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映画「ヒッチャー」レビュー「本作は最初から最後までジョン・ライダー(ルトガー・ハウアー)と彼に魅入られたジム青年(C・トーマス・ハウエル)との「妙な関係」を描いてるのであって女など入り込む余地など無いのだ。)

シカゴからサンチャゴへの砂漠地帯を運送屋の
ジム青年(C・トーマス・ハウエル)が車を走らせている途中,
何と言う事もない親切心から
ジョン・ライダー(ルトガー・ハウアー)と名乗るヒッチハイカーを乗せる。
だが彼はナイフでジム青年を脅し
「俺を止めてみろ」
「俺を殺してみろ」
と訳の分からぬ要求を突き付けて来る。
何とか彼を車外に追い出すものの彼は別の車にヒッチハイクし,
運転手と,その家族を殺しながらジム青年に追い縋って来る。
そして何故か彼の凶行がジム青年のやった事にされ,
官憲から追われる身の上となる。
一体自分の身に何が起こっているのか…。
混乱する中,ジム青年から急激に少年らしさが消え,
一人前の男の顔付きへと変貌して行くのだった…。

変な映画。これが初見の感想の全てである。
ルトガー・ハウアー演じるヒッチハイカーが
人に魔を差させる魔性・通り魔として描かれ,
魔性に魅入られたジム青年の成長を強要する
一風変わった青春映画と僕は受け取った。
「魔性」なら女の方が適任かとも思ったのだが,
途中ジム青年はドライブインレストランのウェイトレス・
ナッシュ(ジェニファー・ジェイソン・リー)と行動を共にするのだが,
彼女はジョン・ライダーの手によって退場させられてしまう。
「お前は俺に魅入られたんだ。下らない女なんかに浮気するなよ」
と言わんばかりに。
いみじくも保安官がジム青年とジョン・ライダーの関係を
「妙な関係」と評していて,同性同士でなければ醸し出せない
「妙な関係」は性交渉を伴なわない恋愛を感じさせ,
観ているこっちも「妙な感じ」となる。
だから他の方がAmazonレビューで,
「ジョン・ライダーが死んで
ジム青年とナッシュが抱き合ってキスしてエンドの方がいい」
と指摘されていたのはナッシュが
ジム青年とジョン・ライダーの「蜜月」に割って入る
「夾雑物」として描かれている事実を見落とした「的外れな指摘」なのだ。
これは最初から最後まで
「ジョン・ライダーの魔性に魅入られたジム青年の話」
なのであって,ジョン・ライダーは最初から自分の望みを
ジム青年に告げていて,その望みが叶えられた瞬間エンドロールが流れ始める疑似恋愛映画であり,青春映画なのだ。

僕はたまたま男子なので,この様な感想となったが
全く持って舌足らずであり
「同性同士の性交渉を伴わない恋愛関係」
に関する卓見を有識者に求めたい心境である。

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