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俳誌「青麗」5月号   (2024年)


 通算第1巻第3号である。
 すっかり俳句会としても軌道に乗って、誌面もいっそう充実している。
 こんなに読み応えのある俳誌も珍しいのではないだろうか。
 今回は「青麗俳句会」の1月例会と、発足記念パーティの記事が掲載されていて、主宰と主力スタッフと、全国から集った会員たちの情熱と清々しい熱気が伝わる記事だ。

 記事は「表2」(表紙の裏)に髙田主宰の「初学物語」のページに始まる。ただの自句解説ではなく、俳句が詠まれる現場が読者に伝わる記事だ。
 そして目次を挟んで、企画ものの「吟行へ出かけよう!」の記事へと続く。吟行を定例化して大切にするのは、俳句が頭でつくったものにならないよう、表現の感慨が立ち上る現場性を大切にする会派であることの証だろう。   
 そして主宰の句。今月は「新緑」。

 そして、上にコピーした目次で解るように充実の連載が一つ増えている。
 掲載順にいえば、新連載の「丈草の発句を読む」(深沢眞二)。
 連載に先立って著者にインタビューする形で、蕉門における丈草について、初心者に配慮した紹介記事が前に置かれていて親切だ。
 記事内容も、一句一句の語義に始まり、表現内容の古典、特に「古今和歌集」との関連が詳述されていて勉強になる。日本詩歌の文字としての記録は「記紀歌謡」「万葉集」に始まるが、自然とその中で生きている人間としての自分を詠むという、「定型」的規範を示したのは「古今和歌集」である。芭蕉がそれを大切にした姿勢が、逆に当時「新しかった」といえるだろう。その意味でもこの連載は、とても勉強になり、今後が楽しみである。
 連載「海の物語」(平尾潮音)は、今回「鳥島」で、八丈島も含む、この島の歴史が詳述されていて、漂流民の苦難の話など、知らないことが多々あり、読み応えがある。
 連載「お菓子な俳句」(さとうかしこ)は、軽快な文体で、楽しく菓子造りをしている現場の雰囲気が伝わる。よく見かける季語と和菓子などの企画では、その解説が多いが、実際に造る過程をリアルに書かれているのが独得である。
 連載「季語と外来植物」(北川谷戸乃)の今回は「たんぽぽ」。外来種と在来種の違い、その全国的な傾向、現在は双方の混合種が増えていることなど、これも勉強になる。
 連載「俳句百名山」(ジョニー平塚)の今回は「甲斐駒ヶ岳」。知っているつもりでいた好きな山だが、この記事も改めて知ることが多く、とてもためになった。

 髙田主宰の選句と丁寧な評という姿勢は、師である黒田杏子氏の「藍生」でもそうだったように、会員の一人ひとりと丁寧に向き合い、大切にする気持ちが溢れている。
 わたしが目にするかぎりの管見ではあるが、多くの俳誌は選なし、あるいは選だけで、評は会員相互の評の記事というものが多い。
 この姿勢を貫くのは、主宰にとても負担がかかるが、会派としての独自性を築いてゆくには、大切なことだという髙田氏の考えがあるのだろう。
 
 創刊三号にして、「青麗」はその独自性が確立されていることに敬服した。
 黒田杏子氏から継承した志を、独自の手法で展開され始めた俳誌の、その明日に、遠くから声援を送らせていただきます。
                            武良竜彦
 

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