☆八女福島の持続するまちづくり☆  ー みゅぜぶらん八女 ー によせて

1.【はじめに】
私は、2012年3月に八女市役所を定年退職した。現職の八女福島の町並み担当の時代から行政マンながら草鞋を何足も履いて、民間のリーダーとしてもまちづくり団体を起こし、行政マンと市民の両方の立場から住民目線でまちづくりを展開してきた。
町並みを活かしたまちづくりには、色々なやり方、進め方があると思うが、ノウハウはそれぞれのところでお作りいただくもので、それをどのように活かし、将来に継承していくか、八女福島では課題と目標を明確にして、八女福島のやり方で実践してきた。そこには、理念として使えるものがいくつかあると思う。
住民と行政が、それぞれの役割を共有し、車の両輪として協働を深めつつまちづくり活動を持続していけば、いい町並みが出来ていくのではないか。だとすれば、どんな視点で、どこにポイントをおき、何を実践していけばいいのかが重要となる。

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2.【まちづくりをふり返り、土地の文化と歴史を前面に】

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歴史的町並み保存継承の活動は、個人の財産に関わる問題でもあり、様々な課題と向き合う複雑な取組みで、私は行政マンとして住民目線を信条とし、また、一人の人間として全ての能力を注ぎ込んで取組んだ。ふり返ると、八女福島の歴史とその貴重な価値へのきづきが大きかった。町家には先人の見事な匠と脈々と育まれた人々の暮らしが詰まっており、それを経済優先のスクラップ&ビルドという価値観が優先する中、簡単に壊して良いのか、歴史や文化を軽んじて良いのかと、もがき苦しむ中で私は成長した。
全国の町並み保存地区の多くは、急速な人口減少で空き家の増加及びコミュニティの担い手不足、全国一律プレハブ型の住宅建設が主流の今日、伝統建築を担う大工や左官などの職人の激減という厳しい現実に直面している。八女福島ではこの大きな二つの課題を真正面から捕らえ、空き家再生活用集団と建築技術集団を発足させ、先駆的に活動を持続させている。この活動が高く評価され(公社)日本ユネスコ協会連盟「プロジェクト未来遺産」の第一号として2009年に登録された。そして、これまでの集大成として、活動を記録検証し次世代に継承する準備のため、ドキュメンタリー映画「まちや紳士録」の製作に取組み、2013年から全国上映を通して町並み保存継承のノウハウを全国に発信している。
全国の仲間と繋がり、複雑で困難な課題が立ちはだかる中、常に人と人、市民と行政が響きあう協働のまちづくりを意識しながら、暮らし、命、心とともに家(町家)を繋いできた日本の「木の文化」を次世代に引継ぐ活動をこれからさらに持続することで、この土地の歴史文化を磨くまちづくりの可能性を開拓したい。
また、久塚純一先生とは、7年近いお付合いをさせていただき、代行リノベした八女福島の町家建築を活用して、今年から「みゅぜぶらん八女」開設頂き、まちづくりを発信いただいており、深く感謝申し上げます。


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3.【ウイズ・コロナの時代をどうのりきるか】
最近、八女福島では、町並みの保存整備も進み、継続したまちづくりにより魅力も高まっていることから、増えてきた来訪者に八女福島らしいおもてなしをするため、2年前から観光まちづくりに力を入れている。
昨年から進める空き町家を再生活用した分散型宿泊事業は、町家建築の歴史性及び価値を尊重しながら客室やレストラン、または店舗としてリノベーションを行い、伝統工芸に代表される土地の文化や歴史を体感できる複合宿泊施設として再生していく取組みで、コンセプトは「住まうように泊まる」であり、滞在型観光まちづくりのキーワードにしている。
今年は新型コロナウイルスの影響でまちづくりにも大きな打撃となった。一方で、テレワークなどが普及し、自分の生活を第一に、住む場所や働き方を考えるという動きが広まりつつあるように感じている。そして、都市部から20~40代を中心に感度の高い若者層の地方への移住が、進みそうな予感がしている。
そして、旅行者は遠い場所より、自家用車で行ける安心な近場を観光するようにシフトするのではないか。これを「マイクロ・ツーリズム」と呼ぶようである。地域内で誘客を狙うような市場の重要性を再認識し、土地の文化や歴史の魅力を更に磨きつつ、適したサービスをすることで、土地に適した観光まちづくりを創出したい。


≪北島力のプロフィール≫

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☆【経歴】 1952年八女市生まれ。1992年八女市企画課にて町並み保存を担当、2000年地元建築集団「NPO八女町並みデザイン研究会」発足、2001年「八女市文化的景観条例」制定、2002年八女福島の町並みが全国61番目となる国の「重要伝統的建造物群保存地区」選定、2003年空き家再生活用の専門集団「NPO八女町家再生応援団」発足、2012年都市計画課長を最後に定年退職、2013年ドキュメンタリー映画「まちや紳士録」を完成させ全国上映活動、2013年空き家再生活用活動を拡大するため「NPOまちづくりネット八女」発足、2016年八女福島の町家に移住。
☆【受賞歴】 2016年「自治体学会賞・田村明まちづくり賞」、2017年「日本建築学会文化賞」
☆【現在の役職】 NPO法人全国町並み保存連盟副理事長、 八女福島町並み保存会事務局長、 NPO法人まちづくりネット八女理事長、 NPO法人八女町並みデザイン研究会理事長、NPO法人八女町家再生応援団理事、株式会社NOTE八女代表取締役
☆【連絡先】 :090-8413-6128
事務所 : 〒834-0031八女市本町264西棟
email: bynrt982@ybb.ne.jp
website:http://www.yame-machiya.info/



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