TXAは低容量と高容量で効果に差がない? : BMC Anesthesiol. 2021 Feb 2;21(1):33.

Comparison of the in-vivo effect of two tranexamic acid doses on fibrinolysis parameters in adults undergoing valvular cardiac surgery with cardiopulmonary bypass - a pilot investigation


Zhen-feng Zhou, et al.

BMC Anesthesiol. 2021 Feb 2;21(1):33.
PMID:33530942

要旨

本研究の目的は、心肺バイパス(CPB)を伴う心臓弁膜症手術を受けた成人において、異なる用量のトラネキサム酸(TXA)が線溶パラメータに及ぼすin-vivo効果を検討することであった。プラセボ群、低用量TXA群、高用量TXA群に分けられた30例の患者を対象に、二重盲検無作為比較試験が行われた。種々のマーカーを用いて線溶パラメータを測定し、手術中の異なる時点におけるこれらのマーカーの濃度を比較した。その結果、CPBを用いた心臓弁膜症手術を受ける出血リスクの低い成人において、低用量TXAのin-vivo効果は、線溶パラメータに対する高用量TXAと同等であった。したがって、低用量TXAレジメンはこれらの患者にとって高用量レジメンと同等の効果を示す可能性がある。

低用量TXA群:挿管15分後に10mg/kgのローディング+1mg/kg/h
高用量TXA群:挿管15分後に30mg/kgのローディング+16mg/kg/h
CPB中は、リザーバーに低容量群が1mg/kgと高容量群が2mg/kgのTXAが追加投与された。

本研究では、プラセボ群と比較して、2種類のTXAを投与された患者では、ICU到着時と術後最初の朝にDダイマー値が有意に低下した。また、2つのTXA投与量間でD-ダイマー値に差は認められなかったが、D-ダイマーに対するTXAの用量依存的な効果があるように思われた。術後1日目の朝に測定されたフィブリノゲンは、高用量群では対照群に比べて増加していたが、2つのTXA投与量間に差は認められなかった。我々は、TXAが一定の血漿中濃度を超えると、線溶活性をより抑制できなくなるのではないかと推測した。この所見は、TXAによる線溶抑制のプラットフォーム効果に関する以前の研究で提唱された仮説を支持する可能性があり、TXAの高用量投与は臨床現場では慎重に使用されるべきである。

関連する研究論文との関連で言えば、本研究は心臓手術におけるTXAの使用に関する既存の文献に追加するものである。これまでの研究で、心臓手術におけるTXAの血液の損失を抑える効果は証明されているが、投与レジメンはさまざまであった。本研究では特に、異なるTXA投与量が線溶パラメータに及ぼすin-vivo効果を比較することに焦点を当てた。その結果、CPBを伴う心臓弁膜症手術を受ける出血リスクの低い患者には、低用量のTXAレジメンが高用量のレジメンと同程度に有効である可能性が示唆された。この研究は心臓手術における最適なTXA投与戦略の理解に貢献し、臨床実践のための洞察を提供するものである。

Abstract

背景 心臓手術におけるTXAの救血効果はいくつかの研究で証明されているが、それらの研究ではTXAの投与レジメンは様々であった。そこで我々は、CPBを伴う心臓手術を受けた成人において、線溶マーカーを測定することにより、線溶パラメータに対するTXAの用量依存的なin-vivo効果があるかどうかを検討するために本研究を行った。

方法 二重盲検無作為化対照前向き試験を2017年02月11日から2017年05月05日まで実施した。心臓弁膜症手術を受けた患者30例を同定し、プラセボ群、低用量群、高用量群に1:1:1で無作為に分けた。線溶パラメータは、D-ダイマー、プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター-1(PAI-1)、トロンビン活性化可能線溶インヒビター(TAFI)、プラスミン-抗プラスミン複合体(PAP)、組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)、トロンボモジュリン(TM)の血漿レベルにより測定した。これらの蛋白は、TXA注入前(T1)、TXAボーラス投与5分後(T2)、CPB開始5分後(T3)、CPB終了5分前(T4)、プロタミン投与5分後(T5)の5つの異なるサンプル時間で測定された。血栓溶解検査(TEG)と標準凝固検査も行った。

結果 対照群と比較して、低用量群および高用量群では、患者がICUに到着したときと術後最初の朝にD-Dimersの濃度が低下した。時間の経過とともに、PAI-1、TAFI、TMの濃度は3群間で有意差を示したが、PAPとtPAは有意差を示さなかった(P < 0.05)。プラセボ群と比較して、PAI-1とTAFIの血漿中濃度はT3とT4で有意に減少した(P<0.05);低用量群ではTAFI濃度もT5で減少した(P<0.05)。低用量群と比較して、高用量群ではT4でTM濃度が有意に上昇した。

結論 心肺バイパスを用いた心臓弁膜症手術を受ける出血リスクの低い成人において、低用量TXAの生体内効果は高用量TXAと同等であり、低用量TXAレジメンはこれらの患者にとって高用量TXAと同等である可能性がある。

主要関連論文

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