人工心肺へのNO組込みはAKI, CKDを改善する：Am J Respir Crit Care Med. 2018 Nov 15;198(10):1279-1287.

Nitric Oxide Decreases Acute Kidney Injury and Stage3 Chronic Kidney Disease after Cardiac Surgery

Chong Lei, et al.

Am J Respir Crit Care Med. 2018 Nov 15;198(10):1279-1287.

要旨

この研究論文は、主にリウマチ性心疾患による多弁置換手術のために長時間の人工心肺（CPB）を受けている患者において、人工心肺導入後24hの吸入一酸化窒素（NO）投与(80ppm)が腎臓の転帰に及ぼす影響を調べたものである。合計244例の患者が、手術中および手術後に一酸化窒素または窒素（対照として）を投与される群に無作為に割り付けられた。この研究では、一酸化窒素投与が術後30日、90日、1年における術後急性腎障害（AKI）、慢性腎臓病（CKD）ステージ3への移行、主要な腎臓有害事象の発生を有意に減少させることが明らかにされた。これらの所見は、主要アウトカム指標と副次的アウトカムの両方によって支持されており、一酸化窒素群では対照群と比較して有意な相対リスクの低下が観察された。
また、80ppmのNOを24時間投与しても有害事象は起こらず、血中総Met-Hb濃度はすべての患者で終始10％未満を維持した。

本論文と既存の研究との関連性は、心臓手術後の腎合併症を軽減するための効果的な介入策の現在進行中の探索に貢献することにある。急性腎障害は心臓手術後によくみられる重篤な合併症であり、長期的な罹患率と死亡率に重大な影響を及ぼす。数多くの臨床試験が行われているが、術後の腎転帰を改善する効果を示した介入はほとんどない。この研究で得られた知見は、CPB時間の延長を必要とする複雑な心臓手術を受けた患者において、NO投与がAKIを減少させ、長期的な腎機能を改善するための実行可能な戦略である可能性を示唆している。

Abstract

理由
急性腎障害を減少させ、心臓手術後1年の腎転帰を改善する医療介入は同定されていない。

目的
吸入一酸化窒素の投与が、長時間の人工心肺を必要とする複数弁同時置換術後の術後急性腎障害の発生率を低下させ、長期的な腎転帰を改善するかどうかを明らかにすること。

方法
待機的多弁置換術を受けた患者244例（ほとんどがリウマチ熱によるもの）を一酸化窒素投与群（治療群）と窒素投与群（対照群）に無作為に割り付けた。一酸化窒素と窒素は心肺バイパス中にガス交換器を介して投与され、術後24時間は吸入により投与された。

測定と主な結果
主要転帰は以下の通り：第一鉄血漿オキシヘモグロビンの第二鉄メトヘモグロビンへの酸化は、術後急性腎障害の64％（対照群）から50％（一酸化窒素群）への減少と関連した（相対リスク[RR]、0.78；95％信頼区間[CI]、0.62-0.97；P = 0.014）。副次的転帰は以下の通りであった：90日後、ステージ3の慢性腎臓病への移行は対照群の33％から治療群の21％に減少し（RR、0.64；95％CI、0.41-0.99；P = 0.024）、1年後には31％から18％に減少した（RR、0.59；95％CI、0.36-0.96；P = 0.017）。一酸化窒素治療は、30日後（RR、0.40；95％CI、0.18-0.92；P = 0.016）、90日後（RR、0.40；95％CI、0.17-0.92；P = 0.015）、1年後（RR、0.47；95％CI、0.20-1.10；P = 0.041）において、全体として主要な腎臓有害事象を減少させた。

結論
多弁置換術と長時間の人工心肺を受けた患者において、一酸化窒素の投与は、30日後、90日後、1年後における急性腎障害、ステージ3の慢性腎臓病への移行、主要な腎臓有害事象の発生率を減少させた。

主要関連論文

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