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NHK「魔改造の夜 電動マッサージ器25mドラッグレース」レビュー「技術者に出来る事」。

「魔改造の夜」とは身の回りにある家電・玩具を改造して…。
例えば犬のオモチャを魔改造して100m走で優劣を競わせたり
虎とウサギのオモチャを魔改造してリレーで優劣を競わせたり
洗濯物干しを魔改造してロープ上を移動させ速さを競わせたりと
3チーム登場して魔改造の技術を競う内容で
今回は電動マッサージ器(通称:電マ)を
魔改造して25m走させようと言うお題。

動力源が電マの振動(バイブ)とヘッドのクネクネしかない中,
先ず「どうやって直進させるのか」が課題となって行く。

今回の出場チームは
T橋技科大,Mブチモーター,Sズキ株式会社。
ミエミエの伏字をするのがお約束。

学生は「学生だから」と何かと下に見られる風潮に対するムカツキがあり
企業には「モノづくり」を人件費の安い海外に丸投げして
「モノづくりの出来ない製造業」と化しているジレンマに加え,
「安全第一」とかコンプライアンスがうるさくて
弾けるコトの出来ない鬱屈がある。

ムカツキと鬱屈を「魔改造」で昇華しようと言うのである。

今回の「魔改造」では「振動」を生かした設計がポイントで
Gの動きを手本にしたり
電マを6本使用したパンジャンドラムを構築したり
電マを馬の脚に見立てたり
電マの振動をブラシに伝えて蠕動させたりと
個性的なアイディアが続出する。

実際に競技が始まると
「失敗したチーム」
に対する他2チームの反応が
一様に沈痛でソレが「魔改造」の特色となっている。

相手の失敗を喜んだり笑ったりする空気が無いのだ。
「相手の失敗」を「自分達の好機」とは考えないのだ。

技術者の心理は「スポーツマンシップ」とは様相を異にするのだ。
「負けて悔しい」気持ちは勿論あるが
「自滅した相手を嗤う」気持ちは無いのである。

また「モノづくりのワクワクを取り戻す」コトを
掲げて参加した企業チームがいつの間にか「速さ」を優先していて
「へええ。ワクワクよりも速さ優先ですか?」
と内部対立する場面があり
「設計思想」を止む無く変質させようとする現場監督と
「ソレは最初に言った事と違うでしょう!?」
と拒絶反応を示す現場の技術者の対立を見て取ることが出来るのだ。

「設計思想の保持」は勝つことよりも無制限に優先されるのだ。

「電マ25m競争」に学生は敗れ…。
「「次」は無いけど「次」は頑張ります」
と言い残して去って行く。
勝った企業チームは
「今日勝てた事はたまたまでしかありません」
「ライバルにちょっとの差で勝つか負けるか」
「そんな毎日を…そんな開発をしています…」
「だから…今日はたまたま勝ったケド…」
「ソレは明日負ける事の始まりかも知れない…」
「だから我々は…日々の技術の研鑽を積むしかないんです…」
と「今の気持ち」を虚心坦懐に述べるのみだ。

「勝った事」は嬉しいケド…。
「明日負けるかも知れない」から…。
日々技術の研鑽を積むしかない…。

今日は負けたケド…。
明日勝つ為に…。
日々技術の研鑽を積むしかない…。

勝とうが負けようが技術者に出来る事は
「日々技術の研鑽を積むこと」だけだと描いて番組は閉じる。

非常にストイックで…技術者の心根を良く表した…良い番組だと思う…。


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