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誰もひとりぼっちにさせない社会

大災害。それは目に見える傷だけでなく
目に見えない心の傷をも残してゆく。

1995年1月17日。阪神・淡路大震災。
日本ではまだ PTSD(心的外傷後ストレス障害)が
広く認知されていなかった時代。
震災によって心に傷を負った人々に
優しく寄り添い続けた人がいた。
精神科医の安克昌さん。

彼自身も神戸で被災をしながら
震災直後から亡くなる直前まで被災した人々の
心のケアに奔走し 日本におけるPTSD研究の
先駆者となった安さん。

彼の生涯を描いたドラマ
"心の傷を癒すということ"が昨日最終回を
迎えた。

1月18日21時 第一回目の放送日。
我が家のテレビがたまたまこのドラマの
チャンネルになっていたこと。
本当に幸運だったと思う。
今はただ"観れてよかった"という幸せな
気持ちともうこの世に安さんはいないんだと
いう切ない気持ちが半分づつ 胸の中をぐるぐる
としている。

心の傷は外から見えない。
だから気づかずに見過ごしてしまう。
そして安易にその傷をさらに深くしてしまう
こともある。

誰かの助けてという声が聞こえていたのに
振り向かず逃げてしまった人。
大切な家族が見つかっていないのに
自分は生き残ってしまったと罪悪感に
苛まれる人。
あまりにも辛いことの連続に自分を守ろうと
いくつもの人格を持ってしまった人。

安さんはそんな人々に上から目線な
励ましの言葉はかけない。

ただただ目の前にいる人と同じ目線に立って
辛さや悲しさを共有する。
そしてそれは一時的にではなく
その人がまた前を向いて歩けるようになるまで
ずっと継続的に…。

安さんは震災から5年後の2000年12月に
病の為 志半ば39歳の若さでこの世を去った。

彼がずっと目指していた社会。
"傷ついた人や弱った人を決して見捨てない
誰もひとりぼっちにさせない社会"

震災から25年経った今も実現したとは
言えない。

彼が蒔いてくれた小さな希望の種が
しっかりと芽を出して 花を咲かせられるように
私には何ができるだろうか。

立ち止まってしまった人を その場所に決して
一人にしないこと。一緒に立ち止まって
歩幅を合わせる。一緒に悩む。一緒に悲しむ。
そしてまた一緒に歩き出す。

私は神さまでもなければ 医者でもない。
安さんのように寄り添える人の数は
多くないかもしれないけれど まずは自分の
周りにいる人から始めていきたい。

いつかその優しさが連鎖して
誰もひとりぼっちにさせない社会が
実現することを願って。

最後に 私がこれから御守りのように心にずっと持っていたいと思った台詞をひとつ。

"弱いってええことやで。
弱いから人の弱いとこが分かって助け合える。
おっちゃんも弱いとこあるけど
全然恥ずかしいとおもてへん。"

安さん。
弱いって人間の一番の強みなんですね。

大切なことを沢山教えてくれてありがとう。

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