☆おジャ魔女どれみドッカ~ン! どれみと魔女をやめた魔女☆

【*ネタバレあり、ここを読む前にアニメのどれみシリーズを最後まで見収めていることを強くお勧めします。】






不思議な人に会いました
 

あの人の言ったこと


あたしもいつかわかる時が来るのかな…


脚本:大和屋暁 演出:細田守

おジャ魔女どれみはアニメ史上屈指の名作ではあるが400話にも連なる膨大なボリュームを文章にするには、
あまりにも時間と労力がかかることだろう。つまり感想をブログに書きたいのだが書ききれないのである。
 しかし、今回は 『どれみと魔女をやめた魔女』 について焦点を当てて触れたいと思う。

アニメのどれみシリーズは

 1シリーズ - 『おジャ魔女どれみ』
 2シリーズ - 『おジャ魔女どれみ♯』
 3シリーズ - 『も〜っと! おジャ魔女どれみ』
 4シリーズ - 『おジャ魔女どれみドッカ〜ン!』
 5シリーズ - 『おジャ魔女どれみナ・イ・ショ』(OVA)

とあり 今回『どれみと魔女をやめた魔女』は『おジャ魔女どれみドッカ〜ン!』の40話になる。

なぜこの回について話すのかというと、どれみシリーズ屈指の神回にし異質回であり今まで見てきたどれみの中で1番に印象的な話は?
と聞かれたら私は間違いなくこれを推すからだ。リアルタイムで見たわけではないがこれを見た当初の子供たちはさぞ驚いたにちがいない。
 いままで明るくバンバン魔法を使ってはっちゃけるノリを一貫してやってきたシリーズだからこそガラッと雰囲気を変えたこの回には
鳥肌がゾワゾワと立つほどに絶大なインパクトがあり是非とも語らずにはいられないのだ。

 内容だがまず出だしは、どれみがはずきちゃんとあいちゃん3人で帰る場面から始まり
2つに道が分かれた道路で はずきちゃんとあいちゃんは別々の道に帰りだす。
残されたどれみは普段はいかない道を歩くのだが、そこでは今まで視聴者が見たことない街並みがいくつも映し出される。
ふと道を歩いていると何か音がしたので音のなった家のほうを覗くと家主の佐倉未来が登場し、どれみのことを魔女だと瞬時に見抜いてしまう。
 未来さんは魔女であったが、魔法は使わず普通の人間のような暮らしをしていおりガラス細工を作っていた。
どれみは未来さんに美空町を案内し、お礼にガラス球をもらう。


『ガラスってね冷えて固まっているように見えてホントはゆっくり動いているんだよ。』

ここからのセリフだが、人間にはガラスは固まっているようにしか見えないが、人間より遥かに長寿である魔女の未来さんには動いてみることができる。
人と魔女との境界線をガラス玉で比喩しているのだ。 

ここでのガラス玉から海を覗き見るどれみの視点と音の演出は、魔女という世界、生き方に少しだけ触れるかのようである。

そして別の日、ハナを誘ったが補習で来ることができず帰りは1人になった。
2つに道が分かれた道路で、どれみはガラス玉を覗き見ながらいつもと違う別の道に…

(…とここまでがAパート)
2つの分かれ道は ①友達がいるいつも通りの日常であり普通の人間である自分と ②今までとは全く違う人生を魔女として生きる自分
この2つを暗喩しているといえるだろう。

そしてBパート、どれみは1人でまた未来さんの家に来る。
室内をうろうろしふと目についたドレッサーを開けると沢山の写真があった。
未来さんはたくさんの国に行き色んな人と交流を持っていたようだった。
 そして1枚の写真には男の人と一緒に写ってる未来さん。好きになりかけたが年上好みだという。
 未来さんは1つの場所にとどまらずいろんな場所を転々とし同じ人間といると不都合だからと、一緒に写真を撮りながら言う。

どれみが帰宅するとお母さんがぽっぷにピアノを教えていて、ただいまと言っても気づかない。

別の日、今度はおんぷちゃんとももちゃんと3人で帰るが別々に帰りだしまた1人になる。
2つに道が分かれた道路をみてまた未来さんに会いに行く。
どれみはガラス細工をやりながら、『このまま形を整えればグラスになる。広げればお皿にあなたどうしたい?』と聞かれ迷ってしまい、失敗する。
ここはどれみが魔女になりたいのか、それとも人間のままでいるのか迷っていて決められない現状を表しているのではなかろうか。

どれみは未来さんに自分の悩みを打ち明ける。お菓子作りの上手なももちゃん、歌の上手いおんぷちゃん、
バイオリンが弾けるはずきちゃん、しっかりしたあいちゃん そして、自分だけが得意なことがないことに。
1枚だけ青いままの紅葉のカットがそれが、どれみのことを示す良い表現となっている。

どうしていいかわからない何にも見えない。そう言うどれみに『見えなくていいじゃん』と答える未来さん。
指でグラスのふちをなぞりグラスの音が聞こえるシーン、これはどれみには魔女としての才能、素質があることを示しているのではないだろうか?
…と思ったのだが実際、どれみにあっさりとした返答をした未来さんはこの時に何を考えてたのか私にはよくわからない。

 どれみがグラスを完成させると引っ越すから明日取りに来るように言う未来さん。
明暗はっきりと分かれる影のコントラストが目を引き付ける。

未来さんの写真の自分が好きだった人が自分よりもずっと年上になった。
『彼は今、私のことを昔好きになった人の娘や孫だと信じてる。だから私も彼が昔好きだった人の娘や孫を演じ続ける。
魔女にはこんな生き方もあるのよ わかる?』
 友達も家族も恋人とも離れ、人と魔女との全く隔絶された時の中で生きていく魔女という存在その生き方
未来さんの生き方は過酷なものなのかもしれない。


もし、どれみが魔女であることを選ぶのであれば一緒にヴェネツィアに来ないかとさそう。
そして帰宅後、いつもの家族の声や学校の存在がどこか遠くに感じられる。夕方、どれみは2つに道が分かれた道路を少し迷うかのように、未来さんのもとへと行く。
しかし未来さんは写真とどれみのつくったグラス、メッセージを残して去ってしまい、どれみはグラスを手に家路へと戻り話は終わる。

最後の2つに道が分かれた道路を右に行くシーン、はっきりと明言されてはいないもののどれみは自分なりに考え魔女になる決意をしたのだ。
しかし未来さんはどれみが来る前に去ってしまった。そこで思ったのがまず未来さんは何を思ってどれみを誘い何を思って去っていったのか?

 誘った理由は2つ考えられ1つは自分に得意なことが無いといいながらも魔女になれる才能があったことを示唆するため。
最初こそおジャ魔女だと揶揄されながらも、友達やクラスメイトのために惜しみなく魔法を使い、ハナちゃんを守るために一生懸命に奮闘し
先々代の呪いを解いたりで女王様からの評価も高く魔女になれる素養は十分にあっただろう。
もう1つは仲間が欲しかったから。人間界にいながらも同じ時間軸で人間とは一緒に居られない深く付き合うことができない未来さんにとって
自分と同じような存在を求めていたのかもしれない。

それから去ってしまった理由は、どれみはここでは魔女になることを選びながらも
その実 人間としての生き方を完全には捨てきれなかったのではないかと思う。
 未来さんは一緒にヴェネツィア行かないかと誘いながらも、その時の戸惑うどれみの表情でそれを見抜いたのではないだろうか?

未来さんは、後にも先にもこの1話限りでしか登場せずその後は名前すらも出てくることはない。
しかし、いつものような明るいノリやポップなBGMはなく、どこか物静かで陰りある雰囲気にセピア調に彩られた景色に
仲の良かった友達や家族学校の先生皆が遠い存在であるかのように感じられる演出。
今までにないどれみの要素が盛られていることに加え、どれみの人生を大きく揺るがす選択肢を与えた存在としてとてつもない存在感であったといえる。

 実はこの回でどれみ以外未来さんのことを呼ばない上に、どれみしか未来さんとは接触していない。
そのことから未来さんがどれみ以外に認知されないゆうれいめいた存在ですらも思えてくるのだがこれも脚本は狙っていたのだろうか?
 それからこの回では魔法や衣装も無い珍しさもあり、そういう部分もまたこの話を深く印象付ける一因なのかもしれない。

 最後に未来さんはどれみが来る前に去ってしまったがもし残っていたらどうなっていたのだろう…