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つぼやき

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つぶやきとぼやき
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#自由詩

夏なんです

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母親に言われたことがある。人のこと許せば楽になるよと。専門学校の先生には本当に損な性格してるよねと言われた。上司も扱い辛いと言う。確かに私は狭量で頑固で忘れっぽいところがある。でも別にそれでいいと思っていた。娘が私に似てくるまでは。なんて性格の悪いやつなんだ、と思いましたもんね。

7

動物占い知ってますか?ビースターズという漫画を読んで思い出しました。家族を占ってみると一人は肉食動物で残りの三人は草食動物という結果です。小鹿の私がチーターの妻に惚れ込んで生まれたタヌキとコアラの姉妹は、今のところチーターの要素は見当たらずメロンのようにもならなそうな感じです。

6

キュウリのようにクールて、一体なんだろうとずっと思っていた。大人になるにつれて、そういうのに近づいていくんだろうと何となく思っていた。エスカレーターに乗るみたいに。18の時に読んだ小説「心臓を貫かれて」なんとなくわかったような気でいたことが、今になってもわからないままでいます。

11

腰の骨と骨の間にブスリと針を差し込んでグリグリこねくり回した後に熱い液体を注がれて脚がジンジン痺れている。ギックリ腰だと思っていたら椎間板ヘルニアだった。4年に1回こうなる。シドニーからここまで中止も延期もなく開催されている私のヘル二アンピック。今年は延期と思ったのにな。

5

私のかけら。あなたを一目見たときに震えたの。普段は沈黙を守るかけら。冷たくて深い闇の中で眠るかけら。あなたに揺さぶられて火照るかけら。心は熱い光を浴びて輝きはじめる。特別な時間は私を焼く。このかけらは何処からきたの。どうしてあの人にだけ反応するの。私にはわからない。

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1mmでも興味を持ってくれたら嬉しい。話しかけたら笑顔が返ってきたわ。たまに目があうの。やがて付き合うようになった。もう私が考えてることって言わなくても分かるわよね?いいえ。あなたが考えてることって最初から最期まで1mmもわかりません。本当に。私はただあなたを好きなだけですから。

空を隙間なく埋めた雲から溢れた糸雨が目に入ってくすぐったかった。笑う瞼をこすりながら朝の道路がしっとり湿っているのを感じてブレーキをかけながら自転車を漕いだ。久しぶりの出社に緊張した私の心が私を追い越さないようにゆっくり進む自転車はかつての現実に私を運ぼうとしていた。

8

今、私の願いが叶うならば、鴨鹿のような脚が欲しい。蛸のように滑らかな股関節が欲しい。真新しい雑巾を絞り上げたように引き締まった腰が欲しい。翼のように大きな肩甲骨が欲しい。電柱のように強固で真っ直ぐな首と、朝日を睨み返す鷹のような眼が欲しい。生きてこその願い。生きてこその体です。

14

夕方の太陽光が伸びたり縮んだりしながら私の視界を焼いている。その光はアスファルトに反射して眩しく照らされているので道路のかすかな段差が見えない。細いタイヤで車道を走るのって怖いんです。それでなくても私は普段から、ちくわの切り端みたいに小さく縮み上がって自転車に乗っているのです。

10

今朝は雨がシトシト降っている。雨降りの出勤で濡れるスニーカーを恨めしく思いながら朝食を食べる。いつも長靴を買おうと思いながら、つい、あとでいいや、という。仕事を覚えてからは怠惰な自分との距離をうまく測っていたつもりなんだけど、人間の本質てのはなかなかどうして、変わらないものです。

9

数日前にポケモンgoを始めた。デジタルの地図の上にポケモンが現れてスマホをブルブルと振動させる。走っていても景色よりポケモンが気になって新緑の風景も無機質に見える。ランニングの醍醐味はいかに。でもより強いポケモンを求めるポケ魂に抗えず、しばらくは下を向いて走ることになりそうです。

12

ポケモンgoで体調を崩した。寝不足です。昔からゲームにハマると昼夜の境を見失う。抑圧からの反動、と捉えています。今では勉強だなんだと娘を抑圧している私。彼女にくる反動はどんなものか。あんまりマニアックなものでなければいいなと願っています。そういうのって自律できないことが多いから。

7

8年前の6月9日に籍を入れた。晴れた日の昼間に銀座で婚姻届けを出した。それから結婚記念日はいつもレストランで食事をしてベロベロになるまで酒を飲みロックなんか聴かずに眠った。今年は外食を控えて家で食事をする。クイーンの映画を観ながら酩酊した。今日が今までで一番ロックな日だった。