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つのだじろう先生の短篇漫画集「亡霊学級」全1巻レビュー「本書は…つのだ作品入門として最適な一冊と言えるのです…」

皆さんは漫画家のつのだじろう先生を御存知でしょうか…?
藤子不二雄先生の「まんが道」にも登場されていて
主に1970年代に活躍された方なので…
その当時「少年」だった方は…
今は50代になっておられると思います。

つのだ先生には「代表作」が沢山あり…

極真空手の創始者・大山倍達さんの
波乱に満ちた半生を描く「空手バカ一代」…

新聞配達員の「ポルターガイスト」と呼ばれる怨霊に取り憑かれ…
読むと100日寿命が縮む新聞を強制購読させられる
鬼形礼少年の恐怖を描く「恐怖新聞」…

ワザワザ怖い心霊スポットに好んで行き…
お望み通り死ぬ程怖い目に遭って…
守護霊の「百太郎」に助けられ…
その都度説教される…
後一太郎少年の奇妙な冒険を描いた「うしろの百太郎」…

…と枚挙に暇が無いのですが…
これらは全て長編であり…

つのだ作品の初心者の方が何ら予備知識なく読めて…
全1巻なので…ものの1~2時間もあれば読めて…
尚且つ死ぬ程怖い目に遭えるという…
実に実にお得かつお手軽な作品がこの…
恐怖漫画短編集「亡霊学級」となるのです…。

グロテスクな妖怪が牙をむいたり,
後ろからワッと脅かすのは程度の低い怖さです。
本当の怖さ…というものはひょっとして何時…。
自分の側で起こるかも知れない可能性の中にあります。
人間には誰にも「怖いもの見たさ」…。
怖い事からは逃げる癖に覗いてみたい気持ちがあるものです。
その「見たさ」を満足させるべく僕はこの作品を描いてみました。
(つのだじろう先生による前書より)

気味の悪い同級生女子をバットで殴り殺したい願望を描いた「ともだち」。
青虫弁当を食う…気持ち悪い同級生を描いた「虫」。
プールの底で溺死して腐乱した死体を…
じっくり見たい願望を描いた「水がしたたる!」。
汲み取り便所に落ちる恐怖を描いた「手」。
猫の祟りに怯える少年の幻覚を描写した「猫」。
アガサ・クリスティーの「そして誰もいなくなった」の翻案…「赤い海」

…の全6遍が収録されてます。

僕は「虫」と「手」が怖いですね。

僕は子供の頃,いじめられっ子で…
いじめられた鬱憤を無抵抗の小さな虫を殺す事で
晴らしてたから「虫の祟り」は絶対に受けるし…

母方の実家の長野の便所が汲み取り式で「中」を覗いて,
落ちたらどうしようと恐怖に震え上がったのでね…。

本作と併せて…ダリオ・アルジェント監督の…
死体をグズグズに腐らせて蛆を湧かして天井から降らす「サスペリア」,
虫を虫ピンで刺していじめる少女が登場する「サスペリアPART2」,
ヒロインが腐乱死体と蛆虫のプールに落とされる「フェノミナ」等…
を観て…監督は恐怖漫画を描く素質があると…
尊敬と畏敬の念を新たにしたものです…。

本書の最後のエピソードが…
貨物船という密室の中で,
7人の人間が1人ずつ殺されて行く,
犯人は「残り」の誰か…という
アガサ・クリスティの「そして誰もいなくなった」の翻案である
「赤い海」が収録されてます…。

最後に真犯人が明らかにされるのですが
「最後に残ったひとり」が真犯人でない所が
つのだ先生の「創意」の見せ所ですね。

白土三平先生の「忍風カムイ外伝」の「暗鬼」,
寺沢武一先生の「コブラ」の「カゲロウ山登り」等
「そして誰もいなくなった」は読みきり漫画に向いている題材なのですね。

「昔の漫画」は…小説から多くの霊感を得ていたのです…。

それにしても…1974年に初版が上梓された本書が…
令和の御代になっても普通に買える事が…
一番の「恐怖」かも知れませんね。
これ…復刻版とかじゃないんですよ?

秋田書店は…言葉狩りや…現在では不適切とされる表現を
「なかったこと」にするという…
非難されるべき多くがありますが…
「大昔の作品」を…昔通りに単行本で出すという…類稀な美点があり…
俄かにキライにはなれないのです…。

手塚治虫先生の「ブラック・ジャック」の幾つかのエピソードを…
「欠番」にしやがったコトは…一生…未来永劫…許しませんがね!

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