ニュータウンの展示

そこで、多摩ニュータウンの用地買収にかかわる問題や、その後の反 対運動、また買収によって土地を失うことになった既存地域の農民たちに対して強制的な 離農・転業を迫った「生活再建」問題など、多摩ニュータウンの「暗部」にも目を向けて 展示することに努めた。

これまでにも多摩ニュータウンに関して、たとえば日本住宅公団やその後継組織がPR のために多摩ニュータウンの展示を行うことがあったが、その多くはハード的なプラス面 のみに焦点を当て、「御用展示」とでもいえるようなものが多かったのも確かである。

(略)開発者側にとってはおそらく 触れてほしくないであろう事象についてもあえて直視し、問題解決のための材料を提示す るという立場を堅守したつもりである。

金子淳「多摩ニュータウンにおける「伝統」と記憶の断層」『日本都市社会学会年報 27・2009』

 この展示についてのアンケートを紹介していて、立場が中立すぎて何を伝えたいのかわからないというものがあったという。

対立しそうなテーマに対して、「中立」空間を作りだすことで、来館者にとっては自ら考えるきっかけにならないか、と思ったり。
戦争とか人権の展示って当たり前のように「こたえ」があるけど、必要なのは「こたえ」ではなく「考える」材料かもとも思ったり。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jpasurban/2009/27/2009_27_37/_pdf/-char/en


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