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藤子・F・不二雄先生の「大長編ドラえもん のび太と鉄人兵団」レビュー「本当に大切な事は言葉では説明出来ないと原作漫画は教えてくれます。」

アマプラでアニメ版「鉄人兵団」「新・鉄人兵団」を観て,どうにもモヤモヤしたので原作漫画を読みました。
地球人類をキカイトピアの支配者(ロボット)の奴隷として働かせる為にキカイトピアから地球侵略の尖兵としてやって来たロボットの少女リルルの「ロボットがこの宇宙を支配するのは神の摂理であり人間みたいな下等生物は支配者(ロボット)の為に働くのは当たり前」という余りにも身勝手な理屈に呆れ果てた静香は匙を投げ「あんたなんか知らない!」と家を飛び出します。
道すがら静香は考えます。
「やっぱりロボットに人の気持ちが通じる訳ないのよね…」
「…」
静香は沈黙し月を見上げます。
次の場面では「やっぱり(傷付いたリルルを)ほっとけないわ…」と翻意してリルルを看護します。
この場面で静香の心中で如何なる葛藤が生じたのかはメイン読者である少年少女達の想像力に委ねられたのです。
F先生が少年少女達の「行間」を読む力を信じていなければ到底こんな真似出来ません。
アニメ版で僕がモヤモヤするのは心の機微を噛んで含める様に言葉で説明する変なカリメロ(ピッポ)が設定されたからで「未熟な子供に「行間」を読む力など無く未来永劫大人が噛んで含めた「離乳食」を食べさせ続ける必要がある」と言わんばかりです。
これでは子供の「行間」を読む力…「情操」は何時まで経っても発達しません。
これが児童向けアニメを作る立場の人間として「適切な対応」と言えるのでしょうか。

リルルは機械の論理で考える為,静香の行動が理解出来ません。
静香はただ
「ときどき理屈に合わない事をするのが人間なのよ」
と人間とロボットの違いを語るのみです。

リルルは静香の言葉を彼女なりに咀嚼してキカイトピアの上長に奴隷狩りの中止を進言します。
「自分でも不思議なんです。こんな事を考えるなんて。」
「私の思考回路がどうかなっちゃったみたい…。」
ロボットが「理屈に合わない事をする」のは「思考回路の異常」だと鉄人兵団側は考えますが,この件(くだり)を読んでいる少年少女達はそうは思いませんよね。
静香がリルルに歩み寄って,リルルが静香に歩み寄る行為は「理屈に合わず」従って両者の行為の動機は「言葉では説明出来ない」のが原作のキモなのにアニメでは「リルルに「心」が生じたんだ!」と実に安易に「説明」してリルルを「人間になれたピノキオ」であるかの様に擬人化するからペケなのです。
「人間になれたピノキオ」とかアニメスタッフが無意識に人間をロボットの「上位存在」と見てる差別感が剥き出しとなってるのだ。
僕は今!「オマエ等貧困な精神の持ち主に異文化交流が描けるのか?」と問うているのである。

一体!リルルの思考と静香の思考とが決して交わらない平行線を辿った描写が延々続いた事を何だと思ってるんだ!
「言葉では説明出来ない事」を安易に「説明」するなと言うのである!

「エスパー魔美」で佐倉魔美が疑惑の渦中に置かれても高畑は彼女を信じます。
「あらゆる証拠が私に不利なのに?」
「それでも私を信じてくれるの?」
高畑はただ
「人を信じるって事は理屈じゃない」
と答えるのみです。
普段理屈で物事を考えてると思われ勝ちな高畑が「これ」を言うのが熱いのです。

「言葉では説明出来ない事」を伝える為にF先生は「行間」を使われて表現してるのにアニメスタッフは「人を信じる条件」を文書化し箇条書きにして壁に貼るからペケなのです。
僕は今!文書化大事のお役人様に「創作」は無理と言う話をしてるのです。
全く…キカイトピアのリルルが静香に歩み寄れたと言うのにオメー等と来た日にゃあよォォォォォ!
質の悪い冗談を聴かされてる心境だよ!

「本当に大切な事」は言葉では説明出来ないと原作漫画は,F先生は教えてくれてます。

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