J・R・R・トールキン著 瀬田貞二訳「指輪物語 旅の仲間 上巻」レビュー「序章を超えろ!」
映画「ロード・オブ・ザ・リング」を観てトールキンの原作小説に興味を持たれた方が多いと思います。僕は「古い人間」なので原作小説を高校生の頃読んで大人になってから映画を観て「ロード・オブ・ザ・リング?指輪物語と呼べい!」「ストライダー?馳夫さんと呼べい!」「スティング?つらぬき丸と呼べい!」「ホビット村?ホビット庄と呼べい!」「ゴラム?ゴクリと呼べい!」「「ホビット庄の掃討」が丸々一章割愛されてるのは何故だあ!」っと延々延々ツッコミ続けた「嫌な野郎」である事を先ず告白しておきます。
ホント「原作厨」は嫌ですねえ。嫌な野郎ついでに言っておきますが瀬田先生の名訳が台無しになったのは映画「ロード・オブ・ザ・リング」の字幕翻訳を担当されたのが戸田奈津子大先生であるからなのですよ。戸田大先生の珍訳の数々に悲鳴を上げた原作ファンが大先生に有識者の補佐を付ける様,運動を起こした事が昨日の事の様に思い出されます。
閑話休題
原作は大長編小説であって全巻大人買いして張り切って読み始めるか,
慎重な方なら第1巻の「旅の仲間」の上巻だけ買って試しに読んでみる…。
いずれの場合にしても最初に読むのは「旅の仲間」の上巻となる訳です。
その際,ちょっとしたコツを知っておくと全巻読破出来る可能性が跳ね上がるのです。コツは2つあります。
コツ1:「旅の仲間」の序章は飛ばす。
イキナリ何を言ってるのかと思われるでしょうが,序章には大変なネタバレが含まれてる上,今は未だ知らない種族名・地理名・知らない種族の歴史・知らない種族の習慣の歴史が難解な学術論文として記述されていて(トールキンの「本職」は言語学・英文学を専攻する大学教授なのですよ。故に瀬田先生は「トールキン教授」と呼ばれてます。)初学者の頭はたちまちパンクします。
何だ詰まらねえ読むのは止め!
コレを防ぐには「旅の仲間」の序章を飛ばすのが一番なのですよ。
序章は「王の帰還」の追補章を読んでから読んでも十分なのです。
とは言え序章を飛ばすなどマジメな方にとっては「負け」と受け取られるかも知れません。序章を読まないと情報量で「損」してるのでは…。
貴方の疑惑は実に尤もです。
序章にはビルボ・バギンズ(フロド・バギンズのおじさんですね)が指輪を発見した経緯が記述されており読み飛ばすには余りにも重大な情報なのです。
だから人によっては「我慢して「学術論文」を油汗流しながら読むべし」と指導される方もおられます。
僕は皆さんに油汗流しながら苦しい思いをして「指輪」の世界に入って欲しく無いのです。何故かと言うと苦しい思いをして「指輪」の世界に入られた方は「私が苦しい思いをしたんだからこれから入ってくる「新入り」も苦しい思いをすべき」と体育会的な発想をするのが常だからです。
その考えは間違ってます。何で苦しい思いをしてまで本を読まねばならないのか。それは専門学徒としては正しい読書法かも知れないが市井の人々に向けた門戸が一向に広がらないって大問題を孕んでます。「負の連鎖」は断たれねばならんのです。
僕が提案するのはコツ2ですね。
コツ2:「旅の仲間」の序章の代わりに岩波少年文庫の「ホビットの冒険」を読む。
「ホビットの冒険」は「指輪物語」の前日譚でビルボ・バギンズとガンダルフと13人のドワーフ達の竜退治の物語です。「旅の仲間」の序章では「赤表紙本」と呼ばれてます。抜群に面白い上,ビルボとガンダルフとの出会い,ビルボが指輪を発見した経緯,エルフとドワーフが仲が悪くなった経緯が全部「旅の仲間」の序章なんぞ比べ物にならん程超詳細に書かれてて,これこそ「旅の仲間」の前に読むべき真の「序章」なのですよ。
岩波少年文庫ですから平仮名主体で書かれてて大の大人が読むには少々勇気が要りますが,ええい「そんな事」を恐れてファンタジー小説が読めるかってんだ!
僕が会社員になって三重県・鈴鹿で2か月間の新入社員研修を受けた際に同室だった人に「指輪物語」が好きって言った所,「むらさめさんって子供っぽんですねえ」と見下された屈辱…今でも到底忘れられんわ。
いいトシしてファンタジー小説に傾倒する人間の「世間」の評価はそんなもんですよ。
世間の評価を恐れて深淵なる「指輪」の世界に入る事を恐れるなんて愚の骨頂であると言いたいのです。
ではまとめますね。
コツ1:「旅の仲間」の序章は飛ばす。
コツ2:「旅の仲間」の序章の代わりに「ホビットの冒険」を読む。
皆さんが「指輪物語」を全巻読破して映画「ロード・オブ・ザ・リング」に延々ツッコミ続ける「嫌な野郎」の仲間入りをする事を祈念して拙レビューを閉じたいと思います。ではでは。
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