げた。その表情は外野からは見えないはずなのに、気持ちの全部がこちらにまで届いた気がした。 そんな悔しそうな顔しないでよ、と私は思う。 感情なんてなくしてやろうと思っていたのに、悔しいと思ってしまうじゃないか。嫌いになってもいいやと思ってたのに、応援したくなってしまうじゃないか。なにも感じまいと思っていたのに、好きだと思ってしまうじゃないか。 何だ、私は今日もこの人たちに騙されるのか。 続くてっぱちがファーストゴロに倒

ヤクルトが、勝つ日も、負ける日も。毎日、今日という日がくる限り【5/29広島戦⚫️】

荒木の打球が高く打ち上げられたとき、二塁のぐっちは全力でホームを目指した。なにかを打ち破るように、魂を込めるように。まだまだここで、終わりじゃない、とでも言うように。 高く高く上がったフライは、そのままセカンドの菊池のミットに収まった。ゲームセット。今日も、ヤクルトは勝てなかった。 隣の息子は、ボールの行方を見届けてから言う。 「・・・惜しかったよね?昨日と同じくらい。違う・・・?」 「惜しかったよ。もうちょっとだった。昨日とおんなじくらい。もうちょっとだね」 息子

みんな「悟った不良」になって、大切な人のことを考えて 【5/28広島戦⚫️】

試合の終盤にレフトの守備についたぐっちを、ずっと眺めていた。途中からの出場でも、そこでぐっちはいつものように、グラウンドの土に頭を近づけた。 どんな声が、選手たちに届いているのだろう、とその遠いところから私は思う。そこから見えるこちら側の景色は、どんな景色なんだろう。 ファンはもちろんみんなその試合が勝ち試合であって欲しいと願う。当たり前だ、みんな勝つことを願って応援している。そして選手たちは、勝つために戦っている。目指すものはごくシンプルだ。それなのにそのシンプルなもの

その痛みが、いつか何かにつながることを今日だって信じて【5/26中日戦⚫️】

「しかしなんでこんなにつらいのかねえ。」銀杏並木を子どもたちと並んで歩く帰り道、私はふと隣の息子に聞く。 「ママが負けたわけじゃないのにね。野球してるのはヤクルトなのに。ママがなんかできるわけじゃないのにね」 自分になにもできないものごとに対して、勝ってうれしくて、負けて悔しい気持ちって、一体なんなんだろう。 重ねているからなのかなぁ、と思う。あの人たちのその姿に、自分の今と、これからを。それとも、やっぱり大好きになってしまったその選手たちとチームが、辛そうなのを見るの

「坂口!下向くな!!前見て歩け!!!」とおじさんは言った 【5/25中日戦⚫️】

代打の村上くんに、ものすごい声援があがる。19歳の背中に、あまりに大きい期待がのせられる。村上くんの良い当たりは、センターの目の前に飛び、フライになる。とにかくことごとく、チャンスが全て得点にならない。そのもどかしさがもう太古から続いているような気すらしてくる。得点圏から得点できたことなどかつてあったのだろうか? 9回表、こんな場面でうめちゃんに投げさせることになっちゃってごめんね、と、思うと、なんだかもう情けなくて泣けてきた。うめちゃんは、それはもうめちゃくちゃ素晴らしい

私たちが中日ファンの松田さん(仮)から学ぶべきこと 【5/25中日戦⚫️】

いつ来るかいつ来るかと構えてはいたけれど、しっかり、やってきたそれが9連敗である。9?なかなかに新鮮である。 朝からお天気がとても良かった。「絶好のビール日和ですね」と、一緒に観戦する先輩たちとLINEした。「たまたま野球もやるそうですがとりあえず神宮ビアガーデンにビール飲みに行きましょう」と、いうことにした。そう、負けても勝っても(勝つなんてことがこの世にあるとは私にはやや信じられないけれども)大好きな人たちと神宮で乾杯する時間というのは最高なんである。それがあればもう他

大切なことを学ぶのは、きっと勝つことより負けることからだ  【5/23阪神戦⚫️】

どれだけ点を取っても取っても、ピッチャーが点を取られて負けるという試合が続くと、野手はそこそこ気落ちするだろう。 どれだけ0点を守っても、野手が点を取ってくれず負けるという試合が続くと、ピッチャーはそこそこ気落ちするだろう。 その小さなズレは、つもりつもるといろんなヒビにはなってしまうかもしれない。例えばもし、「点を取っても一緒じゃん!」と野手が思ってしまえば、その気持ちは後から何かに影響を及ぼしてしまうかもしれない。 野球というのは、投打のバランスで成り立つスポーツな

痛みは、いつも新鮮だけれど 【5/22阪神戦⚫️】

9回裏、二塁上のぐっち越しに、打席のエイオキが映る。ぐっちがヘルメットをおさえながら、スタートの構えをする。そうだよな、これを待っていたんだよな、と私は思う。その景色が、ずっと見たかったのだ。「望んでいたもの」というのは、目の前に現れて初めて、そうだこれが欲しかったんだなと、気づくのかもしれない。 痛みは、いつも新鮮だ。96敗した時だってつらかったかもしれない。去年の8連敗だってつらかったかもしれない。ノーノーだってつらかったかもしれない。でもそれはそれとして、まあ、連敗と

じっと耐えるべき時は、人生にも一つの試合にも必ずあるのだから 【5/21阪神戦⚫️】

いつもの達観モードに入るこの、6連敗である。致し方ない、どうしても、何が何でも連敗したい人たちなのである。大型連敗後の1勝、という、あのソフトバンクや巨人やニューヨークヤンキースにはきっと味わえないであろう瞬間を知ってしまった者の弱みである。いやなんかおかしいぞ弱いから連敗するのか弱みってなんだおかしいぞまあいいやもうなんでも(なげやり) どこかで連勝を積み重ねるチームがある一方で、連敗を重ねていとも簡単に借金生活に入るチームがある。そう、そういうものなのだ。勝負だから。「

そこで投げることを任された投手たちへ【5/19横浜戦⚫️】

ロペスの打球がスタンドに吸い込まれていったとき、ライトのぐっちはとてもとても悔しそうな顔をした。 ぐっちが悔しいと思う時、それは、きっとなっしーに対してじゃない。たぶん、それまでに打てなかった自分に対してだ。 がんばれ、と私はただ祈る。悔しい思いはきっと、その先のなにかつながっていく。今はじっと、それに耐えながらバットを振る時だ。 球場にはいつも、そこでしか見られない景色がある。 *** マツダで負けた日、うめちゃんの後まで残っていたピッチャーは、中尾くんと風張の二

いつだって「こういうこともある」と考えながら 【5/18 横浜戦⚫️】

「みてみて、まま、やくるとふぁん。」と、むすめが帰りの電車でそっと耳打ちする。 見渡すと、結構たくさんのヤクルトファンが電車に乗っている。みんな、いろんな想いを抱えながら、でもまぁ、普通の顔をして、電車に乗っている。ヤクルトが、勝っても、負けても、連敗しても、日々は続いていくのだから、という顔をして。 だめだこりゃ、というスタートから、だんだんやけに勝ち始めた去年。なにこれ勝ちすぎてこわい。というスタートから、だんだん負け始めた今年。 比べてみれば、そりゃやっぱり、下か

ぐっちがいる、「いつもの」神宮で 【5/17横浜戦⚫️】

神宮に、「your turn」が流れる。そうだよ、ぐっちの番だ。と、私は思う。空気が変わる。みんな待ってたんだな、と思う。言葉にならず、隣の息子の背中をガシガシ叩く。息子は苦笑いをして「はいはいよかったね」と言う。 「ぐっちの登場のこれ流れるの初めて見るんだねそういえば!」と、あのワードアート(懐かしい)で作ったような例の登場動画を見ながら息子が言う。私はもう一度息子の背中をガシガシ叩く。 ぐっちがいない神宮へ通い始めて、一ヶ月半が過ぎた。私はそこで、いつもと変わらずヤク

階段を登りきった時にうめちゃんが見る景色が、素晴らしいものであればいいなと思う【5/15広島戦⚫️】

こういう日はいつも、ぐっちのサインボールを取り出してみる。今日のそれは、いつもよりも軽く感じる。こんなにあっというまに、欲しかった一勝が手からこぼれ落ちていくからなのか。 1回を投げて急に降板したスアレスの穴を埋めるために、みんなが必死につないでいた。それはここのところ見られるようになった、ヤクルトの粘り強さだ。久々に、投打も噛み合っていた。マクガフは3イニングも投げてくれた。野手は7点も取った。 でも、勝てなかった。最後までリードを守りきることが、できなかった。 去年

「良いバランス」のチームで、トンネルの抜け方をしっかり身につけて 【5/14広島戦⚫️】

大切なのは、ピンチを背負わないことじゃなくて、背負ったピンチを乗り切る力なんだよなあ・・と、いつも思う。良い時の、というか勝てるピッチャーにはそれができるし、勝てない時は、それがどうしてもできない。 誰しも、ピンチは背負うのだ。ノーノーなんて、毎日できるわけはない。多くはランナーを背負った状態で戦う必要が出てくる。そこを乗り切ることが、その力が何より大切だ。 そしてシーズンを通した時に大切なのは、良くなかった前回の結果を、次に引きずらないことだ。一試合ごと、一イニングごと