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髙田正子主宰「青麗」創刊

  

「青麗」創刊号表紙

 爽やかな結社誌が創刊された。
 「青麗」、読みは「せいれい」。
 髙田正子氏が主宰。
 永く黒田杏子に師事し、その主宰誌運営の中心的な役目を果たして来た人である。
 以下は、髙田正子氏の来歴と目次である。

俳誌名は髙田氏の句集名と同じ

 2023年3月逝去された黒田氏の最後の句集の上梓、お別れの会の開催、そして会誌の追悼号としての「藍生」の最終号の刊行と、会の解散にともなう諸業務という、多忙な中、仲間たちが力を合わせて、髙田正子氏を主宰として立ち上げ、新たなスタートを切った、力の籠った新結社誌「青麗」である。
 その内容も充実している。
 会員に自分のライフワークというものを持った俳人が四人もいて、創刊と同時に各テーマによる連載記事がスタートしている。

 髙田正子氏には『黒田杏子の俳句』という、作品論でありつつ、評伝的な要素も兼ね備えた大著がある。
「藍生」に連載されたものを編集したものであり、これが本人の生前に上梓されたことは、髙田氏はもちろん黒田杏子氏にとっても有意義で感慨深いものがあるだろう。黒田氏はいい師弟を持って幸せである。
 髙田氏はキーワード別の「黒田杏子俳句コレクション」シリーズを刊行中であり、その仕事も続いている。
 また髙田氏自身の俳句観が息づいている俳句随筆集『日々季語日和』という著作もあり、しっかりとした独自の俳句観を持つ主宰であり、その信頼感もあって、誌面に上品な落着きがありつつも、新鮮である。

「青麗」創刊号に、師である黒田氏から学んだことの数々が述べられているが、特に印象に残ったことばが、「もう師に自分の句を評してもらえない」喪失感と関連して、投句した「句を落してもらえる幸せ」ということばである。
 黒田氏は「主宰になると誰も落としてくれないから、どんどん下手になる」と髙田氏に言われたそうである。
 今度は自分がその立場になるに当り、そのことばを噛みしめ直しているようだ。
 わたくしごとだが、わたしは「小熊座」主宰の高野ムツオの折紙つきの「俳句下手」を自認している。
 高野ムツオがあっちこっちの雑誌でそう書いているから、読んだ人もいるかもしれない。
 下手と言われるのは、師の愛情の中に自分がいて、まだ発展の余地があると希望して? 育まれているということでもある。
 高野ムツオにはもう師はいないから、彼は望んでも、もう自分を導いてくれる人はいないというこだ。
 そう想像すると主宰という立場の寂寥感が少しは解る気がする。
 そんな師ががいない主宰の寂しさ孤独感、そして髙田氏の自己に厳しい姿勢が伺えるエピソードである。
 そんな自己を律する爽やかな主宰が導く俳句結社の、明日の麗しい青空が見えたような気がした。
「青麗」誌の発展をお祈りする。


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