ソフバの世界をぶらり旅~遠藤の詩の世界:4th 「愛と平和」 "Last Flower”

ソフバのアルバム「愛と平和」の5曲目である。
抒情的なメロディに合わせて、不思議な詩が歌われる。以下に要点を抜粋する(全文掲載は行わない)。

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荒れ果てた大地に一人
それでも泣くの
静まる空の下
最後に囁いた花
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よく読むと、最後に何かの花が「それでも泣くのかい?」と登場人物へ問いかける物語である。この人物は(詩の掲載部分前から通読すると)荒れ果てた大地にまったくの独りで存在の輪郭が危うい。

この何もない、限りなくゼロに近い空間は遠藤がしばしば取り扱うモチーフであるが、本アルバムに置かれれば、それは当然“仮想の空間”という意味になるだろう。この人物の場合、自分の存在を認知してくれそうなものが荒野に咲くちっぽけな花というわけだ。

さて、この花とは何なのであろうか?筆者は、この花とは記憶のことであると解釈する。それは、この様な何もない空間で自己を認識可能なのは自己の過去、即ち自己の記憶だけであるからだ。これはメディアによって創造された仮想の空間であっても同様なのだろう(それが正しい像であることは証明不可能だが、本来的に自己とは曖昧なものだ)。

自己の記憶は、ときに自己を認識するために問いかけを行う。この話で想定される主体は一つでありながら二つであり、実に奇妙な光景だ

次曲は再び性的な世界を想起させる6曲目”America”である。

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