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【AIR】法改正で大きな転換を迎えるマンション管理

自治体の定住人口増加施策の一つとして市街地再開発事業内でタワーマンション整備が用いられるようになって久しくなりますが、先日、タワーマンションについて気なる記事が掲載されていました。

・タワマン建設、税金が支える 東京都内の再開発事業で依存率68%も

https://www.asahi.com/articles/ASP9572D1P8LULFA02K.html

記事によりますと、東京都内で計画される再開発事業によるタワーマンション整備について46地区の資金計画を朝日新聞が分析したところ、内22地区の計画が総事業費の20%以上を税金投入でまかなっているそうです。また46地区中44地区で補助金などの交付金が投入されており、再開発で生まれる保留床売却で事業費をまかなえる事業は2地区だけ。

事業への税金投下率が高い地区についても掲載されており、1位は上板橋駅南口駅前地区の再開発事業の68%、2位はJR小岩駅北口地区再開発事業の58%、3位は十条駅西口地区再開発事業の47%、4位は大山町クロスポイント周辺地区再開発事業の44%、と東京都内においてすら補助金無しでは再開発事業成立が難しいわけですから地方都市では尚更だということが理解できます。

市街地において木造建物が密集しているエリアで共同ビルに建て替え防災性を高めたり、狭い道路の幅員を変え道路等の公共設備の更新を図り安全で快適な都市環境を提供したり、と再開発事業には公共に資する側面もあることから補助金投下を全否定するつもりはありません。ただ現在の再開発事業=タワーマンション整備というテンプレートが本当にエリアの価値を向上させることになるのかマンションを建てて終わりではなくその先に控える大規模修繕や維持管理も見据え長期の視点からもよく考えるべきだと思います。

国土交通省によると分譲マンションは増加の一途をたどっています。2020年末時点の戸数は累計で約675.3万戸です。

・国土交通省 マンションに関する統計・データ等 「分譲マンションストック戸数」

https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001410084.pdf

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築後40年超のマンションは2020年末現在の103.3万戸ですが、20年後には約3.9倍の404.6万戸になる見通しで今後、高経年マンションが急増すると予想されています。

・国土交通省 マンションに関する統計・データ等 「築後30、40、50年超の分譲マンション戸数」

https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001410085.pdf

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また「平成30年度マンション総合調査結果からみたマンション居住と管理の現状」によると平成元年以前に建てられたマンションでは居住者の半数が60歳以上、昭和54年以前に建てられたマンションでは70歳以上の割合が47.2%となっており、老朽化したマンションほど居住者の高齢化が進行している状況がみえてきます。

・国土交通省 「平成30年度マンション総合調査結果からみたマンション居住と管理の現状」

https://www.mlit.go.jp/common/001287570.pdf

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そして国土交通省のマンション政策小委員会資料「マンション政策の現状と課題」の中で、タワーマンションに代表されるマンションの大規模化は、マンションの維持管理という観点から区分所有者の合意形成が非常に難しくなり、大規模になるほど困難性が高まる傾向にあること、マンション修繕に係る費用はマンションの規模が大きく高層化すればその分修繕工事金額が増大し資金不足等によって適切な維持修繕ができない影響が大きくなるという指摘がされています。

・国土交通省 「マンション政策の現状と課題」

https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001313642.pdf

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マンション管理が機能不全に陥ると問題は区分所有者や居住者のみに留まりません。建物の外壁が落ちたりすれば周辺住民に危険が及ぶ可能性がありますし、マンションの管理組合が適切な維持管理ができずマンションが廃墟化してしまえばエリアの価値を毀損する可能性もあります。

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