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48を追ったひと夏【ライオンズ観戦記】

書くタイミングや構成を考えていたら半年くらい寝かせてしまった記事。この記事の一部と対になる記事を今日のコミケに寄稿した関係で、どうしてもそれまでに上げないといけなかったが間に合わなかった。

これは今年の夏の思い出。

プロローグ 2022/10/2~2023/7/22

書き出しをどこからに設定するかに悩んだが、そもそもこの日からのことを記事にしていなかった。(ここから長いです)

2022/10/2
埼玉西武ライオンズvs北海道日本ハムファイターズ。2022年シーズンのペナントレース最終戦。前日、今となっては戒められた人のサヨナラHRで劇的勝利し、3位を確定させていた。裏ではホークスとバファローズの最後の1試合での首位争いが繰り広げられていたが、このカードは順位に一切関係なく2022年パリーグ全試合の中での唯一の消化試合とも言われていた。前日の余韻が残る一方で、少ししんみりモード。十亀剣の引退試合だったからである。ブルペンに入る前にキャッチボールを捕手がBCでなく内野手が組んでたり明らか違和感を覚えることもあったが、ほぼいつも通りの試合開始前だった。
異変が起きたのは17:50頃。球団HPには特に告知の無かったセレモニアルピッチの予告が。

投げる知り合いでも紹介するのであろうと思ったが、第一声で語られたのは引退であった。

らしいと言えばらしい姿で48番は、武隈祥太はユニフォームを脱いだ。
泣いた。試合が始まっても泣いた。覚悟はできていたが、受け入れたくなかった。確かにその1週間前に行われたイースタンホーム最終戦のベルーナドームで同僚と共に写真を撮る姿を見ていた。だが9/15の復帰登板で完璧な内容を見せてただけにだ。

何の因果か、その日は武隈ユニで来ていた

11/23
引退セレモニアルピッチの動画で予告されていた通り、ファン感で武隈の引退セレモニーが行われた。

その時に花束を渡したのが今井だった。いつも通り飄々と挨拶と球団ファーム・育成グループ付兼バイオメカニクス兼若獅子寮副寮長への転身を発表した本人と対象的に号泣しながら花束を渡す姿。オフに自主トレを共に行っていたが、ここまでも慕っていたということには非常に驚かせた。
その後ファン感から1週間が経った、12/1。今井は背番号を11から48に変更すると発表した。野田→公文と渡った23、小石→小川→青山と付けてきた29、髙橋朋巳→吉川→羽田と左腕が継承した43のように、48はどちらかと言えば中継ぎタイプの選手、もしくは左腕が継ぐと思っていただけに驚いた。タイプで言えば左右は違うが、22年の開幕時のファンブックで対談したいた田村なんかが近いとは思っていた(40番台同士の変更は現実的でないので、あくまでタイプとして近いだけ)。それ故にドラ1で入団して付けた11という期待の大きい背番号を変えてでも48を継ぐということには改めて想いの大きさに驚かされた。


2023年シーズン開幕。今井は背番号を変えた。フォームを変え、登場曲もメッツのクローザー、ディアスでお馴染みのNarcoに変えた。オープン戦、開幕から圧巻のピッチングで、特に4/11の県営大宮でのロッテ戦では8回途中までノーノーピッチングで1安打完封勝利。今年の今井は違うぞと思わせた。
しかし一方で武隈の後継者と受け入られたかと言えばそうではなかった。感情や好みの話ではない。そもそもポジションも投球スタイルも違いすぎるという単純なところからだ。ブルペンの便利屋としてピンチに飄々とマインドに上がり、140キロにもあまり満たないが回転数の非常に高いストレートと特徴的なチェンジアップで打者を翻弄する武隈のピッチスタイルと比較すると、100球を超えてもなお150キロ台を連発するスタミナと荒れ球を武器に先発で投げる今井は正に真逆だ。同じ背番号48でもメジャーのデクロムの方が近いと思えた。
だが好調も長くは続かなかった。4/21のオリ戦以降は好投と乱調が交互になり、5/24のZOZOでのロッテ戦3回途中8失点。この登板を最後にファーム調整となった。

7/4に1軍復帰。奇しくも降格前と同じZOZOのロッテ戦での先発だった。延長の末、試合には敗れこそしたが8回2失点と結果を残した。翌7/12の北九州での登板で復帰後初勝利となる4勝目を上げる。4/28以来2か月半ぶりの勝利だった。

7/22
ホームでの楽天戦。後半戦開幕を託されたのは今井だった。先発前までで楽天に対して6連勝&32回2/3無自責を誇っていたからだ。
そんな今井がマウンドに上がる際に流れた曲は、NarcoではなくナオトインティライミのLife palletだった。言わずもがな武隈祥太の登場曲として長く使われた曲であった。前述のように復帰後2戦はビジターでの登板だったため、復帰のタイミングで変えたのか後半戦から変えたのか定かではないが気合の現れと師匠への想いと継承を感じた。7回115球1失点(自責0)で勝ち投手。楽天戦7連勝は同無自責記録は39回2/3になった。
翌7/29の仙台でも7回112球無失点で勝利し、記録は8連勝・46回2/3まで伸びた。

8/16 夏を焦がす熱投

この日はファームとの親子試合。ベルーナドーム同士では5年ぶりの親子開催だった。

怪我から復帰し三塁守備も再開した渡部健人、大学代表時代から密かに注目してた児玉亮涼、トレード加入したばかりの髙松渡、期待の星山村崇嘉、など上げたらキリが無いが、見たい選手がたくさん見れた。ちなみに画像の山村はこの打席で2球連続でバットが折れている。試合は3-7で敗れた。
親子試合のためこのままベルーナドーム周辺に残りたかったが、2軍戦中には飲食店がほぼ空いておらず昼食を食いそびれることになるので所沢市街へ向かい16時の開場に合わせてベルーナドームへ戻った。

ここで後半戦のカード並びについて少し補足する。前述のように7/22(土)からはホーム楽天戦であったが、翌週7/28(金)からは仙台で楽天3連戦であった。少し間が空き8/15(火)からホームで楽天3連戦、その2週間後の8/29(金)からは仙台で楽天戦3連戦。その後は間隔が空いて9/21(木)と9/27(水)にそれぞれ楽天戦が設定されていた。つまり7/22→7/29→8/5(先に中9日で8/8もあり得る)と中6で投げた後、9日開けて8/15→8/22(中6)→8/29(中6)→9/6(中7)→9/14(中7)→9/21(中7)→9/27(中5)と投げれば、無理の無い範囲で後半戦だけで6回楽天に当てられると計算していた。しかし実際には8/5の登板までは合っていたがその翌日に抹消。光成の特例抹消で読めなくなるも、最短で再登録できる8/16に先発となった。抹消より先に8/16のチケットを買っていたため狙った訳では無かったが、早くもLife palletを背負った今井の姿をホームで見ること実現した。

17:24頃、グラウンドに今井が姿を見せる。ブルペンに向かいストレッチをし、それらが済むとBCとキャッチボールを開始、距離を伸ばし遠投となっていく。先発投手の見慣れた姿だ。

17:24ブルペン入り、48の姿も初めて見た
遠投
スタメン発表時

ブルペンに戻り、試合前のブルペン投球。剛速球を投げ込む。武隈は咋シーズン1度も1軍に上がっていなかったため、生で背番号48がベルーナドームのブルペンで投げる姿を見たのは2021年のホーム最終戦以来だった。

"背番号48"のブルペン
今日もバッテリーを組むのは古賀
いざ出陣

18:00試合開始。

今井はLife palletを背負ってマウンドに上がった。やはりこの曲をドームで聴くだけで気合と気持ちが入る。本当に流れているのかと感動した。

この日の今井は圧巻だった。初回は3者連続奪三振スタート。3回に無死1,2塁→2死満塁のピンチを作ったが、難なく切り抜けた。打線は2回裏に長谷川、蛭間、源田の3者連続タイムリーで一挙4点をあげ、今井を援護した。

3回表のピンチで間合いを入れる今井と声をかける佐藤龍世

その後は6回までピンチというピンチは作らなかった。
しかし7回表、1死から島内に被弾。対楽天戦の連続無自責は52回2/3でストップした。奇しくも最後に楽天が今井に自責つけたのも島内のHRだった。だが後続を抑え、8回もマウンドに上がり3人で抑えた。ここまで115球。
8回裏、気になったのはライオンズの攻撃でなくブルペンの動きだった。中10日空けた登板で休養十分。一方で球数は115球と目安となる100球は7回終わった時点から上回っていた。だが3塁側ブルペンは8回裏の間は誰も用意していなかった。

9回表にマウンドを上がったのも今井だった。Risukeさんのon the mound for the final iningのコールと共に再び登場曲のLife palletがかかった。試合にはまだ勝利してないのに、これだけで感動ものであった。
最終9回にこの曲がかかったのはいつ以来だろうか。そもそも武隈は抑えや勝ちパターンの投手でも無かった。そのため9回に投げることがあっても、同点かビハインド、もしくはある程度差がついている場面がほとんどであった。代理守護神としてセーブが記録されたのも2015年の1度だけだ。9回3点リードと勝ちを手繰り寄せる場面でこの曲が流れることに凄みを感じた。

なお9回表が始まってから平井と佐藤隼輔が準備を始めてはいた。だがこの試合に登板することは無かった。

9回表、今井はわずか6球で試合を締めた。9回121球。今季2試合目の完投勝利で7勝目をあげ、対楽天戦の連勝記録を8に伸ばした。

今井は源田と共にヒーローインタビューに上がった。ブルペン好きとはいえ、先発投手の完投・完封勝利にはやはり格別な喜びがあった。この試合の熱はしばらく収まらなかった。
なお試合後、今井のタオルを衝動買いした。2週間後の仙台のために

8/30 君は左、私は右、別々でも

朝焼けの中、18きっぷ片手に敵地仙台へ。目的は今井達也、と歯切れ良くは言えない。というのも、この日の楽天戦はアイドルマスターミリオンライブ!とのコラボ試合だった。
西武と楽天の因縁は言わずもがな。キービジュの人選とか埼玉公演で発表したとかミリPとして色々悶々としながらも、なんだかんだでチケット発売開始日当日に2席確保していた。だが2週間前、8/16の登板を受けてそこから数日はこの試合は今井達也を見に行くのだと決心した。しかしその3日後に見たミリアニ第1幕を見て再び心が揺らいだ。どっちつかずのまま北へ向かった。どっちもだよ!が正しいのか。

6年ぶりの仙台、初めての楽天モバイルパーク宮城。まず向かったのは観覧車。

観覧車から見る試合前練習はとても面白かった。そんな上から練習を見たり撮ったりできるのと思った。これで無料なのは太っ腹。
コラボステージの観覧を終え、夕食を買って食べているとちょうどライオンズの選手が出てきた。ベルーナドームと違いネットが無い一方、屋外球場で日没後は写真があまり綺麗には撮れないのでたくさん撮った。

連敗中だが、非常に雰囲気は良く安心した。

今井もキャッチボールを開始

エラーする一幕も
後ろ髪を靡かせ投げる姿は格好いい
体重移動を気にする様子。8/16の試合前にも見受けられた。
投げる前に球種予告するのすこ
キャッチボール終了

今井がベンチへ戻っていくとほぼ同じにもう1つの目的であるミリオンのセレモニアルピッチがスタート。これらコラボの模様は前述のように別所でレポを書いたので、載せられなかった画像だけ掲載しておく。ミリアニ見て

18:00定刻で試合開始

この日の今井も立ち上がりは良かった。3回表、先頭の平沼がスリーベースで出塁すると、続く古賀のタイムリーで先制し今井に援護点が入った。しかしその裏、先頭村林に出塁を許すとフランコと島内のタイムリーで逆転される。その後もランナーを背負う場面が多かった。特に6回裏は2死満塁までいったため、ネタを仕込むためにクリームソーダを買い行きながら非常にハラハラした。7回、8回も1,2塁のピンチを作った。3回以降は本調子とはいかないながらも8回125球2失点。イニングではHQSを上回って試合を作った。これこそが復帰後の今井の真骨頂だ。

その今井の熱投に打線が応えた。

9回表マウンドに上がった楽天の守護神松井裕樹。2死に追い込まれるも、蛭間がツーベース、続く外崎がタイムリーツーベースで同点、さらに平沼のタイムリーで逆転。今井に勝ちの権利が付いたのである。古賀にもタイムリーツーベースが飛び出し2点差に。ライトスタンドのライオンズ応援席は狂喜乱舞。東北チャンテもチャンテ4もソーリャセもやった。これは勝てるぞ、今井の8勝目&楽天戦9連勝だ、そう確信していた。

しかし9回裏にマウンドに上がった増田が捕まり、1死も取れぬまま浅村のサヨナラHRで試合終了。サヨナラ負けだった。
唖然とした。呆然とした。悔しかった。増田の起用も間違いなかったし、天然芝特有の外崎のエラーから始まったイニングだっただけに、難しい展開だった。しかし何より今井の125球の熱投が報われないのがやるせなかった。

ただこの熱投とゲームメイク能力を見て、改めて後半戦の今井は変わったと思った。タイプもポジションも違うが武隈の後継者としてすんなり受け入れられるようになった。

エピローグ 11/19

8/30の登板の後、9/6→9/14→9/21→9/29と先発し今井の今季登板は終わった。9/21には再び仙台で楽天と対戦し勝利。対楽天戦の連勝を9に伸ばし、2年ぶりの2桁を決めた。最終成績は19先発133回10勝5敗130奪三振69四死球 防御率2.30。
実のところ9/20と9/27のチケットも購入していたため、そのどちらかに今井が投げると予想していた(そのためもう1戦現地が増えるかもと夏のうちに記事が書けなかった)。特に9/27は楽天戦でホーム最終戦。9/6から中6を2回、もしくは9/21の仙台で投げても中5日をすれば再び楽天戦に当たるため可能性は高いと見ていた。しかし実際には中5日を避ける運用と上位進出が厳しいチーム事情にあってその予想は外れ、2日とも先発は渡邉だった。

オフにはオーバーエイジ枠でU23の日本代表に選ばれた。勿論背負うのは背番号48。そして11/19、今井はアジアプロ野球チャンピオンシップの決勝の日韓戦のマウンドに上がった。この日の登場曲もLife pallet。代表やASなどの大舞台とは無縁だった師匠の想いを継ぎ、背番号48でこの登場曲で国際大会の決勝のマウンドに上がったのである。結果こそ4回2失点だったが、西武ファンの胸に刻まれる登板であった。


11/26のファン感で嬉しい知らせがあった。来年3月に行われるライオンズのOB戦に武隈祥太も出場することが発表された。再び武隈が試合で投げる姿が見れるのである。非常に楽しみでもあるし、引退登板というものが無かった中で実戦としてはほぼ最後にドーム投げる姿を見れば、また気持ちの持ちようも変わってくるのではないかと思ってる。とにかく待ち遠しい思い出いっぱいだ。

そして来季のライオンズ。勝つためには打線の復活は期待するが、やはり期待するのは先発投手陣だ。特に光成、平良、そして今井の3本柱。この3人で480イニング40勝10完投は上げてほしい。指標としては今井ではなく隅田の方が勝っている声もあるが、ここに入るのは右腕というタイプ的にも期待値的にも今井だと思う。
今の先発投手陣の強みの1つは完投能力がある。光成、今井だけでなく、隅田、松本、與座も今年は完投・完封を記録した(8回完投負けも含む)。現代野球の流れには逆行するようにはなるが、100球を超えてもなお勝てるピッチングができるのは才能である。田村や佐藤、豆田には大いなる期待をしているし、平井も残留した。とはいえ、ブルペンの不安さは残る。この能力が来季は遺憾なく発揮されてほしい。

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