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サークルDOLL PLAY(黒巣ガタリさん)の同人誌「ワイルド式日本人妻の寝取り方総集編」レビュー「毎日家族の料理を作り続ける事は決して妻の「当然の義務」ではないし,料理を毎日食い続ける事も決して夫の「当然の権利」ではないのだ。」

「寝取る」と言うのは夫(妻)なり恋人なりがいる女(男)と
浮気して性交渉に及ぶ行為を指し一般的には「不貞」と呼ばれている。
不貞とは配偶者のいる人が配偶者以外の人と性的な関係を持つ事をいい,
民法では不貞行為を貞操義務違反として配偶者の一方がこれを行った場合,
他方は離婚の訴えを提起出来ると定めている。

本同人誌では2件の不貞の事例を漫画化している。
1件目は大企業勤めの夫を持つ結婚3年目の専業主婦・楓(28歳)の事例
楓は夫から日常的に「使えない女」と
まるで出来の悪い部下であるかの如き罵倒を受け,
しかしながら夫からは月々金を入れられ
マンション住まいの身分を与えられている手前,
例え夫の関係が冷え切っていたとしても文句が言えず,
また現在の厚遇を捨てるまでは至っていない。

そんな中,夫が楓の許可なくホームステイさせた大学生・マイケルと
彼女が不貞関係となるのだが,ここで彼女に葛藤が生ずる。
1.今や愛情のない夫に離婚されて
月々の高収入・マンション住まいの「地位」を失う事への恐れ。
2.マイケルは大学生・留学生故に金はない…。
…が彼女を全力で愛してくれている…。

「使えない女」と日常的に罵倒される事を我慢すれば「地位」は保障される
…が,そもそも何でワタシが日常的に罵倒されねばならないのか…。

ソレは彼女単体では無収入であるからで,
彼女に稼ぎがあれば,そもそも問題が生じないのである。
夫と性格が不一致であるならサッサと離婚すればいいだけの話。
ソレが出来ないのはひとえに彼女に「甲斐性がない」からである。

不貞を描く漫画の殆どが不貞関係が発覚して破滅する所で終わっている。
「破滅」とはこの漫画の場合,
離婚され収入もマンション暮らしも失う事を指す。
不貞を描く漫画は「従来の家族制度の破壊」を描く事を主な目的としていて
配偶者同士の貞操義務の遵守によって成立する婚姻制度に
唾を吐きかける事を意図しているのだ。
「従来の家族制度に唾を吐きかける事」が目的なのだから
家族制度が破綻すれば目的を達成してる訳で
家族制度が破綻して漫画が「終わる」のが常なのだが,
この漫画では家族制度が破綻した「後」の事を描いているのが
最大の特徴なのだ。

夫,楓,マイケルの三者で協議に及び,
円満…とは到底言えないものの離婚を成立させ,
楓は高収入とそれに付随する豊かな暮らしを失い
マイケルと六畳一間のボロアパートで新生活を開始する。

楓は…高収入とそれに付随する豊かな暮らしより
本当に好きな人と貧乏な暮らしをすることを選んだのだ。

2件目は売れないバンドマンの夫を
バイトを掛け持ちして支える妻・すみれ(26歳)の事例。
「バイト」の中に「自分の身を売る」事も含まれていて
隣室に住むシステムエンジニア・ボブと「金」を目的とした
性的関係・不貞関係が成立したのだが,
すみれは忘れてしまっているが
ボブが来日したばかりで未だ日本に不案内で
官憲に不審者として尋問を受けていた所を
たまたま通りかかったすみれが身元保証してくれた事を…。
日本的に言えば「恩」に感じ…彼的に言えば「スキ」と思い…
「人をスキになるのは…ソレだけで充分です」
と彼女に面と向かって言う…折も折すみれが身を売ってまでして
コツコツ貯めた夫との未来の為の貯金を
夫に使い込まれてキレて夫の顔面に鉄拳をブチ込み喧嘩別れして
その足でボブの求愛を受け入れる。

本同人誌には第3話が収録され
第1話のマイケルと第2話のボブが実は兄弟であることが判明し
同伴した楓とすみれを含めた家族ぐるみの交流の模様が描かれる。
すみれ「へー…じゃあ楓さんもバツイチ?私と同じ♪」
楓「…はい,それまで…夫の言う事を聞くだけの人形だった私を…」
「マイケル君が変えてくれたんです」
「彼にはとても…感謝しています…」
すみれ「なーんか似た者同士かもね,あたしたち」
「ラブラブな所も一緒だね」
すみれ「でも分かるかな,楓さんの言いたい事…」
「なんつーの?包容力って言うか…」
「激しいんだけど全力で愛されてる…みたいな?」
「日本の男にはないカンジだよね」
楓「…はい…とても安心します…」
すみれ「もー可愛いな楓さん」
楓「か…からからないでください…っ」

本同人誌はエロ同人であってエロ行為を堪能する事に
特化した本だと思って読み始めたのだが
寝取ってひとつの家庭を壊して「終わり」ではなく
新しい家庭を構築して家族同士の交流まで描く所が素晴らしいのです。
寝取り話の根本には不貞関係がバレたら破滅という
投げっ放しジャーマンの様な「後はどうなってもいい」って
「無責任」が根本にあるのが「普通」なのですが
本同人誌ではキチッと話し合って離婚するか・
ダメ夫の顔面に鉄拳を入れて喧嘩別れする所まで描き
「責任」を果たした結果,
夫と別れ今のパートナーとは極めて親密な関係を築く
バツイチの女同士の交流まで描く事に
成功した稀有な内容となっている。

ホントにね…エロ同人に
「責任を果たすことによって新たな地平が広がる」
事を教えられた思いである。
「日本の男にはないカンジ」は本当にそうで
noteの記事に
「妻は今日も家族の為に食事を作り続ける」
「僕は今日も妻の作った料理を食べ続ける」
って堂々と書いてる初老のオッサンがいて
オマエ…奥さんの家事を手伝うってアタマがねえのかよ…。
と憤ることしきりである。
夫は妻に
「金を恵んでやっているから毎日家族全員の食事を作って当たり前」
と思っていても妻はそう思ってない。
この…徹底的な無神経こそが「日本の男」であり
「日本の男にはないカンジ」に妻が惹かれるのも無理からぬ事に思える。
「不貞行為」は民法では離婚事由のひとつだが
例え離婚してでも
より高い包容力,全力で愛される事を求める女の
やむにやまれぬ真情が本同人誌に書き綴られているのである。
毎日家族の料理を作り続ける事は決して妻の「当然の義務」じゃないし
料理を毎日食べ続ける事も決して夫の「当然の権利」ではないのである。

「ひとりの人間として一個の人格として尊重されたい」と乞い願う事は
例え如何なる法律であろうとも決して規制する事は出来ないッ!

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