令和5年予備試験口述 体験記

2024年1月20日、21日。
令和5年予備試験のラスボス、口述試験が実施されました。
高い合格率に比して非常に精神が削られる試験で、ある意味人生で一番過酷な試験だったと思います。
とはいえ、この緊張に耐え、Xで発狂しながらも試験を受け抜き、最後は仲間たちと打ち上げでおいしい酒を飲む...
紛れもない青春だったように思います。

この2日間を決して忘れないよう、日記形式でここに記しておきたいと思います。
来年受けられる方は、何となく口述本番のイメージがつくと思います。

長くて、かつ駄文ですが、最後までお付き合いいただけると嬉しいです。


〇前日―1月19日―

いつも通り18時まで仕事をする。明日のことで頭がいっぱいで仕事にならなかった。
昼休み開始と同時に基本刑法Ⅱを開く(1日目は刑事でした)。昼飯は抜いて、60分全てを勉強に費やす。いつもの数倍集中できた気がする。

退勤後、新浦安へ出発。二日分の着替えと大量の参考書をもって。かなりの大荷物だ。重い。電車内はいつも通り混みあっていて、疲れる。
でも、それ込みでも異常に疲れた気がするのは気のせいだろうか。

【持ち物】
・Yシャツ、スーツ類
・下着
・上着(会場で羽織る用)
・カイロ
・充電器
・腕時計
・ひざ掛け
・ラムネ菓子(当分補給用)
・教材類(基本刑法①②、基本刑訴①②、大島本入門・応用、民実アガ一問一答、ポケット六法、口述過去問5年分、口述模試)

 ホテルへ到着。マンションをそのまま流用したようなホテルだった。
浦安へ着くと緊張が一段と高まる。
24時間後、自分は笑っているだろうか。。

 ホテルから会場までは2km離れていた。徒歩にして35分。
2日とも試験は午後だったから良かったけど、午前だったらしんどかったかもしれない。

 晩御飯を食べ、2時間ほど最後の追い込み。
特にヤマは張らずに、刑事手続きと刑法各論をサラッと復習した。
勉強しながら、どんどん鼓動が速くなり、過呼吸気味になっていく。
明日の刑事で60以上なら勝ち確、でも59以下なら。。そう考えると胸が張り裂けそうだった。
特に、過去問を見る限り、刑事は問題が難しく、圧迫タイプの主査も多い。不安と動悸が止まらなくなる。

 24:30、問題ガチャと主査ガチャ当たりますように!と願いを込め就寝。意外とすぐ寝つけた。

 
〇1日目―午後刑事

8:30に起床。申し分ない睡眠だった。
勉強しようとするも、あまりの緊張で何も脳に入らない。
そこでX(twitter)を開く。
誰かが2019年のCさん(伊藤塾の口述過去問再現者)を見ると元気が出ると言っていた。前々からやたら名前が出ていたので、気になって読んでみることにした。

 割と、いやかなりやらかしている(失礼)。主査からガン詰めされているが120点ついている。
例えば「障害未遂罪」なる存在しない罪を成立させたり、訴因変更の要否を可否の問題として延々と論じるなど、中々のミスをしているが、それでも120。伊藤塾再現には「内心の動き」という欄があるのだが、その記載もリアルかつ独特な表現で思わず笑ってしまう。

本当に申し訳ないが、これで120なら絶対いけるわ、と自信がわいてくる。
直前に読んで本当に元気もらえました。ありがとう、Cさん。

 そんなこんなで11時になる。出発の時間だ。
集合時間は12時20分だが、念のため早めに出発することにした。

1日目なので、必要な勉強道具だけ持って移動する。
移動中は好きな音楽を聴いていた。特にado「私は最強」はテンションが上がった。

会場前で待っていると、ポツポツ受験生が現れ始めた。
なお、会場内では飲食できないので入場前に昼飯を済ませるのをお勧めします。私は試験場前でおにぎりをムシャムシャしてました。

 門の前には伊藤真先生が受験生にエールを送っている。
私は短答・論文でもお会いした。先生からエールを貰えば受かる、確立された勝利のジンクスだった。

 11:45、開門。
「頑張って!」と伊藤先生から声がかかる。その次の瞬間には入場。いよいよ始まる。絶対に負けるわけにはいかない。
何が何でも刑事で60を取る。
「勝つさ」決意を新たに試験場へ。
宿儺と戦う前の五条先生もこんな気持ちだったのかな、等と馬鹿なことを考えていた。

 
民事と刑事で分かれて整列させられ、順次受付開始。

受験票を見せ、「刑事〇-4」と書かれたプレート?が渡される。このタイミングで初めて自分の手番が分かるというのは重要だと思う。
つまり、集合時間ギリギリに行くのではなく、余裕を持って到着した方が心の持ちよう的に良いのである。

自分は刑事〇室の4番。真ん中かぁ。どうせなら最初が良かったな。

 その後、体育館に通される。
刑事・民事とも18列×7名。椅子がずらっと並んでいる。体育館には時計がかけられているので、腕時計なくても時間は分かります。
用意された封筒にケータイを入れろとのこと。
とはいえ、それ以上にチェックされるわけではないので、ケータイを隠してトイレに持っていって、X等で情報収集することも理論上は可能だ。やる奴はいないだろうけど。もちろん私も誓ってやっていない。
ガバガバ過ぎないか?というのが受験生の総意だと思うのだが、どうだろうか。

 受験生は皆緊張した面持ち。でも、高身長イケメンが多い。
予備受験生はチー牛か🤡しかいないのではなかったのか。どうせX上で発狂している面々も顔整いばかりなのだろう。
そういう奴らは総合商社・外銀外コンにでも行ってくれ、予備なんて受けるなよ、と怒りを覚えつつ、その時を待つ。

待っている間、糖分補給のためラムネを食べようとしたら、監督員に止められた。会場内では食べるのはだめとのこと。来年受けられる方はお気を付けください。

 あと、体育館は何より寒い。
ストーブくらい設置しろ。これが受験生の総意だと思うのだが、どうだろうか。

 12:20 本人確認開始。謎に二回続けて確認される。この間トイレに行けな    いので注意。
    並行して試験全体の説明が行われる。

12:50 番号1番の人が一斉に呼び出される。一気に緊張が始まる。いよいよか。

13:20頃 2番が呼ばれ始める。その後およそ20~30分ごとに3番、4番と呼び出される。

1番は一斉呼び出しだったが、2番以降はバラバラに呼び出される。そのため、列によって進みが早かったり遅かったりする。民事の方が総じて早い(2日目もそうだった)。
自分の列は普通くらい。進みが早いと前の人たちエグ優秀なのではないか?進みが遅いと主査に詰められてるのかな?等と変に勘ぐってしまうのは受験性あるあるだろう。

周りは必死に参考書を読んでいる人が多かったが、自分は緊張のあまり殆ど読めなかった。

 14:10「刑事〇-4番 全ての荷物をもって前へ来てください」

やっとか、待ちくたびれたぜ!との思いで誘導に従い、体育館から待機室(通称:発射台)に向かう。

発射台へ向かう白い廊下があるのだが、午後の日差しが差しこんで、何とも言えない神々しさを放っていたのを鮮明に覚えている。
ラスボス直前の廊下みたいだな、と感慨深い気持ちになった。

 発射台には、民事と刑事で、試験室ごとに1つずつ椅子がある。時計もある。また、体育館と違って暖房が効いていて暖かい。
そこでも30分くらい待たされた。緊張が最高潮を迎え、頭がおかしくなりそうだった。
ただ、呼び出し係の女性の方が優しくて、常に笑顔で、地獄に舞い降りた天使のようだった。

ひたすら入室後のシミュレーションを行う。
「失礼します。刑事〇室4番です。よろしくお願いします。」論証よりも唱えた呪文かもしれない。
間違っても名前や受験番号を言ってはいけない。言った瞬間に「リセマラ」が確定してしまうからだ。

 14:40頃、「刑事〇-4番さん、荷物を全てもって試験室へ向かってください」天使から声がかかる。
この時には緊張を通り越して覚悟が決まっていた。
係員に従って試験室の前へ。発射台から試験室までは、ポケモン四天王戦前の通路みたいな雰囲気だった。思わずダイパのシロナ戦BGMが脳内自動再生される。

試験室の前には人が座っていたので、また待たされるのかと思っていたら、「荷物を置いてノックしてください」と急かされる。
あ、座っている人は誘導の係員ね、と納得する。
いきなり入室するよう促されるので、ビックリした人も多いのではないだろうか。

 「大丈夫、模試でも合格点だった。」そんなことを考えながら、深呼吸をしてノックを3回。
チーンとベルが鳴る。
一世一代の人生をかけた戦いの始まりの合図だ。
「失礼します!」と元気よく入室。闘気をむき出しにして、入室していった。

 
【試験内容、試験中の心の動きは別note参照】

15:00ごろ、試験終了。
勝った!と思った。
とある有名受験生ツイッタラーが直前に言及していた「騙されたフリ」作戦がまんま出た。
これ答えられたのはガチエッジだな、X万歳と思いながら、誘導員に従って試験会場を後にする。

 
ここで、試験室の構造を書いておこう。
寮の一室で実施されるので、思った以上に狭い。東大の三鷹寮や豊島寮を彷彿とさせる。時計はないので、何分経ったか分からない。腕時計を確認する暇はおそらく無いだろう。
入ってすぐ右にユニットバスがある。ここに飛び込めば晴れて58点を取ることができるようだ。第2のリセマラポイントである。

試験官との距離は2mほど。マスクをしているので、聞き取りにくいかも。
小さな机の上に六法とパネルがあった。
机は本当に背が低いので、立ち上がる時に膝をぶつけてしまった(2日連続で)。別に減点はされないだろうけど、普通に恥ずかしいので、来年の皆様は気をつけて。

 
ホテルへの帰り道、忘れぬうちに再現を書く。
比較的よくできたので、完璧に近い再現(出来が完璧とは言ってない)だと思う。ぜひ読んでほしい。
ホテルにつき、16:30~19:00まで、泥のように眠る。どうせ明日も午後だし、夜寝れなくても問題ない。

 起床し、Xに張り付きながら明日の勉強を行う。刑事は簡単との声が多かったが、たまたま騙されたフリ作戦を知ってただけだと思う。知らなかったら普通に難問だったと思います。

その日は多くの人が発狂しており、お祭り状態だったことを記憶している。
アガ一問一答を一周し、明日の勝利を確信。前日の緊張が嘘のようだ。

25:00、健やかな気持ちで就寝。
…民事には自信があった。
(今年の論文は失敗したが)民事実務基礎、というより要件事実は一番の得意科目のだった。
1日目の民事の再現を見る限り、難易度は高そうだったが、ギリギリ何とかなりそうだった(倫理は無理だっただろうが)。
完全に油断していた。その時は気づかなかった。本当に恐ろしいのは2日目民事だということに。。。

 

〇2日目―午後民事
9:00起床。シャワーを浴びて、軽く勉強。
全く緊張はない。

10:00にチェックアウトし、伊藤塾の無料休憩室へ。荷物全部を持っていったので、とても重かった。
あぁいう場所を用意している伊藤塾は、さすがニーズがわかってるな、業界NO.1は伊達じゃないなどと偉そうに思いながら法曹倫理と大島本応用編を読み込む。

 休憩室は、静かな環境でとても集中できた。見ただけで優秀そうな若者が多くて、少し委縮した。やはりイケメンが多く、チー牛🤡はいなかった。伊藤塾は顔面セレクでもしているのだろうか。

休憩室では「伊藤真からの手紙」が配布されていた。大要、1日目の出来不出来は関係ない。油断せず、気合入れて2日目に臨めと。
浮かれ気味だった自分にとって、これ以上ない叱咤、そして激励であった。これ以外にも伊藤真先生の聖人エピは事欠かない。一代で司法予備校業界の頂点で上り詰めた男は、格が違う等と偉そうに思っていた。

 11:30、雨が降っていたので傘をさして試験会場へ。道中のファミマでおにぎり2つとファミチキを購入し、腹にぶち込む。

会場に着いたときには既に開門されていた。今回も伊藤先生からのエールを受け、12:00すぎに入場。勝利のルーティーンを抜け目なく刻んでいく。

受付で示された番号は「民事〇―5」つまり、5番目ということ。
微妙だなぁ、やっぱ1番が良かった。と思うと同時に忘れていたはずの緊張が蘇ってくる。

 今回はしっかりと勉強しながら、体育館で待つ。流れは同じなので細かい記述は割愛。

14:05頃、発射台への呼び出しがかかる発射台へ行くと一気に緊張が高まる。
だいたい14:40くらいに試験室へ呼び出されるかな、と思い、発射台で待っていたのだが、一向に呼び出されない。
この時点でかなり嫌な予感がした。難問か、主査が詰めるタイプか、どっちかだ。
再び極度の緊張状態へ。もう帰りたい、嫌だ、戦いたくないと何度思ったか。

結局呼び出されたのは14:50。前の人、30分近く拘束されていたのか。。
24時間ぶりのチャンピオンロードを通り、試験室のドアの前へ。シロナ戦BGMが流れてくる。

ドアの前で深呼吸、ネクタイを整え、ノックを3回。
「大丈夫、自分を信じろ」
不安を胸に抱きながら、足を踏み出していった。

 

【試験内容、試験中の心の動きは別note参照】

 

15:12 試験終了。20分強だったか。長く感じた、難しすぎた。
請求の趣旨、訴訟物からグダグダだった。
主査にもあきれられた。58かもしれない。絶望感しかなかった。

 試験会場を後にし、発狂するためXを開く。
そこでは皆口々に「2日目民事ヤバイ」「請求の趣旨わかる奴おるんか」等と呟いていた。

 「やっぱり難しかったのか…!よかった」
心の底から安堵した。
これで皆すらすら答えられてたら、気が気じゃなかっただろう。

ていうか、請求原因も聞かれなかったし、要件事実を必死に覚えた意味が無いじゃないか。せめて要件事実をメインで聞いて欲しかった。

 ふと空を見上げた。試験前まで降っていた雨が止んで、空は青く澄んでいた。
日差しが差し込み、体を暖かく包む。
やっと終わった、解放された、やり切ったんだ、とここで初めて実感した。

 

〇その後

夜、打ち上げに行った。
参加者は私含め9名で、うち飛翔組は4名。
口述終わりの解放感でお酒が進んだ(飛翔さんが一番飲んでいた)。

とにかく楽しかった。皆いい人で、面白かった。
試験の話題を正面から話せるというのも初めてだったし、何よりすべてから解放されてまっさらな気持ちで心置きなく飲むことができた。

 帰り道、飲みメンバーと司法試験での再会を誓って別れる。
一人電車に座る。カバンからぼろぼろになった基本刑法Ⅱが顔をのぞかせている。

口述は、死ぬほど緊張したし、たどり着くまで本当に苦しかったけど、
ここまで頑張ってきてよかった。
この気持ちを味わうためにこれまで頑張ってきたのかもしれない。

 司法も絶対頑張ろう、と決意し、基本刑法Ⅱを取り出して読み始めた。
             
              お わ り

 〇追記

私が予備を目指し始めた頃(2021年5月)、時を同じくしてハムスターを飼い始めました。
勉強中に餌をねだってケージをガリガリしたり、私が眠ってるときに回し車をカラカラ走らせたり。宇宙で一番かわいいペットでした。

ちょうど口述2日目に、亡くなりました。
ハムスターの寿命は約2年なので、かなり長生きした部類です。
私が家を出発するまで元気でした。口述2つ日目に急に旅立ちました。

きっと私の試験を最期まで応援してくれていたのでしょう。
ペットというのは、割とそういうところあると思います。
今までありがとう。安らかに眠ってね。


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