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クローネンバーグ監督の映画「ザ・フライ」レビュー「石地蔵」。

本作品の主要登場人物は3人だけだ。
男性科学者(ジェフ・ゴールドブラム),女性記者(ジーナ・デイビス),
男性編集長(ジョン・ゲッツ)。

科学者は物質転送装置の研究に没頭しおり
生命のない物質では転送実験に成功している。
しかし生命の転送実験には苦戦している段階だ。
科学者は最終的には人間の転送を可能にしたいと思っており
この研究が実を結べば車や電車,飛行機などの従来の移動手段が不要となる。

実験に立ち会っている記者は
少年のように目を輝かせながら
理想に向かって邁進する科学者を
「可愛い人」
と思うようになり,いつしか「男女の仲」となる。

これが女性記者の記事をNEWTON的な雑誌にする編集長には気に食わない。編集長は記者の「元カレ」であり
記者に対して執拗に復縁を迫っていたからだ。

一方,現在の彼氏となった科学者も
なかなか進展しない記者と「元カレ」との別れ話に業を煮やしており
酒を飲んだ勢いで科学者自身を実験台にして
人間の転送実験を強行してしまう。

分解再構築された科学者は生まれ変わったかのような気分となり
体操選手の様に優れた身体能力を得た。
科学者は自分が作った転送装置は「人」を「超人」へと「進化」させる
という思わぬ副産物があると結論づけた。
一方,記者との「男女の関係」においても超人的な身体能力を
如何なく発揮し科学者は得意の絶頂に達する。

しかし科学者は重大な考え違いをしている。
科学者自身を実験台にして人間の転送実験を行った際,
転送装置に1匹のハエが紛れ込んでいて
科学者とハエが遺伝子レベルで融合していたのだ。
科学者と記者がその事実に気づいたとき記者はある意味科学者以上に驚くのであった。

記者は懐妊していたのだ…。

早い話が藤子・F・不二雄先生の漫画「ドラえもん」で言えば
「どこでもドア」を作った心算が
実は「ウルトラミキサー」を作ってしまっていたって話ですね。

本作品の前半は3人の男女の「痴情の縺れ」を描いています。
後半は溜まりに溜まった「クローネンバーグ節」が炸裂します。
科学者の肉体が次第に人間とハエの特性を併せ持った
「第3の生命体」と化してゆく描写が実に実に素晴らしいんだなあ!
「第3の生命体」のヌルヌルした生理的嫌悪感満載のデザイン!
これは一見の価値ありですよ!

しかし一番度肝を抜かれたのは
懐妊した記者が見た出産場面の「夢」ですね。
幾多のホラー映画を漫然と見てきましたが
「石地蔵」と化して固まったのは本作品のこの場面くらいですよ!
そのうえこの場面でたまたま食べていたスナック菓子が
よりにもよって「かっぱえびせん」だったんですよ!
思わず「かっぱえびせん」を持つ手が止まりましたよ!

酷い酷いトラウマ映画を御所望の方にお勧めです。

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