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平野耕太先生の「ドリフターズ」第7巻レビュー「創作の神秘」。

ドリフターズ第7巻待望の発売である。
例によってヤングキングアワーズ誌掲載時と単行本化に当たっての
修正箇所を指摘して行こう。

第72幕アステロイドブルース
12頁3コマ目 雑誌掲載時 直の台詞
「301空(ウチ)が!!」「名付けられたつうわけよ!!」    
本巻「名付けられたつうわけよ!!」「301空(ウチ)が!!」
つまりフキダシの台詞が入れ替わってるのである。

第73幕バカサバイバー
24頁4コマ目 背景が白から黒へ変更。
26頁1コマ目 豊久の背景が白から黒に変更。
27頁2コマ目から3コマ目にまたがって効果音「ドォッ」追加。
28頁2コマ目 平野エフェクトの「ヒュボッ」って光追加。
30頁1コマ目 土方の背景追加。平野エフェクト「ヒュボッ」2つ追加。
32頁1コマ目 「たつお」の絵に槍3本加筆。

第74幕After in the dark
36頁3コマ目 直の背景が白から黒に変更。
37頁1コマ目 ドワーフの爺ちゃん&ワンニャン軍団にトーン追加。
38頁3コマ目 豊久の背景追加。
39頁1コマ目 豊久の背景に「チリ」追加。
39頁2コマ目 土方の衣服及び幽霊の大幅描き込み加筆。
背景が白から黒に変更。
40頁1コマ目 効果音「ヒュガ」追加。
40頁3コマ目 シルエットだった「たつお」の大幅描き込み加筆。

第75幕独走歌
42頁1コマ目 槍3本に白ブチ加筆。
42頁2,3コマ目 「瓦礫」加筆。
42頁5コマ目 豊久の背景が白から黒に変更。
43頁3コマ目 平野エフェクト「ヒュボッ」追加。
44頁2コマ目 豊久の背景が白から黒に変更。
47頁1コマ目 集中線追加。
47頁4コマ目 効果音「オォオオォオ」追加。
48頁3コマ目 効果音「ヒュ」「ガッ」追加。
50頁1コマ目 土方の背景追加。
50頁2コマ目 土方の背景が白から黒に変更。
51頁3コマ目 土方の背景が白から黒に変更。
52頁3コマ目 金柑頭の背景に「空と雲」加筆。
53頁4コマ目 効果音「ギッ」追加。
55頁2コマ目 黒王の背景に「槍のシルエット」加筆。
56頁2コマ目 義経の背景に「月と雲」加筆。

第76幕カントリーロード
雑誌掲載時は78幕となってるが勿論カウントミスである。
単行本で修正。

第77幕ゆずれない願い
80頁2コマ目 木苺じいちゃんの背景が白から黒に変更。
81頁2コマ目 効果音「ズ...」追加。
81頁4コマ目 効果音「ドッ」追加。平野エフェクト「ヒュボッ」追加。
83頁1コマ目 信長の頭髪に「ツヤ」加筆。
83頁4コマ目 義経の顔下半分から首にかけてトーン添付。
84頁2コマ目 ほとんどシルエットだった与一の描写大幅加筆。

第79幕ジョニーが凱旋するとき
109頁2コマ目 義経の着衣にトーン添付。

第81幕本能スピード
138頁1コマ目 豊久と直が座ってる椅子に陰影加筆。
139頁3コマ目 スキピオの周りに「キラ」「キラ」「キラ」加筆。
141頁2コマ目 豊久の背景が白から黒に変更。
「ヌハッ」加筆。
142頁6コマ目 「グルグルグル」加筆。
142頁9コマ目 「カァァッ」加筆。

第82幕世界は僕らの言いなりさ
147頁1コマ目 豊久の「チェスト―」にトーン添付。
150頁4コマ目 シャイロックの背景が白から黒に変更。
150頁6コマ目 ベタになっていたシャイロックの顔に「光る眼」加筆。
158頁1コマ目 ほとんどシルエットだったスキピオに
「光の当たる部分」加筆。
158頁2コマ目 スキピオの背景に「戦艦内装」加筆。
159頁3コマ目 背景の「さくらんぼ」に「唐草模様」追加。
160頁3コマ目 木苺じいちゃんに効果音「ガクブルガク」追加。

第83幕喇叭撃突ヶ響
162頁3コマ目 巨大な鳥に背景追加。
164頁3コマ目 グ・ビンネン兵士に平野エフェクト「ヒュボッ」追加。 
167頁1コマ目 多聞の背景に戦艦内装加筆。
170頁3コマ目 直と豊久の背景が白から黒に変更。
170頁5コマ目 スキピオの背景に戦艦内装加筆。

第84幕Surfine'Bird
181頁2コマ目 背景が白から黒に変更。
181頁4コマ目 背景が白から黒に変更。
181頁5コマ目 下が立ち切れていたコマの完全収録。
182頁3コマ目 ワンちゃん軍団の描き込み強化。
183頁から186頁まで新規描き下ろし。
187頁1コマ目 豊久の背後の煙の質感強化。
187頁3コマ目 燃える敵陣に背景追加。

第85幕Fortunete son
194頁3コマ目 平野エフェクト「ヒュボッ」追加。
195頁1コマ目 集中線追加
197頁1コマ目 建造物に「窓」「立て掛けられた材木」加筆。
198頁2コマ目 「オォオォ」に白ブチ加筆。
198頁4コマ目 信号の周りの雲?増量。
200頁2コマ目 シルエットだった直に光が当たる様加筆。
201頁2コマ目 「ゴゴゴゴゴゴゴ」加筆。
201頁3コマ目 背景の「花」が増えている。
202頁2コマ目 台詞だけったコマに「良く分からない何か」加筆。

第86幕人間大統領
206頁4コマ目 「カッ」にトーン添付。
207頁2コマ目 義経の斬撃に集中線追加。
208頁2コマ目 義経の斬撃に集中線増量。
209頁3コマ目 義経の背景に「雲」加筆。
211頁3コマ目 義経と木苺じいちゃんの背景が白から黒に変更。
211頁5コマ目 木苺じいちゃんの手の背景が白から黒に変更。
213頁から217頁まで新規描き下ろし。
218頁1コマ目
雑誌掲載時
木苺じいちゃん「なかなかよいがマダマダじゃ」
「もっと口半開き超人感が欲しい」
義経「ははははは」「殺すぞじじー」
本巻
木苺じいちゃん「その顔がいかんと言うに」
「何だか心のいやらしさが顔に出とる」
義経改めクロウ様「はっはっは」「殺すぞじじいー」
に台詞差し替え。
218頁4コマ目及び5コマ目 「カンカンカン」って文字に白ブチ追加。
219頁新規描き下ろし。
220頁2コマ目 童貞文官ズの背景に「柵」「チリ」加筆。

巻末後書き漫画「黒王様御乱心」
誰も知らんだろうけど昔「ファンロード」って雑誌があって
読者を「ローディスト」と呼んでたんですよ。
平野先生のローディストに対する蘊蓄が超細かい文字で披歴されてます。

これで「僕のレビュー」は本質的に終わりなのだが
最後に平野先生の「創作の神秘」に迫ってみたい。

本書には2019年2月号から2023年6月号までの間に掲載された
全15幕が収録されている。
53ヵ月で15幕だから単純に頭割りすれば,
およそ3~4ヵ月に1度の掲載ペースとなるが,
僕が言いたいのは編集の算盤勘定が如き文字通り机上の空論で
「「次」は3~4ヶ月後に掲載ですね,平野先生!」
と催促したいのでは毛頭ない。
「平均で3~4ヵ月に1度の掲載ペース」と言う事は,
5ヵ月以上掲載に時間がかかった期間とは,
それ即ち平野先生が「長考」された箇所と観るべきであって,
平野先生の「創作の神秘」に迫る絶好の機会と心得る。
皆もさあ平野先生が何処で「長考」されたか
マジでマジでマジで知りたくね?
それは編集の算盤勘定では決して算出されないものなのだ。

雑誌掲載ペースを詳細に追ってみよう。
2019年02月号 第72幕掲載
2019年05月号 第73幕掲載
2019年06月号 第74幕掲載
2019年07月号 第75幕掲載
2019年11月号 第76幕掲載

2020年02月号 第77幕掲載…第1長考(7ヵ月)
2020年09月号 第78幕掲載…第2長考(5ヵ月)

2021年02月号 第79幕掲載
2021年05月号 第80幕掲載
2021年08月号 第81幕掲載
2021年12月号 第82幕掲載

2022年03月号 第83幕掲載…第3長考(5ヵ月)
2022年08月号 第84幕掲載
2022年11月号 第85幕掲載…第4長考(7ヵ月)

2023年06月号 第86幕掲載

こうして掲載ペースを追ってゆくと
平野先生は都合4回「長考」されてると分かる。
それそれの「長考」を更に追ってゆくと

第1長考は2020年02月号(単行本第77幕)で
義経が雨中「廃城」に向かって敗走を続ける信長達に追いつき
「さあどおするんだあ?」と口上を述べてから与一が義経に,
かつての主にどう対応するかで,
2020年09月号(単行本第78幕)までの間,実に7ヵ月の長考をされている。
コレは「ドリフターズ」連載史上最長の「長考」である。

第2長考は2020年09月号(単行本第78幕)での
与一の「対応」に対する義経の「反応」を見た,
木苺じいちゃんがかつての主従の会話に割って入り,
奇想天外な提案をするまでを描くのに
2021年02月号(単行本第79幕)までの間,更に5ヵ月長考されている。

つまり単行本1巻第9幕で黒王さまに
「お前は好きなようにせよ」「お前はどちらだ」「漂流物か廃棄物か」
って評された,
「善」でもなければ「悪」でもない
「ロウ」でもなければ「カオス」でもない
トリックスター義経絡みの関係者が一斉に「動き」,
話を掻き回し始めるのを平野先生は1年も辛抱強く待たれたのだ。

先に第4長考の話をするけど2022年11月号(単行本第85幕)から
2023年06月号(単行本第86幕)までの間,
義経と木苺じいちゃんが始める
「悪巧みの詳細」を描くのに7ヵ月を要してます。
但し第4長考は第85幕入稿後の2022年11月に
平野先生が胆石の胆管閉塞で入院された御事情があります。
本巻後書きには「大病した」と記述されており,
そんな中での創作活動の継続は難しいと愚考します。
つまり「第4長考」の実態は入院加療及び退院後の創作なので
「長考」の対象から外させていただきます。
第86幕は単行本化に当たって6頁も新規に描き下ろされ平野先生の
クロウ様と木苺じいちゃんへの並々ならぬ思い入れが伝わって来ます。
2023年6月号に第86幕が掲載された時は「救世の皇子(みこ)クロウ様」って
概念が未だ成立しておらず,平野先生の思慮の深化を窺わせるのです。

因みに第3長考は2022年03月号(単行本第83幕)から
2022年08月号(単行本第84幕)までの間,
大日本帝国海軍山口多聞海軍少将に師事した
ローマ救国の英雄スキピオ・アフリカヌスが
驚異的な速度で2000年分の知識を吸収して
「2000年分更新された思慮」が結実するのに5ヵ月要してます。

「長考」の論考ついでに考察しとくと
平野先生の「長考」はヴェルリナでの豊久と土方との攻防が終わって,
「廃城」に飛ばされてきてからこっち,これまで突っ走って来た豊久に,
初めて「思慮」するまとまった時間が与えられて
豊久なりに考える所から既に始まってます。
「なんで俺(おい)が「この世界」に飛ばされて来たのか?」
って事をね。
豊久の思索は連載期間で1年に及び
彼は,この世界でもう一度,今度こそ確実に「命捨てがまる」為に
飛ばされて来たのだ,こいは運命(さだめ)なんだと達観するに至ります。

コレは創作者の化身「紫」も予想もしてなかった
「答え」で「紫」は激しく周章狼狽します。
創造物である豊久が創造主の意図を超えて「自分から動いた」事にね。
登場人物は「動かす」もんじゃなく「動く」もんなんですよ。

Easyはさあ
「チェスにルールがある様に」「駒はルール通りにしか動かない!!」
って言うけど
君には不細工で知性・品性の欠片も感じられないコムギから,
論理の究極とでも表現すべき美しい棋譜が泉の如く生み出される
「創作の神秘」が全く理解出来ないながらも,
居住まいを正して彼女に最大の敬意を払ったメルエムの気持ちも,
「志乃(漫画の登場人物)が動かない」て理由で1ヵ月もの間,
もがき続けた小林まこと先生の気持ちも到底理解出来ず
「登場人物は作家が(チェスの駒の様に)チャチャっと動かすもの」
って死ぬまで誤解し続けるんだろうね。

多分Easyは「一般人が考える創作論の化身」であって
編集側の存在であるのに対し,
紫は「実際の創作者の生みの苦しみの化身」で
漫画家側の存在なんだと思う。

もし僕の予想通り紫が「創作者の化身」でEasyが「編集者の化身」ならば
紫とEasyが和解する事など未来永劫有り得ないのである。

「編集側の存在」のやる事って「創作の神秘」を全く理解出来ず
例えば,小林まこと先生にサボってるだの手抜きだの罵倒した挙句の果てに
「アラレちゃんに比べて先生の漫画は全然売れてませよねえ?」
と皮肉を言ってケツを叩くしか能のない存在であって,
「ヘルシング」最終10巻の帯に
「「ヘルシング」本編完結!」って煽り文を書いて
「先生「外伝」の「続き」の方もお願いしますよ!」
って催促して祝賀ムードをブチ壊す
徹底的に野暮で無神経で下衆な存在なのだ。

「ヘルシング」最終巻帯。本当に酷い文言だ。

本当はね,平野先生は豊久のそうした気持ちを汲んで
第6巻69幕でマモン間原・サルサデカダンで
「命捨てがまるは今ぞ!」
って2度目の大見得を切らせて
豊久を死なせてやりたかったんだと思います。
ところがまたしても捨てがまりに失敗して
豊久のキラッキラ輝いていた瞳から光が失われ,
死ぬ為に生きて来た男が死に損なって
死んだ魚の目になって生き続けるの見るのは,いち読者として実に辛かった。
だから第84幕以降スキピオから「生きる目的」を与えられて
再び瞳がキラキラ輝き始めたのが本当に嬉しいのです。

あとたった7年後(2030年)にアーカードがインテグラの元に帰陣するが
僕は唯!足軽のひとりとして馳せ参じて
物陰から「オカエリナサイ」って言いながら涙を流したいだけなんだ。
少年画報社に言っておくが,く・れ・ぐ・れも余計な事して
ガッカリさせねえでくれよ。
まあオマエ等サラリーマン風情に何を言っても無駄だがな!

「次巻」が出るのが何年先になるのかは知らんが
僕はただ新刊が出るのを待ち続けるだけである。
僕が死んだら子に子が死んだら孫に託してね。
僕は死んでも死なんから幾らでも待ち続けられるのだ。

最後になりますが本書は絶対に紙媒体での購入を推奨します。
理由1.背表紙に「立ち往生する弁慶の背中」が描かれてるから。
弁慶の立ち往生の光景がモノクロなのは
多分表紙のクロウ様が
「奥州平泉で最も印象深い出来事」を回想してるからなのだ。
つまり表紙と裏表紙はひとつの物語を構成してると言いたいのである。
理由2.帯に「最近の作品」を観たルークとヤンがクロウ様を
「オマエ等鎌倉武士って要するに蛮族じゃん」
と罵倒する漫画が描かれてるから。
理由3.ブックカバー下に豊久・信長・土方が
ウマ娘のコスプレした勇姿が描かれてるから。
貴方は「サツマバクシンオー」「岐阜(ギフ)のディクタス」
「ヒジアマゾン」が見たくないと言うのですか?

漫画を読むのに単行本化されてから読む「単行本派」と
連載を逐一追いかける「掲載紙購入派」がいるけれど
「単行本派」にはこうした「行間」を読み,考察する事が出来ず,
僕から言えば論外の極みと言える。
ま!平野先生の「追っかけ」の妄言とお聞き流し下さい。

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