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2020年シーズン 千葉県クラブユースU15決勝の主審

こんにちは、武蔵です。私が2020年シーズンに千葉県クラブユースU15の試合の主審を務めました。2020年で千葉県審判員となって11シーズン目を迎えてました。
私は2019年シーズン後半は成績がめちゃくちゃ良いシーズンでした、そして2020年シーズンはコロナ禍になり中々見てもらう機会は少なかったものの、2年間の成果を考えれば大変嬉しい出来事でした。

そんな中、今回は決勝の主審を務めた時の心境をお話します。

□試合前のゲームプラン

どんな試合でも、必ずと言っていいほどゲームプランを立てる必要があります。
この決勝戦の試合をもらった時に幾つかの事を意識して試合に挑みました。

・選手にとっては泣いても笑っても中学サッカー生活最後の試合、必ず勝ちと負けを受け入れてもらう環境を作る。

・タフな試合にし、インテンシティーの高いゲームにする。 
 
・この決勝戦、なぜ自分が選ばれたのかをしっかり考え、千葉県の頂点を決める主審を務めることにPrideを持つ。

この3つが大きな試合でのテーマでした。これらの事を意識する事で次にやる事は判定基準の整理です、まずは判定をする上でどういった根拠を持つべきなのかを競技規則を読む必要があります、私が試合前に重点を置くのは試合で起きそうな部分になります。

決勝、普通のリーグ戦、残留のかかった試合、首位攻防戦。どれも同じ試合で起きる出来事は一緒ですが、所々で違う部分もあります。例えば、得点の喜びの部分で、掛かってる試合ではゴールが決まれば大喜びしてしまいますよね?

でも、得点の時にもいくつかの注意点があります。それは

得点の喜び
競技者は得点をしたときに喜ぶ事はできるがその表現が過度になってはならない。あらかじめ演出されたパフォーマンスは勧められず、時間をかけ過ぎてはならない。

このように得点の喜びにも規則があります。そして

次の場合、競技者は得点にならなかったとしても警告されなければならない。
・安全や警備に問題が生じるような方法で、ピッチ外周フェンスによじ登ったり観客に近づく。
・挑発したり、嘲笑したり、相手の感情を刺激するような身振りや行動をする。
・マスクや同様のものを顔や頭に被る。
・シャツを脱ぐ、シャツを頭に被る。
・得点があったときにフィールドに部外者がいて得点を認めてはならない場合
→得点した競技者、交代要員、交代して退いた競技者、退場となった競技者または退場となったチーム役員の場合。  
 
これらが起きた場合、直接フリーキックで再開

上記のように得点時に喜び過ぎたりベンチの選手とかがフィールドに入ってきてしまいそうなときが多くあったりするかと思います。これらの事が起きた場合にどうするか?って事も頭に入れておく必要があるし、先にわかってれば起きない為にはどうしよう?どのように対策をしよう?というふうにイメージしていきます。

とは言っても、試合とは台本のない出来事に対応していかなければいけないというふうになってますから、非常に難しいんです。

これらの事をどのように対応するのか?試合前では

・どこまで喜ばせておくのか、度が過ぎそうなら笛を使う。  
 
・GKが輪の中に入ろうとしていたら、次のkickoffの事を考えてペナルティから出さない工夫など。 
 
・同点弾の場合、ボールの取り合いになりそうな場合の次に再開するチームを明確にする為に得点したチームの選手達をボールの周辺から離す。

といった事をあらかじめプランを立てておくと、いざ試合の時に準備ができます。これ以外にもたくさんありますが、いざ試合の時にこれらの事がしっかりと対応できると選手やベンチあるいは本部役員からの印象や信頼もガッツリと掴めます。

もうひとつ気にするべき事があります。それは移動時です。例えば何で行くのか?試合前にはどういったものを食べるのか?マッチミーティングで何を伝え、そしてミーティングの段階から両チームをどのようにコントロールしていくのか?等も考えます。これらをやる事によって、家を出る時やあるいはアポイントをもらった段階から試合を始める事ができるのです。


□トレーニング

ゲームプランを立てた後はしっかりとトレーニングを行います。私が行う主なトレーニングは

・ミドルランニング(約4.5キロ 21分 運動強度80%) 
 
・ロングランニング(約12キロ  65分 運動強度75%)
 
・インターバル走(75m×25m 15分ー15分×10本)
 
・4分間アジリティ又は筋トレ(20秒トレーニング 10秒レスト×8セット  運動強度90%) 
 
・坂道スプリント(運動強度90%)

主に行うトレーニングはこれらになります、それ以外には切り返しのトレーニングだったり、加速や減速のトレーニング等も行いますが、シーズン中や試合前はほとんど試合で必要なトレーニングを行っているだけです、ほとんどが上の中からひとつ選んでトレーニングをしている形でただやるだけでなく、運動強度や心拍数を意識してトレーニング、運動強度はこの%を目指していけばより高いトレーニングができるという事になります。

トレーニングを行う上でいつも意識していることは、試合を想定してトレーニングをすること。ロングランニングなんか行っていると試合をイメージする事があったりするので、所々でスプリントを入れてみたり、後は試合で起きそうな出来事をイメージしたりしています。

トレーニングも試合で生きなければ全くの無意味になってしまうので、そこはしっかりと試合をイメージします。よりリアリティを出したい時はYouTubeで応援のチャントを聞いたりすると試合のイメージは湧きやすいと思います。

トレーニング=試合でより良いパフォーマンスをするために行う。

これらを意識していれば問題はありません。私はトレーニングは少ない方です、週2〜3回程しかやってません。あと、選手もやってるので個サルでトレーニングしてないなぁと感じたら、個サルで強度を上げる事がほとんどです。個サルではポジショニングの練習にもなりますから、上手く活用しています。

プラス試合までにどんな食事を摂るのか?もトレーニングの一環です。私は試合の2週間前に摂取し過ぎてるなぁと判断すれば、まずは食事の量を減らしていきます。私はお酒を飲む事も好きですが試合の直前には量を減らしていき、試合の5日前くらいにはほぼ飲まないくらいにまで持っていきます、ほぼ飲まないくらいまでに持っていける時はものすごくコンディションが良い時です。

 試合の1週間前→野菜、肉(タンパク質類) 炭水化物は控えめか摂取しない。 
 
試合の2日前→野菜、タンパク質類、炭水化物多め。
 
試合前日→炭水化物多め、好きなものを食べる(ラーメン等はNG) 

これらを意識する事で試合へのサイクルができます。試合に近くなればなるほど炭水化物を入れるのはエネルギーを必要とするからです。

ただ、激しいトレーニングをした後は例え1週間前でも炭水化物は多めに入れます、でないと身体から危険ですよというサインが入るので。

身体から危険信号が灯れば、それに従います。

□試合会場到着、試合までの流れ。

試合会場に到着した段階から審判は始まってます。あるいは移動中からもいろんな人から見られているので、気をつけなければいけない事は多々あります。

・服装
・髪型
・使用しているバッグ
・雰囲気
・話し方
・落ち着き

等々これらの事を気をつけていかなければいけません、落ち着きはない時も時々ありますが、落ち着きないなぁと思ったら落ち着く。この落ち着きに関しては常に気にしてなければいけません。

話し方に関しては、本当に見られます。話し方ひとつでこの人を信頼していいのか?よくないのか?お願いする時に動いてくれるのか?くれないのか?こう言ったことまで意識しなければゲームをコントロールするのが難しくなります。

会場についてから行うこと
・ピッチインスペクション
・マッチミーティング
・審判の打ち合わせ
・メンバーリストの確認
・ウォーミングアップ
・試合の準備
・選手のチェック、用具の点検

この中からいくつかの事をピックアップしてお話します。全部はお話しません。

ピッチインスペクションとは?
今ではフィールドインスペクションと言われる可能性もあるとは思いますが、フィールドの点検です。 
 
・競技規則通りにゴール、コーナーフラッグ、ラインがきちんと書かれているか。
・ゴールネットはしっかり張られているか?
*ネットはなくても試合出来ます。
・フィールドの周りに危険なものがないのか。
・使用するベンチの数と種類が同じなのか。

等を点検いたします。

マッチミーティング
・試合中の約束事
・ユニフォームの決定
・試合時間の確認等
・審判員からの一言

が主になっていきます。あとは、会場の使い方等も入っていきます。審判員からの一言は特にありませんって言う人もいますが私はあえて試合中のお願いをここで伝えます。なぜならば、マッチミーティングが一番試合をコントロールしていく上で一番伝えやすい部分で監督も冷静になっているからです。

審判の打ち合わせ
主審から副審、第4の審判員にお願いしたい事を伝えます。
・やり方の確認
・試合で起きることの注意喚起
・この試合はどういう試合なのか?

等を行っています。打ち合わせは、タイムスケジュールも組まれてたりもするので、あまり時間をかけずに行います。私は5分〜10分くらいしかかけません。

メンバーリストの確認
・試合に出場する競技者、番号を付けなければいけない大会では番号が登録されているかの確認。 
 
・ベンチに入る、交代要員やチーム役員の記載が登録されているのか、交代要員の番号、チーム役員の上位順の番号の記載、ドクターやトレーナーが入ってるのか?の確認。

等を行い、審判員が試合中に持っている記録用紙に記入します。

そして主審で使用する道具を用意します。
・笛
・カード
・記録用紙(記録用のバインダー)
・時計
・トス用のコイン

これらを準備して試合に挑みます。そして試合前に選手の照らし合わせを行います。


主なタイムスケジュール(10時KOの場合)
・8時か8時半頃会場到着
・8時50分マッチミーティング(大会によっては90分前にユニフォームチェックのみもあります。)
・ミーティング後ピッチインスペクション(ミーティング前に終わらせる時もある。)
・審判打ち合わせ
・9時20分又は25分頃ウォーミングアップ開始(大会によっては時間が決まってるのでまちまち)
*ウォーミングアップはランニング、ストレッチ、ステップ、スプリント、ポジショニング、選手のプレースピードの確認を行います。
 
・KO7分前に登録されてる選手と出場選手の確認
・5分前に選手入場

これらが試合前に行う事になります。


□試合中

試合は、アポイントされた日から試合開始前までに準備してきた事をやっていきます。しかし、試合というのは何が起きるかわかりません。ですので、ポジショニングや入る場所というのは常に頭を動かしながら修正していく必要があります。

特に最初の15分は出来るだけ選手の近くに寄るためにやみくもに走る事が多いと思います。

徐々に慣れてくると、タイミングだったり戦術が読めてくるので、頭を使いながら試合を勧めていく事が可能となります。

ちなみに決勝戦は両チームともにゴールに素早くボールを運ぶスタイルだったので、角度をつけながら縦にスプリントをしていくことが多かったです。

試合中に頭に入れておくべきポイント
・キャプテンは誰なのか?
・チームを中心に動かしている選手は誰なのか?
・チーム戦術
・個人の攻撃は?守備のやり方は?
・ゴール、副審、ボール、争点。
・チャレンジのタイミングやスピード、勢い

これらの事を頭に入れておきます。この試合は中学サッカー生活最後の試合だったので、個人の守備に関してはボールに激しく行くことが多かったり、個人の攻撃では勢いに負けて転んでしまってエラーになり、ファールに見えてしまうシーンが多くあった試合でした、しかしこれらを正しく行っているのか?ファールなのかを見て判定しなければいけません。

中には、チャレンジのスピードや勢いが強すぎて相手競技者に正しくチャレンジができずに繰り返し行ってしまう事が多くありました、この試合はこれらを止めるために主審として最初のチャレンジを見た段階で選手に声かけたり、ひどい場合にはゲームを止めてその選手に伝え更には周りにもその試合の判定基準を示す事が必要となっていきます。

そのように正しく行うことを周りに伝えたりしていくと選手は自然とサッカーに集中する様になります。主審は正しく判定してれば選手はサッカーに集中すると言われているがもっと言うと

"主審は事象の出来事をしっかりと対処、対応できていれば選手は自然とサッカーに集中する" という事になります。つまりこの試合よ決勝戦はこれらの事が選手に伝わり、選手がサッカーに集中できて、素晴らしい試合になりました。

特に後半シュートシーンもかなり増えてきていました、FWが1対1の場面になった時、蹴れば入るシーンでGKがしっかりと守っていたシーンがありました。これは、FWは点を早く取りたい、GKは何としてでも止めたいというシーンでお互いサッカーに集中していたからこそ、このシーンが生まれサッカーの醍醐味でもある感動したいというシーンが作れたのかもしれません。こういったチャンスのシーンはお互いにありました、しかし両チーム共に集中していて失点をしたくないような気持ちがつたわり、更にFW陣が容赦なくゴールに襲いかかる試合になっていきました、見てる人にとってはきっと面白い試合になったはずです。

更には球際の場面でも激しく、強くというようなシーンで千葉県は市立船橋対流通経済柏のような激しい試合が特徴的で、この試合も同じようになっていたのでは?と思います。

ですので、こういった試合の環境を作るのは審判チームがしっかりしていないと作れない環境です。

忘れては行けないのは選手が主役という事なのです。

試合中の審判員の立場とは上から順に行くと
・選手
・チーム役員
・審判員、運営チーム

という順番になりますですので審判員は一番下の位置になってくるのです、けれど一番下ではあるけれど土台という部分にもなります、ですので悪さをした時には前に出ていく必要もあります、そうする事で選手はこの審判は大丈夫って安心感を与える事ができるのです。

試合は終盤まで進んでいき、試合は0-0の引き分けペナルティーマークからのキックにより勝敗を決める事になります。

どっちが勝ったかはこちらでは記載致しません、しかし両チーム素晴らしい戦いをしてPKでの決着になってしまった事は仕方のない事だと思います。守り切っての0-0ではなく、お互い力を出し切っての0-0。けれどお互いにとっては得点が欲しかったはず、そんな試合でした。


□試合を終えて

試合を終えると、両チームの選手からのお礼の言葉、両チームからのお礼の言葉をいただき、更には本部役員の人たちからも労いの言葉をいただき、試合は本当に成功したんだと思います。

□決勝戦の審判とは

決勝戦の審判員とは、選ばれた時点で選手と同じ決勝の舞台に立てる権利を得た事になる。

しかし審判員はトーナメント制ではないし、審判員同士で闘ってる訳ではありません。どのように選ばれるかというと年間通してのパフォーマンスや日々の努力が報われて選ばれる権利を得られるのです。

しかし、選ばれただけで優勝する事ではないんです。試合を無事に終わらせて初めて優勝した事になります。ですので、決勝戦は選ばれて光栄ですが、しかし無事に終わらせて初めて光栄という風に考えていただければ初めて決勝審判員の価値というものが高くなります。

いい審判員とは、その試合において全く登場しない審判員である。しかし、両チームの選手達からはこの先あの時の決勝戦を担当してくれた主審という風に思われる事は間違いないし、どこかで会った時に、あの人どっかで見た事あるんだよねぇってなり、声をかけていただければ全然お話しもします。

ですのでこれからもこういう試合に巡り会えるように努力していきます。


ご視聴いただきありがとうございました。

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