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カイゼルの焼肉定食とコトデンのエビピラフ

X(Twitter)で昭和な純喫茶の写真を見ていたら急に思い出しました。

小学生時代、住んでいたアパートの近所に『カイゼル』という名前の喫茶店がありました。もちろん当時はこの名前がドイツの皇帝のことだとか当然知らず「なんか面白い名前の店」くらいに思ってました。

店のドアを開けるたびに「カランカランカラン」と鳴るベルの音、さほど広くないこじんまりとした店内は壁も天井もテーブルも椅子も木目調で、いつもコーヒーとタバコのニオイで充満してました。
時々母親にこの店に連れて行ってもらい、焼肉定食をごちそうになりました。
木の台座の上の鉄板に焼肉とじゃがいもやにんじんなどの野菜が乗ってくるやつ。
昔から牛肉はそんなに食べないのですが、これがたいそう美味しくて、今も味を鮮明に覚えています。

母親は時々、アーケード商店街の中にある映画館に連れて行ってくれました。
ドリフの映画の二本立ての寅さんとか、キタキツネ物語とか、火の鳥とか、百恵ちゃんの映画とか。

そして帰りに必ず、『コトデン』という喫茶店に連れて行ってくれました。
細い階段を上がった二階にその店はあり、踊り場の左の入り口に入ると左側にレジがあり、右側に厨房、その手前のテーブルは少し階段を上がったところにありました。
いつもそのちょっと上に位置するテーブルに座り、メニューを見て「これ食べたい」というのは決まってエビピラフ。
サラダとスープ付き、舟形の深いお皿に入ったそのエビピラフはちょっと大人の味がしました。
「映画、面白かったか?」
と母親に話しかけられ、ひとしきり映画の感想。

両方ともとおの昔に無くなった店です。
思い出補正で「おいしかったなぁ」と必要以上に思っている可能性もありますけれど、何より「そこで働いていた店員、常連客、みんな今どうしてるんだろう」なんて思ってしまうんですよね。
もう大半亡くなってそうですけど。

これが、幼少期の母親との数少ない美しい思い出です。