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【AIR】「まち・ひと・しごと創生法」施行から10年、「二地域居住促進法」が成立

地方が直面している人口の急激な減少、超高齢化社会への突入という大きな課題に対して東京一極集中を是正し地方の活性化を図ろうと2014年に「まち・ひと・しごと創生法」が施行され、官民問わず様々なセクターで地方創生が謳われるようになってから10年が経過しました。

その中で地域振興策の一つとして再び注目を集めるようになったのが「二拠点生活」や「多拠点生活」ですよね。

もともと仕事は東京、オフは地方に滞在し自然豊かな環境で長期休暇を過ごすといった似たようなライフスタイル自体は昭和の時代から存在していました。ただ芸能人や会社経営者、通勤手当が充実する大企業に勤務するサラリーマンといった所得に余裕がある一部の極限られた人だけが選択できるものだったように思います。

当時と比べるとリモートワーク等場所に縛られないワークスタイルの裾野が大きく広がってきていたり、「HafH」や「ADDress」といった月額料金制で全国各地に滞在できるようなサービスが生まれてきてくれたおかげで二拠点生活や多拠点生活というライフスタイルが民主化されてきているような気がします。

こうした社会変化が背景にあり、二地域居住の促進を通じて、地方への人の流れを創出・拡大するための「広域的地域活性化のための基盤整備に関する法律の一部を改正する法律案」が今月15日に成立しました。

・地方と都市の「2地域居住」を後押し 改正法が成立経済
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA14DSH0U4A510C2000000/

・「広域的地域活性化のための基盤整備に関する法律の一部を改正する法律案」を閣議決定
https://www.mlit.go.jp/report/press/kokudoseisaku01_hh_000205.html

本法案成立に向けた前段として国土交通省の国土審議会 推進部会に「移住・二地域居住等促進専門委員会」が昨年設置され議論されてきました。(どんな議論がされてきたのか詳しい経緯を知りたい方は下記の委員会資料をご覧になると参考になります。)

・国土交通省 移住・二地域居住等促進専門委員会
https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/s104_ijuunichiikikyojuu01.html

法律化した背景として、コロナ禍もあったことでUIJターンを含めた若者・子育て世帯を中心に二地域居住への関心が高まっていることを指摘しています。

例えば、令和5年4月に内閣府が実施した「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」から、東京圏(東京都・埼玉県・千葉県・神奈川県)在住者の地方移住への関心は全年齢平均で35.1%、20歳代だと44.8%が地方移住への関心を示しています。

(出所)https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001719485.pdf

また令和4年に国土交通省が実施した「二地域居住に関するアンケート」によると「今後、居住地や通勤・通学先以外で、二地域居住等を行いたいと思いますか?」という質問に対して約3割が関心層として抽出されています。

(出所)https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001719485.pdf

こうした背景を踏まえて、二地域居住の促進を通して広域的な地域活性化の基盤整備をより一層進めるていくための根拠づくりとして今回の法改正があります。

改正されたポイントとしては次の通りです。

1.二地域居住促進のための市町村計画制度の創設

都道府県が二地域居住に関係する内容を含む「広域的地域活性化基盤整備計画」をつくったとき、市町村は二地域居住の促進に向けた具体的な施策を盛り込んだ「特定居住促進計画」を作成できるようになります。

新設される「特定居住促進計画」なるもので何を定めるかというと次のような内容を想定しています。

・特定居住促進計画の区域
・二地域居住に関する基本的な方針(地域の方針、求める二地域居住者像等)
・二地域居住に係る拠点施設の整備
・二地域居住者の利便性向上、就業機会創出に資する施設の整備

2.二地域居住者に「住まい」・「なりわい」・「コミュニティ」を提供する活動に 取り組む法人(二地域居住等支援法人)の指定制度の創設

市町村長は、二地域居住促進に関する活動を行うNPO法人、不動産会社等の民間企業を「特定居住支援法人」として指定できるようになります。これにより、空き家情報や仕事情報、イベント情報等を提供する支援法人が活動しやすい状況にしていこうという狙いのようです。

3.二地域居住促進のための協議会制度の創設

市町村は、「特定居住促進計画」の作成に関する協議を行うための「特定居住促進協議会」を組織できるようになります。協議会を構成するメンバーですが、市町村、都道府県、特定居住支援法人、地域住民、不動産会社、交通事業者、商工会議所、農協等を想定しています。

(出所)https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001722229.pdf

なお、国土交通省では改正法によるKPIを設定しており、(1)「特定居住促進計画」の作成数を施行後5年間で累計600件、(2)二地域居住等支援法人の指定数を施行後5年間で累計600法人、と定めています。

読者の皆様の中には既に二地域居住や多拠点生活を実践されており、経験に基づくリアルな知見をお持ちの方もいらっしゃるかと思います。そうしたリアルなニーズを自治体の政策に活かしていくための制度的なルートが今回の法改正で新たに増えたことになります。

「もっとこうだったらいいのに!」というご意見お持ちの方は、二地域や多拠点先の自治体の動きをウォッチして、チャンスが有れば「特定居住促進協議会」でガンガン意見をしたり、自ら「特定居住支援法人」として事業開発を進める推進力として活用するということも考えられるかもしれませんね。

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