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近藤るるる先生の「影姫 KAGEHIME」第1巻レビュー「近藤るるる先生の新作は男女のコンビがそれぞれの長所を生かして妖怪を倒すバディ物!」

新美創一郎は美大生で彫刻を学んでいるが,主たる関心は究極の女体を
創造する事で,取り分け胸に執着があり,弥勒菩薩像に豊満な胸を付けて
教授と衝突し,女子から変態扱いされる事もしばしば。
でもぜ~んぜん気にしない。
そんなある夜,魂の無いマネキンの様な女と
巨大な蜘蛛とが戦い,蜘蛛が女の首を切断する場面に遭遇する。
だが女の亡骸は溶けるように消え,蜘蛛も消え,
警察に証言するもまともに取り合って貰えない。
あれは夢だったのだろうか…翌朝彼は冷蔵庫の中身が荒らされ,
床に見た事もない粘土状の素材が落ちているのを発見し,
心の赴くままに女体のフィギュアを製作する。
会心の出来。
そこに昨晩の蜘蛛の化物が襲って来た。
どうやら目撃者は生かしておかぬ心算の様だ。
だが信じられん事に先程作ったリカちゃん人形程の身の丈の
フィギュアが蜘蛛と交戦状態に入ったではないか。
辛くも蜘蛛を撃退すると,フィギュアが「私の名は影姫」と喋り始め,
彼の彫像の腕を見込んで頼みがあると言う。
影姫の説明によると,自分は妖怪退治を生業としていて,
人間界では「影」にしか過ぎず影から影へと移るしか出来ない身の上で,
妖怪を退治するには「体」が必要で,
それも昨晩戦っていた「魂の入ってないマネキンの様な女」は
「体」として「粗悪品」の部類に入り,「体」の出来の美しさが,
そのまま影姫が「体」に宿った際の強さに比例すると言う。
彼女には普通に買える食材から創作者の意図を汲む
特殊な粘土の錬成が出来,その粘土が「体」創りに最適なのだ。
彼は「空の冷蔵庫の謎」が氷解し,彼女の「言いたい事」が理解出来て来た。
要は彼女は魂の籠った「体」を創れる人物として彼を見込んだ訳である。
彼にしてみれば自分の創った彫像がヴァルキリアの様に動き,喋り,
妖怪と戦うという話に大乗り気で2つ返事で協力する事となったのだった…。

近藤るるる先生の待望の新連載は,
若い男女が組んで妖怪を退治して行くバディ物。
基本ボクサー様な細身で素早い動作の出来る「体」が求められるが,
相手の動きが早過ぎる場合,初手を取られても挽回出来る工夫が必要で,
相手が植物型の妖怪の場合は,相手の内部から枯らす工夫が必要となり,
それは「体」の創り手である新美の創意が必要となり,
影姫だけが一方的に活躍する展開とならない
バディ物ならではの設定の妙がある。
第3話以降の妖怪退治のライバル的存在も現れ,
戦いが単調にならない様,配慮されている。

新美に恋心を寄せる特撮オタク女子百武小春の
「自分はヒーローにはなれないから,ヒーローの力になりたい」
って台詞で新美が影姫を助ける決意を新たにする場面がいい。
「本郷にはなれないから『おやっさん』になりたい!」
熱心な特撮ファンの近藤先生でなければ,決して生まれない台詞だ。

後書き漫画は
頁数の都合で没となった第7話冒頭のネームが掲載されている。
カバー裏には影姫の「体」を創るに当たっての準備工程が描かれている。
新美が女体には多大な関心があっても,
恋愛感情やスケベ根性がゼロなので
女性が読んでも嫌悪感は感じないと愚考する。

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