見出し画像

とよ田みのる先生「これ描いて死ね」第1巻レビュー「手島先生の熱い熱い熱い生き様に刮目せよッ!」

「売れ線」など最初から狙ってません。
「描きたい事」があるんです!!
私の「言いたい事」が届く人が絶対何処かに居るんです!!
商業主義に毒された今のエンタメが齎す弊害を憂い…。

創作漫画を小学館に持ち込んだ漫画家志望の手島零(テシマレイ)は理解のある両親,愚直なまでに素直な弟を持つ,高い志と共に深い鬱屈をも同時に抱える漫画好きの大学生。
編集者から,持ち込んだ漫画が存在する意味…即ち主題が見えないと言われ,
零は心の中で編集者を幾度となく殺害しながら

「主題など無い…私は!ただ自分の漫画を「読んで貰いたい」(露伴ちゃん!)だけだ!」

と心の中で叫ぶ。
同人誌即売会で頒布する為に創作同人誌も描いた,
商業誌のネームも10本,原稿も4本描いた。
ようやく編集者からのGOサインが出たネームを完成させるも失敗作,
就職活動も全く行っていなかったから,弟が先に就職。
両親から陰で
「うーん…零はどうして「あんなの」になっちゃんたんだろうねえ…」
と言われる有様。
もういっそ死のうか…。

うう~ッ!!

どいつもこいつもうるせえよ!!
自殺する前に私の怨念の全てを乗せた漫画を描いてやる!!
死ぬ気で描いてやる!!
殺す気で描いてやる!!
殺してやる!!
お前等皆殺す!!
面白さで殺す!!

…こうして描かれた「ときめきラブロマ」が
小学館新人コミック賞佳作入選。

知ってますか?

とよ田みのる先生のデビュー作「ラブロマ」の主人公の姉は
星野零(ホシノレイ)って言うんです。
手島零のペンネームは☆野0(ホシノレイ)って言うんです。
手島零は「自分の弟の事」を
「これ描いてから死んでやる」
の気概で漫画にしたんです。

本書の感想を書く心算が
巻末描き下ろしの「ロストワールド」の感想になっちゃった。
「ロストワールド」
(「ラブロマ」連載開始が2002年ですから2001年頃の話と推定されます。)
から20余年,今では漫画を描くのを止め(何で!?)伊豆七島に浮かぶ伊豆王島の高校で教鞭を取る「手島先生」が,
高校生達の熱意に押されて漫画同好会の顧問に就任するのですが,
その詳しい経緯は漫画本編を,お読みいただくとして,
手島零の漫画界に,あえて愚直な王道漫画を描き,
閉塞した漫画界に新風を吹き込もうとした青雲の志が,
アンケート不振という「現実」に打ちのめされて,
1度は漫画を捨て,離島で教師という堅い職に就いても,
漫画への熱い想いは冷めやらず,
ふとした瞬間,例えば漫研の生徒達の
「じゃあ,もう,これで完璧ですね~!」
「漫画の奥義掴んだぞ~!」
などという漫画を舐めた発言に持ち前の鉄火の血が炸裂し
「そんな簡単な訳あるかーッ!!!!」
「漫画ナメてんのかーッ!!!!」
と心の中で絶叫する姿に僕は
「シグルイ」の虎眼先生の再来を見る思いです。

大きな声では言えませんが,僕は高校生達の成長物語よりも,
顧問の手島先生の不器用で愚直な熱い熱い熱い生き様を,
もっともっと読んでみたいのです。
本作の巻末描き下ろし「ロストワールド」は単独でも楽しめますが,
「ラブロマ」を読んでおくと楽しさが倍増します。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?