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EP20 ジャミラは首吊り自殺ができない

EP20ジャミラは首吊り自殺ができない
シャンパンタワーの滝壺に溺れ
札束でケツを叩かれ尻尾振り
無価値なパンチラお勃ち台
『別の惑星での出来事』
地球最後のカリ首族の女がさも愛おしそうに我慢汁が溢れ始めた俺のペニスを握り絞め、さすが毎日オナニーしているだけあって、あんたのカリ首しっかり張っているわ、私の中で引っ掛かるからすごく気持ちがいいの、と褒めているのか馬鹿にしているのか不明なことを言う。
続けて女はこう愚痴をこぼす。
あんたと別れてから交際し始めた歳下の彼氏が長さは人並みなんだけど、亀頭が小さく先細りしているから中で全然イけないの。
そうしながらも、俺の乳首を吸ったり噛んだりしてくるが、一旦気持ちの切れた相手と改めて寝るなど愚の骨頂だとしか思えない俺は「毎日は(オナニー)してない」と女の発言を正す。
しかし女の手のひらの中で射精してしまう。
地球最後のカリ首族の女はバブル星人の姉と2人で閑静な住宅街のアパートに住んでいる。
化粧を落とすと眉毛がなくなり印象が激変するのが減点対象という一点を除けば姉妹に共通点はない。
何かと幼くそれが武器でもあり古着とモノ作りが好きな妹に対し、胸が風船爆弾でグラビア雑誌の表紙を飾っていても不思議ではない姉は、大人の余裕で色気を振りまいている。
ある時、マダニの巣窟みたいな古着の山に半分埋もれながら倦怠期の男女によくある投げ槍なセックスをしている途中で怒鳴り合いの痴話喧嘩になった。
女は俺の浮気疑惑の数々を糾弾し、俺は相手のモヒカン状に剃られたマン毛を嘲笑して衛生観念の欠如も指摘した。
すると地球最後のカリ首族の女が樺太に降る雪よりも冷たい目つきになって、裁ち鋏を持ち出し俺の亀頭を切断するべく詰め寄ってきた。
俺は咄嗟に黒の固定電話の回線コードを女の首に巻きつけ本気で強く絞めようとした、まさにその瞬間のことだ。
風呂上がりで金木犀の香りがするバブル星人の姉が今にもこぼれ落ちそうな胸元にバスタオルを巻いただけという大変ありがたい姿で降臨し、夜ごと溺愛している電動マッサージャー片手に烈火の如く厳しい口調でこう言った。
今すぐ別れなさい、あんたら2人とも腐ってる!
『それ言ゆか?』
暗く寂しい路地裏のどん詰まり。
蝉の死骸を避けつつ地下へと続く階段を降り、息を詰めながら、重い扉を開けて、中へ入る。
すぐに警報級の汗がどっと噴き出してくる。
ビニールシートで覆う面倒を省き、今やなめくじの手コキ地蔵通りと化している壁に剥き出しのまま立て掛けておいたマットレスを一目見ただけで、思わず溜め息が漏れた。
一面びっしりと、見たこともない色に発光する菌類が繁殖し、それは明らかに病的で、と同時に美しく蠱惑的ですらあった。
俺はこの上で脚を開いた女たちの、流した体液や分泌物の味と匂い、その化学反応を思った。
黒いゴミ袋に丸めて突っ込んでおいた衣類の多くも黴の餌食となっており、麻縄で亀甲縛りで地面に放置プレイの本や雑誌類も、湿気を吸って頁が波打ち茶色い染みが点々とついている。
エレベーターのない4階建て集合住宅で、ここから最上階の部屋まで階段を使って自分1人で運び上げなければならない。
しかも残暑厳しい炎天下の白昼ときた。
まずは朝鮮アサガオ入り精力剤で咳止め薬の錠剤84錠を一気飲みし、さらに安物のワインで火事場のV8馬鹿エンジンをフル駆動させた。
邪魔になるだけなのでB全パネルに描いた作品は、すべて粗大ゴミとして出すことにした。
家財道具といってもテレビも冷蔵庫も洗濯機すらないが、最悪でもCDラジカセと紙とペンさえあれば、充分生きていくことはできる。
カーテンレールに針金ハンガーを引っ掛けて、タオルやボロ雑巾を吊るして目隠しにした。
駅に面した窓を開け外の様子を覗いてみると、
距離が驚くほど近い。
それは手を伸ばせば線路に届きそうなほどで、汗でぐしょ濡れの指で触れさえすれば、高圧電流が俺の身体を貫きシステム障害のDNAも溶かして気持ちよく感電死できたかもしれない。
『ポスト脳乳浴』
大音量で鳴り響く憂鬱ロビートも圧殺する大きさで、粘着質で耳障りな店内アナウンスがしつこく繰り返されている。
俺の頭痛と筋肉痛はさらに激しさを増す。
貧しい輝きしか放つことの出来ないミラーボールに浮かび上がる女の目尻の皺に、男運の悪さが深く刻まれている。
どれだけ濃い口紅を塗っても寂しい顔立ちの痩せた女の履いているのが無意味に思えるくらい短いスカートの中に手を差し入れ、柔らかな陰毛の先にある乾いてきつく閉じたままの割れ目に指を這わせながら、俺は薄い麦茶にうがい薬を数滴垂らしただけのような味のウイスキーを飲み干すと、心にもないことを口走っている。
なぁ、俺と結婚しようぜ。
瞬間、女の手のひらが俺の頬を打ち、小気味良い音が俺の鼓膜と三半規管を麻痺させる。
女がぴしゃりとこう言う。
馬鹿にしないでよ、私にだって男くらいいるんだから!
俺はその言葉を、結婚の二文字とは縁遠い女の見栄と照れ隠しだと捉えたけれど、それは誤りで、自惚れが過ぎたかもしれない。
列車の発着音が降り注ぐ、駅の裏通りで重い足を引き摺りながら、そう悟ったふりをする。
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