博物館の公的な価値を考える

①芸術・文化は正の外部性を持つこと。
②美術館等は費用逓減産業の特性を適用できること
③芸術・文化への好みは習得されるものであり、情報と経験の不足が市場の失敗をもたらすこと
④芸術・文化の享受には所得による格差と地理的格差が存在するため、平等主義や再分配の観点からも政府補助が必要とされること。
⑤地域レベルでは、芸術文化のアメニティとしての価値が公的支援の根拠とされるべきこと。

後藤和子「芸術・文化の公的支援理論における分権型評価システムの位置ー分権型財政システムと文化支援策の展開(1)ー」『経済論叢』第161巻 第2号

①博物館とその活動は市場を経ずに他の経済主体の行動に与えるプラスの影響。金沢21美とか大きいところならあるかも。小さいところでも博物館の建設により地価が上がるとかあるか。
②博物館の運営には、利用人数に関わらずかかるお金(家賃などの固定費)と人数が増えるごとに必要なお金(人件費などの限界費用)がある。固定費は、参加した人数で割れば、一人当たりの費用は減る。価格が限界費用より高くなることで、利用が極端に減らないよう補助をするのが通例。

③博物館を楽しめるというのは、習得されたものであり、経験や学習によって顕著に増えることが予想される。経験の不足は市民の潜在的効用を奪い、一人当たりの費用を高くすることにもある。そこで、公費によって経験機会を提供することが効果的。

④博物館は高所得者、高学歴者の参加が多いことが指摘される。また、東京都のような都市と地方の格差が大きいことも指摘されている。「文化的で最低限度の生活」の保障という観点からも公的支援が必要。

⑤地域の中でより快適に過ごすものとしてなくてはならないものとして博物館があるだろう、と。

後藤和子さんがジェイムズ・ヘイルブランとチャールズ・グレイの研究をまとめたものから、芸術・文化について書かれたことを博物館でも言えるのか考えてみた。

私は「遺贈価値」と「教育価値」に公的資金を投入するというところは納得した。次世代も博物館資料を利用できる状態にすることは、費用回収まで時間がかかりすぎるために、市場に委ねることができないと考えるからだ。また、③・④で指摘されているように博物館を利用したり、その外部性の効果の恩恵を平等に受けられるようにするために、教育が欠かせないと考えるからだ。

https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/45198/1/10161203.pdf


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