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敗血症に対するランジオロール投与の影響JAMA. 2023 Nov 7;330(17):1641-1652.

Landiolol and Organ Failure in Patients With Septic Shock: The STRESS-L Randomized Clinical Trial

Tony Whitehouse, et al.

JAMA. 2023 Nov 7;330(17):1641-1652.


要旨

この試験は、敗血症性ショックでノルエピネフリンの長期投与を必要とする頻脈患者におけるランジオロールの有効性と安全性を検討するものである。英国の集中治療室40施設で実施され、成人126例が標準治療群とランジオロール注入群に無作為に割り付けられた。主要アウトカムは14日間の平均SOFAスコアで、副次的アウトカムは28日および90日死亡率であった。SOFAスコアや死亡率に群間で有意差は認められなかった。この研究では、ランジオロールはこの患者集団における臓器不全を減少させないと結論している。

既存の研究との関連性 この研究は、敗血症性ショックにおけるβ遮断薬に関する一連の研究に追加するものであり、エスモロールによる死亡率の有意な減少を示したMorelliらによる以前の知見とは対照的である。この研究は、敗血症性ショックにおけるβ遮断薬の使用の複雑さを浮き彫りにしており、ランジオロールの短時間作用性や投与のタイミングが転帰に影響を及ぼす可能性を示唆している。また、さまざまな研究から得られた相反するエビデンスを考慮すると、敗血症性ショックにおける長期的なβ遮断薬の潜在的な有用性を探るためにさらなる研究が必要であることも強調された。


私見

本試験では、ランジオロールは1mcg/kg/minから開始し、HR 80/min~94/minになるまで15分おきに1mcg/kg/minずつ上昇させて6時間以内にその状況を達成というプロトコールである。結果、投与量は6.7(3.3~15)mcg/kg/minであり、他の研究の3mcg/kg/min未満だと血圧に影響を与えないとする量を大きく上回る。またseptic cardiomyopachy等も考慮すると、この投与量では多すぎるように思う。


Abstract

重要性 敗血症性ショック患者はアドレナリン作動性ストレスを受け、心臓、免疫、炎症、代謝経路に影響を及ぼす。β-blockerはカテコールアミン曝露の悪影響を減弱させる可能性があり、死亡率の低下と関連している。

目的 頻脈があり,長期(24時間以上)に昇圧薬のサポートを必要とする敗血症性ショックが確立している患者におけるランジオロールの有効性と安全性を評価すること。

デザイン,設定,参加者: 英国国民保健サービス集中治療室40施設において、頻脈(心拍数95/分以上)および確立した敗血症性ショックの成人126例(18歳以上)を対象に、ノルエピネフリンの持続投与(0.1μg/kg/分以上)を24時間以上行った非盲検多施設共同無作為化試験。試験は2018年4月から2021年12月まで実施され、有害の可能性が示唆されたため2021年12月に早期終了した。

介入 63例が標準治療を受ける群に、63例がランジオロール点滴を受ける群に無作為に割り付けられた。

主要アウトカムと評価基準 主要アウトカムは無作為化から14日後までの平均臓器不全評価(SOFA)スコアとした。副次的転帰は28日目および90日目の死亡率、各群の有害事象数などであった。

結果 本試験は独立データモニタリング委員会の助言により早期に中止されたが、その理由は有益性が示される見込みがなく、有害性が考えられるためであった。予定された340人の参加者のうち、126人(37%)が登録された(平均年齢55.6歳[95%CI、52.7~58.5歳];男性58.7%)。ランジオロール群のSOFAスコアの平均(SD)は8.8(3.9)であったのに対し、標準治療群では8.1(3.2)であった(平均差[MD]、0.75 [95% CI、-0.49~2.0]、P = 0.24)。ランダム化後28日目の死亡率は、ランジオロール群で37.1%(62例中23例)、標準治療群で25.4%(63例中16例)であった(絶対差、11.7%[95%CI、-4.4%~27.8%];P = 0.16)。ランダム化後90日目の死亡率は、ランジオロール群で43.5%(62例中27例)、標準治療群で28.6%(63例中18例)であった(絶対差、15%[95%CI、-1.7%~31.6%];P = 0.08)。少なくとも1つの有害事象を有する患者数に差はなかった。

結論と関連性 頻脈を伴う敗血症性ショックでノルエピネフリンによる治療を24時間以上受けた患者において、ランジオロールの注入はランダム化から14日間にわたりSOFAスコアで測定した臓器不全を減少させなかった。これらの結果は、確立した敗血症性ショックに対してノルエピネフリンによる治療を受けた患者の頻脈管理にランジオロールを使用することを支持するものではない。


主要関連論文

  • Morelli A, et al. (2013). "Effect of heart rate control with esmolol on hemodynamic and clinical outcomes in patients with septic shock: a randomized clinical trial." JAMA.

  • Kuo Y-W, et al. (2020). "Premorbid β-selective β-blockade reduces ICU mortality in patients with sepsis: a nationwide population-based study." Crit Care Med.

  • Morelli A, et al. (2006). "Levosimendan for resuscitating the microcirculation in patients with septic shock: a randomized controlled study." Crit Care Med.

  • Singer M, et al. (2016). "The Third International Consensus Definitions for Sepsis and Septic Shock (Sepsis-3)." JAMA.

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