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つのだじろう先生の「亡霊学級」レビュー「1974年初版の単行本が今でも売ってるのが一番の「恐怖」なのかも知れませんね。」

1974年に初版が上梓されたつのだじろう先生の「亡霊学級」が
令和の御代になっても普通に買える事が一番の「恐怖」かも知れませんね。
これ…復刻版とかじゃないんですよ?

グロテスクな妖怪が牙をむいたり,
後ろからワッと脅かすのは程度の低い怖さです。
本当の怖さ…というものはひょっとして何時…。
自分の側で起こるかも知れない可能性の中にあります。
人間には誰にも「怖いもの見たさ」…。
怖い事からは逃げる癖に覗いてみたい気持ちがあるものです。
その「見たさ」を満足させるべく僕はこの作品を描いてみました。
(つのだじろう先生による前書より)

気味の悪い同級生女子をバットで殴り殺したい願望を描いた「ともだち」。
青虫弁当を食わされる恐怖を描いた「虫」。
溺死して腐乱した死体をじっくり見たい願望を描いた「水がしたたる!」。
汲み取り便所に落ちる恐怖を描いた「手」。
猫の祟りに怯える少年の幻覚を描写した「猫」。

僕は「虫」と「手」が怖いですね。
僕は子供の頃,いじめられっ子でいじめられた鬱憤を無抵抗の虫を殺す事で
晴らしてたから「虫の祟り」は絶対に受けるし,
母方の実家の長野の便所が汲み取り式で「中」を覗いて,
落ちたらどうしようと恐怖に震え上がったのでね。

ダリオ・アルジェント監督の
「死体を腐らせて蛆を湧かして天井から降らす」,「サスペリア」,
「虫をいじめる少女」を出す「サスペリアPART2」,
ヒロインが「腐乱死体と蛆虫のプール」に落とされる「フェノミナ」等
を観て監督は恐怖漫画を描く素質があると尊敬の念を新たにしたものです。

本書の巻末には貨物船という密室の中で,
7人の人間が1人ずつ殺されて行く,
犯人は「残り」の誰か…という
アガサ・クリスティの「そして誰もいなくなった」の翻案である
「赤い海」が収録されてます。
最後に真犯人が明らかにされるのですが
「最後に残ったひとり」が真犯人でない所が
つのだ先生の「創意」の見せ所ですね。
「忍風カムイ外伝」の「暗鬼」,「コブラ」の「カゲロウ山登り」等
「そして誰もいなくなった」は読みきり漫画に向いている題材なのですね。


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