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NHK Eテレ「オトナプリキュア」第3話「ココロノキオク」レビュー「プリキュアの資格」。

「オトナプリキュア」は
「YES!プリキュア5」&「YES!プリキュア5GOGO」の続編であって
登場人物の抱えてた葛藤を知っておく絶対の必要があります。
今回変身するのはかれんとくるみのふたりですが
実質的な主役はかれんと言っていいでしょう。
かれんは中学3年生の頃,生徒会長を務め,
皆の模範たるべく生きる様自立自制を続けて来た結果,
「プリキュアの蝶」が接近して来たとき
「結局私が(生徒会長をやってる様に)プリキュアをやる事になるのね…」
と思わず本音を口走ってしまい
プリキュアの資格審査に失格し変身出来なかった過去を持っています。
その回のタイトルは「プリキュアの資格」。
プリキュアになるには資格があって
「プリキュアになって皆を守りたい」と心の底から願う必要があるんです。
「プリキュア5」の力は「心の力」。
生徒会長の重責に心が悲鳴を上げ「本当の気持ち」を抑圧してた
かれんにはプリキュアになる資格が無かったんです。

「オトナプリキュア」でも当然かれん自身がその過去に触れ,
現在のかれんは当時を振り返って「前に進めなくなった」と述懐します。
「前に進めない」のは現在も同じであって
頑なに心を開こうとしない患者の気持ちが全く分からない。

でもね。

かれんの必死に前に進もうとする気持ちが患者に伝わって,
本心をボツリポツリと語り始める。
陸上部の主将の重責に耐え,
体の出す不調のサインを聞こえない振りをして怪我して入院した…。

重要なのはかれんが医師として患者に接してる事。
患者の身の上話を聞いて

「この子,私と「同じ」なんだ」

と過剰に感情移入する事は人としては正しくとも医師としては正しくない。
「私情」が混ざってはイカンのです。
かれんは患者との話の流れの中で「昔話」として
自分の過去を語ってるのであって患者の私事に関与しません。
患者が問わず語りに「自分の事」を話し始め
心を開くのを辛抱強く待ったのです。

手塚治虫先生の「ブラック・ジャック」の「ある老婆の思い出」で
患者に過剰に感情移入して術後の経過が思わしくなく
死んだ患者にショックを受けて泣き喚く看護師が登場します。
看護士は取り乱して
涙の一滴も流さずステーキを食ってる担当医に食ってかかります。
僕は件(くだん)の看護師よりも平気でステーキを食う担当医を信頼します。
だって泣き喚いても「結果」は変わりませんもの。
「死んだ者」は生き返りませんもの。
パッと気持ちを切り替えて
「次の患者」を冷静に診察する担当医の方を信頼するのは当然でしょう?

かれんは私情を交えず
車椅子に実際に自分が乗ってみて
患者の「不安な気持ち」に寄り添う立派な医師であって,
だからこそ患者の信頼を勝ち得たのですよ。
医師のつとめは「患者の不安を取り除く事」なんです。
医師が不安に震えていて患者の不安を取り除ける訳ないじゃん。

要するに!
かれんは自分の「過去」を踏まえたオトナであると言いたいのです。

かれんが15歳の姿に戻ってプリキュアになれた理由を
本人は「皆を守りたかったから」と語ります。
前に進もう進もうとして必死に生きてると,
ある日ウソの様に簡単に前に進める。
「前に進む」のが簡単なのではなく
「前に進もう」と努力した人間だけに
スッと道が啓けると言ってるのです。
くるみは

「前に進もうとするかれんを応援したかったから」

と変身できた理由を語ります。
くるみの

「要するにプリキュア的なエモーション(強い感情)よ」

って台詞が「プリキュアの資格」を端的に表現してるのです。

「オトナプリキュア」第1話&第2話のレビューはコチラです。


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