ソフバの世界をぶらり旅~遠藤の詩の世界:4th 「愛と平和」 "SAND LÖWE"
まず、ソフバの4th Album 「愛と平和」について基礎的な情報を押さえておこう。このアルバムは1991年にALFAレコードからリリースされ、売上はおよそ4.6万枚であったと言われている。3/Drei以降、次アルバム用の楽曲を作成中、おりしも1990年8月2日に開戦した湾岸戦争(英:Gulf War)に強い影響を受けた内容であり、随所に戦争に関係する音がちりばめられている。楽曲は低音を前面へ押し出したパワフルでストレートなデジタルロックから、哀愁の漂うバラード、スローなロックなど。
このアルバムの1曲目と最後の11曲目として別のmixで収録されているのが"SAND LÖWE"である。これは和訳すると「砂のライオン」という意味である。歌詞全文の掲載は避けるが、筆者が考える主要な個所の引用はどうか許容されたい。
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導く勇士はベールを被りて
砂はライオン
誓いは虚しく目覚めを許さず
Wir Haben home ideal undmachen, fortschritt. SAND LÖWE.
(ドイツ語部分拙訳:「我々の理想の住処。それは進化そのもの、砂のライオン。」)
※2行目の「砂はライオン」の”は”は、"の"文語的な置換と考えてよいだろう。
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さて、砂のライオンとは、ドイツ語部分を読む限り「人間の進化そのもの」を表すものと考えられる。これは古代バビロニアから、この地方でライオンが力と知恵の象徴として用いられていたことに基づいた表現であろう。そしてその「進化そのもの」は、遠藤に言わせれば人間の理想を入れる容器であるということになるのだ(この”場所的な”ロジックはフランスの哲学者ジャック・デリダや明治期の京都学派の哲学を想起させる)。
ここで云う理想とは、当時のバアス党が掲げていた「単一のアラブ民族、永遠の使命を担う」というスローガンに集約される汎アラブ主義である(バース党はマルクス主義に影響を受けて発足した社会主義的な政党で、発足当時は少なからず理想主義的な側面を有していた~しかし政党が活動していくなかで、強い軍事主義と権力闘争に染まっていく)。遠藤が“TVで”見たのは、この汎アラブ主義が挫折する瞬間の光景だった。
この詩は、バビロニア地方に一種の理想郷を築いた国家(当時のイラクは、アラビア地域では最も先進的な医療や優れた社会インフラを有する優れた国家だった)が崩壊していく姿の儚さを綴ったものである。
そして国家元首サッダーム・フセインの演説のサンプリングに載って、2曲目の"Virtual War"が始まる(続)。
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