村田の経歴【投資銀行(IBD)編】(2/4)
野村證券ではリテールを約5年経験した後、IBDではカバレッジ(=法人営業)としては丸5年過ごした。
内訳は「上場企業の資金調達」「M&A」「IR等の提案業務」を4年。「未上場企業のIPO」を1年で2社経験。一貫してTMTセクター(通信・メディア・IT・ゲーム等)であり、現代社会で隆盛極める企業群の知見を得られたのは幸運だった。
だが、お伝えしておきたい。ここは地頭バケモノや、海外MBA出身達が、頭脳だけでなく体力の限りを注ぎ結果を残す世界。生半可ではなかった。
今回はそんなIBD時代についてお話します。
1.なぜIBDに行けたのか?
そもそも、「なぜIBDに行けたのか?」という疑問に回答すると、通常の社内異動である。
#ただの異動
ただ、異例ではあった。
それゆえに当時支店長からは詰められた・・・
支店長
「お前隠れて社内公募だしたのか?コーポレートファイナンス部だぞ」
私
「いえ出しておりませんが、そちらは財務部でしょうか」
支店長
「そんなレベルでやっていけんのか?」
こんな様子だ。
人事には「リテール以外から証券業を見てみたい」と伝えたことはあるが投資銀行を志望していたわけではない。
就活の時にはメリルリンチ証券のIBD社員交流会に参加して『ここにはリテールがないんですか?』と発言してコレド日本橋の時を止めたことがある。
証券会社の片輪を担う投資銀行業務であるが、異動発表後に会社HPを読んで具体的業務を知る体たらくであった。
2.投資銀行(IBD)【5大ギャップ】
証券リテールマンだった私が、投資銀行(IBD)で感じた【5大ギャップ】は下記の通り。
労働時間が長くAM07:00-AM2:00が基本
携帯電話は24時間365日手放せない
感情より数的根拠が重視
他部署との関係構築
組織的外交
ちなみに、激詰めされるのはどちらも変わらないので安心してほしい。
#大事なのは覚悟
3.一生忘れないIBDでの"初詰め"
ちなみにIBDでの"初詰め"は同行先だった。
上司から『まずは議事録を取れ』と指示を受けた私は、面談に入るとリテール時代に愛用していた手のひらサイズのメモ帳を取り出した。
面談後『そんなメモ帳で書ききれるわけねぇだろ!』と激詰め。以降、A4のProjectPaperを手放したことはない。
次項では、そんな私が投資銀行キャリアで得た【IFAでも活かせたノウハウ7点】について共有します。
4.IFAでも活かせた【ノウハウ7点】
①原典に当たれ
②神は細部に宿る
③データ取得と加工
④PC技術
⑤会社活動への理解
⑥開示資料への慣れ
⑦当事者意識
それぞれ解説します。
①原典に当たれ
IBDでは「提案資料=会社意見」になるため、使用する情報は二次情報ではなく原典(一次情報)に当たっていた。IFAでも原典を知る努力をすることで「提案時の説得力増加」「メディアや人の情報に翻弄されない」等の効果がある。個人的には監修や校閲活動でこのスタンスが活きている。
②神は細部に宿る
IBDでは誤字脱字・字体・フォント・表記ゆれ・デザインずれ等に大変厳しい。面倒くさいと思うのは勝手だがお客様の思考としては『こんなことも気付けない人に会社の大事なアドバイスを任せて良いのかな』になる。
IFAでも提案資料・挨拶・身だしなみなど確認ポイントは細部に渡る。
③データの取得と加工
IBDでは一次情報を収集・加工することが日常である。各種ベンダーから得られる生の情報を付加価値あるものに変換していく。
IFAにおいても「このデータあったらいいな」を自身で加工・作成できることはお客様に合わせたきめ細やかなサービスに繋がっている。(要広告審査)
④PC技術
IBDではマウスを使わず、PC立ち上げ後はキーボードのみで情報検索・エクセル・パワポを使いこなしていく。またファイル管理も徹底しており検索しやすいファイル名で再利用しやすい状態にある。
IFAでも単純な効率UPに繋がる。しかし「高いPC技術=優秀な担当者」ではないので注意。
⑤会社活動への理解
IBDでは「会社を知る」のが第一歩。役員・実務部隊との対話により年間実務や負担を把握していく。またIPO準備の負荷がどこにかかるかも知ることができた。
IFAでは「お客様を知る」ことが大切だが、資産面だけでなく会社面のお悩みをより明確に想像することができるようになった。
⑥開示資料への慣れ
IBDでは提案時に必ず開示資料に目を通す。「決算説明会資料」「中期経営計画」「有価証券報告書」「四半期報告書」「IRニュース」等を読み込んでいく。
IFAでも目を通しておくと共通言語が生まれやすい。実際に先方開示資料を用いて話すと「よく見てるね」となることもしばしば。
⑦当事者意識
IBDでは他部署との連携が必須。ディール時の担当者は全体像を把握して抜け漏れがないか常時気を払う。
IFAでも各種専門家と連携することが多い。ただ専門家に丸投げしていると満足度は低下しやすい。担当者が理解して面談に臨むことで内容の翻訳や細やかなフォローができるようになる。
5.投資銀行時代に結果の出た行動
ここからは、投資銀行時代に結果の出た行動について。
IBDへの異動初日に言われたのは『ここはリテールよりリテールらしいぞ』という言葉。今回はカバレッジ(RM)の私が見た"泥臭い"部分を紹介する。
【海外IR同行編】
これは泥臭い業務の極致だった。海外IRとは上場企業の経営者たちが海外の機関投資家に対して会社理解を深めてもらうための企業活動である。
その費用対効果の是非はさておき、IBD担当者が経営者に1週間ベタ付きできるため、関係性構築や社内状況の把握できる貴重な機会となる。
初の海外IR同行はアソシエイトの時だった。「海外出張したい、、、」という邪な考えを持つ私はMDバンカーに『海外IRやらせてください!』と直談判をした。彼は『いいぞ。一人で言ってこい。』と即答した。
こうして時価総額1兆円企業の経営陣と寝食を共にすることが確定したのである。
#キープヤング
海外IR同行が決定してMD、ED陣にその極意を聞いて回った。特に関係構築が得意なバンカーから聞いた内容を紹介する。
①アメ玉を用意しろ
②みそ汁を用意しろ
③部屋割り表を用意しろ
④移動時間を伝えろ
⑤おすすめメニューを調べろ
馬鹿にしがちだが、その心遣いはリテールでも役立つことがあった。
①「アメ玉を用意しろ」
海外IRでは1日に4‐5件程度の機関投資家アポが入る。各投資家への移動は車で行い、本来休憩したい時間だが投資家特性の事前説明も行う。
蓄積する疲労を解消してくれるのがアメ玉である。場繋ぎ、疲労回復、気分転換に大活躍だった。日本のアメは種類も豊富で美味しい。
②「みそ汁を用意しろ」
海外IRでは和食の機会が限られる。その和食も日本とは味付けが異なることもありストレスを抱えることがある。
そんなときに口馴染みの良いインスタントみそ汁が活躍する。ホテルに到着したタイミングで小分けにした粉末をジップロックに入れて経営陣に手渡すのである。
③「部屋割り表を用意しろ」
ホテルでは経営陣はそれぞれの部屋に宿泊する。緊急時には連絡がつきやすいように、チェックイン時に部屋番号と名前を書いた表を手渡した。
しかし緊急時には携帯があるし、到着時は早く部屋に入りたいというのが優先されるため、正直やらなくて良い取組みである。
④「移動時間を伝えろ」
人は先行き不透明なことにストレスを感じる。経営者は特に先読みをするクセがあるため「次はこうなります」という情報は伝えたほうが良い。
アポ間隔が30分であっても「次の移動時間は15分です」と伝えるべきである。残りの時間で休息やトイレの時間を想定してもらえる。
⑤「おすすめメニューを調べろ」
人は選択肢が多すぎると迷う。せっかく有名店に訪問してもメニュー選びにストレスを感じることもある。
事前に現地駐在員にヒアリングするなどしておすすめを把握しておくことも大切である。移動時間がタイトな時は事前に印刷して車内で説明することもあった。
これらの取組は、実際に経営陣から後日お褒めの言葉をいただきました。顧客の悩みに応え続けるという意味では法人もリテールも変わりません。
これで【投資銀行時代編】は終了です。
次は「保険代理店編」ということでよろしくお願いいたします。
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