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原作:杉浦次郎 漫画:うめ丸「ニセモノの錬金術師」第1巻レビュー「男の考える「理想の嫁」とは「理想の奴隷」の事だと余りにも「本当の事」が赤裸々に書き綴られていて読んでて僕は「気持ちが悪くなった」。」

錬金術師のパラケルスは煩雑を極める研究業務を
ひとりでこなすのに限界が来て軽作業を補佐する労働力として
「奴隷」を買う決意をする。

彼が「奴隷」を買う理由はふたつ。
1.奴隷なら守秘義務を厳守するのではないか。
2.奴隷なら1度買えば,その後無給で働かせられるのではないか。

だが奴隷商人は彼の心得違いを指摘する。
1.「奴隷」とは契約の一形態であり,
雇い主には奴隷に働きに応じた報酬を払う義務がある。
2.「奴隷」は報酬が一定額に到達すると「自由」となり
以降「市民」として生きる事を許される。

「彼」が斯くも「奴隷」に関して無知なのは
「彼」は生前日本人だったのがトラックにはねられて死に
異世界転生した異邦人だから。

奴隷商人の「講義」は続く。
1.「奴隷」は御主人様に絶対服従を原則とし,
その原則に反しない限り自分の命を守ることを許す。

実は奴隷商人は奴隷の教育係も兼任していて
女の奴隷に最初に教える事は
1.男の歓ばせ方
2.決して男より賢くなってはいけない。
例え文字を読めても読めない振りをしろ。
女はバカの方が男に愛される。
という「奴隷の処世術」なのだ。

次第に本作が
『異世界転生した日本人の男と奴隷の女を通して
「日本人の夫婦関係」とは夫を御主人様,妻を奴隷とする
「奴隷契約」の一形態に他ならない事を描いてやる』
って本性を現し始める。

結局異世界転生した日本人男はノラという女の奴隷を買うが
ノラは
旦那様(日本人男)に絶対服従し
決して異を唱えず
旦那様を心から敬愛し
家計を切り盛りする「しっかり者」で
旦那様の身の回りの世話を甲斐甲斐しくして
夜のお世話も甲斐甲斐しくして
…とまあ日本人男の考える「理想の嫁」として描かれて行く。

従って本作の読者の感想は
「ノラさんみたいな嫁さん・奥さんが欲しい」
一色となるのである。

だから僕は本作を読んでいて「気持ちが悪くなった」。
男の考える「理想の嫁」とは「良妻」とは「理想の奴隷」の事だと
余りにもあからさまに「本当の事」が書き綴れられてるからである。

第1話でノラは「奴隷」としての負債を返却し
「市民」となる資格を得る。
しかしノラは奴隷契約の解除を渋る。
日本人男のもとで働くと非常に高収入であるからだ。
市民ノラを再び雇えばいいのではとの日本人男の提案に対し
「その場合,当然ながら絶対服従という大前提が消失しますが?」
とノラが注意を促すと日本人男は奴隷ノラのまま雇用を続ける。
日本人男にとって必要なのは対等なパートナーではなく
何でも言う事を聞き決して異を唱えない奴隷なのだと強調して話は閉じる。

実に悪意に満ち満ちた刺々しい構成である。

本書はAmazonで早々と完売し僕は楽天ブックスで購入したのだが
楽天ブックスでも間もなく完売となった。

僕も本書を買ったので偉そうなことは何も言えないが
「気持ち悪くなる」のはホラー映画だけで十分だよ。
「男の夢」とはホラー映画よりも
「気持ち悪い」との学びを得た次第である。


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