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南へ向かう風 流れる雲に

5月31日の日記

 朝7時に起きて、すぐにシャワーを浴びて身支度を整える。遠足の日の朝のようにとてもワクワクした気分で目覚めたことが恥ずかしくもあり嬉しくもある。昨日の夜に準備しておいた白いキャリーバッグがそんな僕をよそに冷静にかつ、半笑いで眺めているようにダイニングキッチンで堂々としている。着替えや衣装、歯ブラシに洗顔などの旅行の準備がつまったキャリー、アンプの上に飾るぬいぐるみやおもちゃでぱんぱんになった大きめのトートバッグ、パソコンやカメラ、本にSwitchなんかが詰まったリュック、この3点セットが遠征のお決まりだ。3泊4日ともなるとキャリーは限界寸前までぱんぱんに膨れ上がっているけれど、リュックとトートは東京でライブがあるときと重さがさほど変らない。家を出る直前に、最近ライブ中にドリンクを入れている赤いカップを詰め忘れていることに気がついて、慌てて戸棚から取り出す。本当は海外映画でティーンエイジャーがパーティーで手にしている赤いプラスチックのカップがいいのだけど、蓋がついていないと倒して中身をこぼしてしまうかもしれないし、なにより毎回のライブのたびにプラスチックのカップを使い捨てていくのはちっともエコじゃない、ということでアマゾンで探しまくって見つけたこの赤いステンレスのカップを使っている。見た目は完全にあのカップだし、洗えるし、蓋がかなりハードなのでステージ上をびしょ濡れにする心配もない。中身はたいてい限界まで詰めた氷と冷えた炭酸のジュース。本当は台湾のリンゴソーダを箱買いしてライブのたびにもっていきたいけれど日本で買うと1缶200円くらいするし(台湾のコンビニでは100円もしないで買えていた)、もっというと家からモナンのアメリカンチェリーのシロップの瓶を持っていって会場で炭酸水で割ってチェリーソーダにして飲みたいくらいなのだけど、僕らが暮らしているこの国では、チェリー味はせいぜい春限定の変わり種、モナンがせっかく持ち運べるようにと用意してくれた250mlのシリーズもチェリー味は取り扱いなし。イギリスのコンビニにはチェリー味のファンタだってありましたよ。750mlのバカでかい瓶を持ち運ぶのはさすぎにあれすぎるので、ライブのたびに本番前に近場の自販機やコンビニで用意するor一生のお願いを使って小山内さんやマネージャーのおはぎちゃんに買ってきてもらっている。いわゆるステージドリンク然としたペットボトルの水と比べると、甘い炭酸のパワーったらなくて、なんかMCも妙にテンションあがるし、お酒を飲まずともどこかthis is 向井秀徳気分を味わえるのだ。なにより映画のなかのあのカップっていうのがとにかくあがる。

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